工場用語辞典
電気回路設計 【よみ】 でんきかいろせっけい 【英語】 electrical circuit design
電子機器や電気システムを動作させるために、必要な回路(電子部品の組み合わせ)を考案・設計する作業のことです。電源、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、IC(集積回路)、マイコンなどの電子部品を、目的に応じて組み合わせ、正確に機能するような回路を作り出します。
この設計は、単に部品を並べるのではなく、「どのように電気を流すか」「どのような信号処理を行うか」といった電気の原理に基づいて構築されます。製品の信頼性・安全性・コスト・消費電力なども考慮しながら行う、高度な技術分野です。
電気回路設計の基本ステップ
電気回路設計は、単に図を描くだけでなく、仕様に基づいて動作を決定し、最終的な製品に落とし込むまでの一連のプロセスを含みます。
1. 要求仕様の確認
まず最初に行うのは、「どんな機能を持つ装置を作りたいのか」という要求仕様の確認です。たとえば「温度センサーで測定した値を表示し、一定温度を超えたらアラームを鳴らす」といったような目的が設定されます。
この段階では、出力の種類(LED点灯、モーター駆動、音を鳴らすなど)や、電源の種類(乾電池、USB給電など)も含めて全体像を決めます。
2. 回路図(回路構成)の作成
次に、部品の選定を行い、それらをつなげて回路図(回路構成図)を作成します。ここでは電子部品を記号で表し、それぞれの接続方法を図として表現します。
たとえば、センサー→増幅器→マイコン→LEDという流れで処理を行いたい場合、それに対応する回路を設計し、どのピンに何をつなげるかを明示します。
3. シミュレーション・試作
回路図が完成したら、回路シミュレーションソフト(SPICE系など)を使って、電流・電圧の挙動を仮想的に検証します。問題がなければ、実際に試作機(プロトタイプ)を製作し、動作確認や動作範囲の検証、誤作動のチェックなどを行います。
4. パターン設計(PCBレイアウト)
試作が成功したら、プリント基板(PCB)を設計します。これは、電子部品を取り付ける板で、配線(銅箔パターン)もここで決まります。部品の配置、熱対策、ノイズ干渉の防止など、物理的な要因も考慮されます。
実例:LED制御回路の設計
初心者向けの代表的な電気回路設計の例として、「スイッチでLEDを点灯させる回路」を考えてみましょう。
【目的】
スイッチを押すとLEDが点灯し、離すと消灯する。
【必要な部品】
- DC電源(3V~5V)
- 抵抗(220Ω程度)
- LED(発光ダイオード)
- スイッチ(押しボタン式)
【設計の流れ】
- 電源の+端子から電流を流す。
- スイッチを通り、抵抗を経由してLEDに電流を供給。
- LEDのアノード側に接続し、カソード側を電源の-端子に接続。
【考慮点】
- 抵抗値が低すぎるとLEDが壊れる。電流制限のために適切な抵抗値を選定。
- スイッチを開放すると電流が止まる構造にする。
- 部品配置をコンパクトにするための基板設計も必要。
このようなシンプルな設計からスタートし、徐々にセンサー制御、マイコン制御、無線通信など複雑な回路設計へと発展していきます。
電気回路設計の重要性と応用分野
電気回路設計は、あらゆる電子機器の「頭脳」とも言える部分です。スマートフォン、家電製品、自動車、産業機械、医療機器、IoT製品など、電気で動くあらゆる製品は、内部に回路があり、それぞれ専用に設計された回路設計があります。
応用分野の例:
- 家電製品:エアコン、冷蔵庫、洗濯機の制御回路
- 自動車:エンジン制御、エアバッグ、電装品の回路
- 産業機械:ロボットアーム、工場ラインの制御回路
- 通信機器:スマートフォン、Wi-Fiルーターの信号処理回路
また、近年ではAIやIoT、5Gなどの先端技術と融合し、高度かつ省電力な回路設計が求められています。アナログとデジタル、ソフトウェアとハードウェアを統合したシステム設計の重要性も高まっています。
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