製造業・工場のお仕事
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2023.11.10

生産管理とは?仕事内容と求められる人材について解説

生産管理とは、生産計画から販売まで製造工程全体に関わる仕事です。携わる業務は多岐にわたり、幅広い知識が求められます。トラブルへの対応など大変な側面はありますが、モノづくりの中枢に関わることができるやりがいのある仕事です。 本記事では生産管理の役割や仕事内容、求められるスキルについて解説します。生産管理の仕事に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

生産管理とは

生産管理とは、受注から納品まで、生産計画に基づいた業務全般を管理することです。生産計画の策定に始まり、受注や発注管理・在庫管理・品質管理など、さまざまな管理業務を行います。モノづくりを業務とする製造業にとって、生産管理は重要な仕事です。

ここでは、生産管理が担う役割や重要性について、詳しくみていきましょう。

生産管理の役割

製造業の現場では、生産計画に基づいて製造が行われています。生産管理は、生産計画に沿ってモノが作られ、出荷できるよう管理する仕事です。それだけでなく、モノが作られてから適切な数量がきちんと出荷されているかの管理も行います。

また、生産計画 は主に「品質(Quality)」「原価(Cost)」「納期(Delivery)」「安全(Safety)」の4つの要素から成り立ち、生産管理ではこれらの3つの要素を最適に保つ役割を担います。

生産管理の重要性

市場では、安全で品質の良いモノをできるだけ安く、都合の良いタイミングで手に入れたいという顧客心理があります。このような顧客の要望に応え、「品質・原価・納期・安全」を最適化するためには生産管理の業務が欠かせません。

生産管理はモノづくりのための資源やプロセスを調整し、質の高い製品を効率良く生産して企業の市場競争力を高めるために重要な働きをします。

生産管理の仕事内容

生産管理会議

生産管理の仕事は、需要の予測や生産計画の策定、品質管理など多岐に渡ります。

会社の規模によって仕事内容は異なる場合もありますが、ここでは一般的に行われている生産管理の仕事内容を紹介します。

製造業とは?仕事内容・職種・メリット・向いている人など徹底解説

需要の予測

生産計画を立てるためには、需要の予測が必要です。生産管理では、市場における自社製品の需要を分析し、どのくらいの生産が必要かを予測します。

需要を過小に見積もると、販売機会を失います。反対に、高く評価しすぎると在庫を抱えることになるでしょう。生産管理では過去の売上データや市場動向などを分析し、正確な需要を見極めなければなりません。

生産の計画

需要の予測をもとに、生産計画を策定します。「いつまでに・どのような製品を・どの程度生産するのか」を見極める段階で、必要な材料や設備・人員などを決定します。

生産計画が丁寧に行われないと、在庫に過不足が生じたり納期に間に合わなくなったりなどのトラブルが起こる可能性があり重要な工程です。

計画の策定では、無駄のない計画でコストを抑え、余裕を持ったスケジュール調整で品質低下・納期の遅延を防ぐことが求められます。

調達・購買の計画と実施

生産計画に沿って、製造に必要な資材や備品の調達・購買計画を策定します。「いつまでに・どこの業者から・どの程度の数量を仕入れるか」を決定する工程です。

品質基準を満たしつつもコストを抑えるために、取引先の選定・交渉も行います。

資材に過不足が生じると、生産や在庫に影響を与えます。生産管理に沿って行うことが重要であり、生産計画が変更された場合は、すぐに調達・購買計画の変更対応が必要です。

人材管理と工程統制

生産管理では受注から納品までの大枠を策定しますが、製造工程を計画通りに進めるために、人材管理と工程の統制も必要です。

工程を細分化して必要な資材や設備、人員配置を決め、生産ラインの立ち上げ・稼働などの各工程にかかる時間を割り出してスケジュールに落とし込みます。作業の標準化を行い、ミスなく計画通りに製造製造が進むようにすることも大切です。

品質の管理

製造した製品の品質管理も生産管理の仕事です。資材の受入から生産工程、完成品など幅広い領域で、一定の品質を備えているかどうかを検査・検証します。品質管理では、販売後のサポートやクレーム対応も業務の一つです。

品質管理は、具体的に以下の3つの業務を行います。

・工程管理:製品を作る工程そのものを管理する
・品質検証:仕入れた原材料・部品などを検査・管理する
・品質改善:製造工程で生じるさまざまな問題点の抽出・改善により未然に納品トラブルなどを防ぐ

また品質管理では、品質の高い製品を効率的かつ低コストで製造するという視点も求められます。

在庫の管理

在庫管理とは、社内に存在する原材料・仕掛品(しかかりひん・製造途中の製品)・完成品などの在庫を、生産・販売などの活動に合わせ、最適な状態に管理することです。

在庫を多く抱えれば不良在庫としてコストが発生し、在庫が不足すると販売機会を損失します。在庫管理は、このような欠品や余剰在庫といったリスクを抑える業務です。

「何が・どこに・どれくらい在庫としてあるのか」という正確な在庫状況を把握し、必要なときに必要な場所へ必要な量を提供できるよう適正在庫を保ちます。

原価の管理

生産管理では、製品の製造にかかる原価の管理も行います。必要な原価の計算だけでなく、実際の原価と適切な原価を比較して分析し、対策と改善を行うのも原価管理の仕事です。

原価管理により、利益と損失を分ける指標・損益分岐点が分かります。損益分岐点が分かることで、利益の目標値に対してどのくらいの製造量が適切かの把握が可能です。原価管理で正確な原価の予測ができれば、目標や予算を立てやすくなります。

生産管理の仕事は大変?

生産管理の仕事は、製品の生産開始から完了、出荷まで、一連の業務に関わります。そのため、「大変ではないか」と心配になるかもしれません。

業務が多いという点では確かに大変な仕事ですが、その分もやりがいはあります。

生産管理の仕事について、さらに詳しくみてみましょう。

大変とされる理由

生産管理は幅広い業務に携わり、スケジュールがタイトで納期に追われることも少なくありません。

計画変更への臨機応変な対応が求められ、予期せぬトラブルも起こりがちです。トラブルが起きれば解決が最優先となり、残業が発生する可能性もあるでしょう。

製造部は営業部や技術部など他部署とも関わり、協力体制が必要です。生産管理はそれら部署間に挟まれ、調整が大変な場合もあります。さらに自社従業員とクライアント・顧客との板挟みになることもあるかもしれません。

その分やりがいもたくさんある

生産管理の仕事は大変な側面はありますが、その分もやりがいが多い仕事です。生産計画を策定し、その通りに製造が進むように工場全体をコントロールしなければなりません。責任の大きい仕事ですが、目的を果たしたあとは大きな達成感があります。

自社の従業員や取引先など多くの人とコミュニケーションをとり、信頼関係を構築していくこともやりがいにつながります。困難やトラブルがありながらも無事に納期を終えたあとは、大きな充実感を得られるでしょう。

生産管理に求められるスキル

生産管理の業務は数多く、幅広い知識が求められます。業務に関する専門知識はもちろん、適正な在庫管理・品質管理のために論理的思考力が求められます。

製造プロセスの全体を把握し、人員を適正に配置するマネジメント能力も必要です。予期せぬトラブルへの対応力も必要になるでしょう。

ここでは、生産管理に求められるスキルを紹介します。

生産管理に向いている人については、以下の記事も合わせてご覧ください。

生産管理に向いている人・向いてない人の特徴は?仕事内容や魅力、必要なスキルも解説!

製品・生産現場に関する幅広い知識

生産管理の業務は幅広く、業務全体に対する広い知識が必要です。生産管理についての基礎知識や製造工程はもちろん、自社で使用している設備や製品・資材についての知識など、生産現場に関する知識も求められます。

また、資材の調達経路・出荷の流れについても理解しておかなければなりません。

適切な在庫管理のため、経理の一般的な知識も必要です。貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書などについての知識は身につけておくとよいでしょう。

論理的思考力

生産管理では需要の予測などにデータ分析が必要であり、論理的に考える能力が求められます。適切な在庫管理や品質管理、人材管理にも、論理的思考力が必要です。論理的思考力や適切な判断力があれば、無駄なコストの発生を防ぎ、利益を高める生産管理ができるでしょう。

トラブルが発生したときも、論理的に状況を判断できる能力があれば、冷静に対処して解決に導くことができます。

マネジメント能力

一連の製造工程を管理する生産管理の仕事には、マネジメント能力が欠かせません。

生産計画の策定やコスト管理などでは、製造プロセスの全体を俯瞰して状況を判断しながらバランスを図るマネジメントのスキルが求められます。

また、マネジメント能力は、部下の指導や部門間で異なる意見が出たときなどの調整にも必要になるスキルです。

臨機応変な対応力

生産管理でさまざまな業務を行うなかでは、突然の計画変更や予期せぬトラブルにも遭遇します。特に製造の現場では、資材の搬入が遅れるなど計画通りに進まないことも起こりがちです。

生産管理では、そのような変更・トラブルにいつでも臨機応変に対応できるスキルが求められます。あらゆるトラブルを想定し、迅速に対応できるようにしておかなければなりません。

生産管理への転職や業務に活かせる資格

生産管理の仕事には特に必要な資格はありませんが、取得しておけば転職や業務に活かせる資格があります。所得しておくことで転職のアピールポイントになり、業務も円滑に進められるでしょう。

ここでは、生産管理の仕事に活かせる資格を紹介します。

生産管理の資格については、以下の記事も参考にしてください。

生産管理に資格は必要?おすすめの資格と取得メリットを紹介

ビジネス・キャリア検定試験

ビジネス・キャリア検定試験は、企業の職務遂行に必要な実務能力を評価する試験です。

試験分野は、人事・経理・営業・生産管理・企業法務・ロジスティクス・経営情報システム・経営戦略といったビジネスの8分野に分かれ、自分の職種に合わせて選べます。

ここでは、生産管理の仕事に活かせる3つの資格をみていきましょう。

生産管理(BASIC)

生産管理(BASIC)は、学生や就活生、就職内定者、入社して間もない人など生産管理の実務経験がない人を対象にした試験です。生産管理の基礎知識全般を身につけるために役立ちます。

取得しておくことで転職に有利になるほか、生産管理の仕事について理解が深まり、実際に業務に就いたときも仕事を覚えるのが早いなどのメリットがあります。

生産管理オペレーション

設備管理や、資材・物流管理などに関する知識を体系的に学べる資格です。2級と3級があり、生産システムの設計・計画業務に従事している人を対象にしています。

3級は製造業の実務経験3年程度の人が対象で、係長や主任などリーダーを目指す人を想定した試験内容です。

2級は実務経験が5年程度の人を対象にしており、より高い専門知識が問われます。課長やマネージャーなどを目指す人を想定した試験です。

生産管理プランニング

生産計画や生産システムの設計などの専門知識が問われる試験です。生産管理オペレーションと同じく2級と3級があります。

製造業で3年程度の実務経験がある人を対象にしており、「製品規格・設計管理」「生産システム・生産計画」「品質管理」など、幅広い知識を身につけます。

2級は実務経験が5年程度で、3級までの基本的知識に加えてより専門的な知識が問われる試験です。

中小企業診断士

中小企業診断士の資格も生産管理の業務に活かせます。中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対応するためのアドバイスを行う専門家です。中小企業診断士は国家資格であり、中小企業診断協会が主催する試験に合格しなければなりません。

一次試験で全7科目ある試験科目のうち、「運営管理」に製造工程や品質管理などを中心とした「生産管理」に関する領域があります。

中小企業診断士の資格を取得することで、生産管理のほかにも幅広い経営の知識も身につき、経営者の視点から見た生産管理業務を実施できます。

生産管理の仕事に就くには?

生産管理の社員

生産管理の仕事に転職する際、基本的に資格が必要とされることはありません。未経験でも、意欲があれば未経験者を歓迎する求人は存在します。

生産管理の経験はなくても、工場で働いた経験など製造現場に関する知識があれば、採用の際に有利になることはあるでしょう。また、前に紹介したビジネス・キャリア検定試験の生産管理(BASIC)を取得しておけば、優遇される可能性があります。

まとめ

生産管理担当として働く従業員

生産管理は生産計画の策定から製品の完成まで、一連の業務を管理する仕事です。多くの業務に携わり、幅広い知識が求められます。予期せぬトラブルなどに臨機応変な対応が求められ、大変な場面も少なくありません。しかし、それだけにやりがいがある仕事です。

未経験を歓迎している生産管理の仕事もあり、製造業の経験があれば有利になる可能性はあります。生産管理で働きたいと考えている方は、チャレンジしてみるとよいでしょう。