工場用語辞典

半導体チップ（ICチップ）を製造する過程で使用される各種の装置や機械の総称です。半導体は、スマー

半導体チップ（ICチップ）を製造する過程で使用される各種の装置や機械の総称です。半導体は、スマートフォンやパソコン、車、家電、AI機器など、現代のあらゆる電子機器に欠かせない重要な部品です。その製造には、極めて高精度かつ複雑な工程が必要であり、それぞれの工程に対応した専用の製造装置が使われます。これらの装置は、最先端の技術と精密な制御能力を持ち、非常に高価かつ高度な機械でもあります。

1. 半導体製造の流れと装置の役割

1-1. ウェハーとは何か

半導体製造は、まず「シリコンウェハー」と呼ばれる円形の薄い板から始まります。このウェハー上に、何百個もの半導体チップが製造されます。製造装置は、このウェハーに対して様々な処理を施し、回路を形成していきます。

1-2. 主な製造工程と装置の種類

半導体製造は、大きく「前工程」と「後工程」に分かれます。前工程ではウェハー上に微細な回路を作り、後工程ではそのウェハーをチップとして切り出し、パッケージ化して完成品にします。

以下は、前工程で使われる主な装置です：

• 成膜装置：ウェハーに薄い膜（絶縁膜や導電膜など）を形成します。CVD（化学気相成長）装置やスパッタ装置が代表例です。
• フォトリソグラフィ装置（露光装置）：微細な回路パターンをウェハー上に転写する工程で使用されます。最も重要かつ高価な装置で、ASMLなどが有名です。
• エッチング装置：不要な部分の膜を削り取る装置で、プラズマを用いるドライエッチングが主流です。
• イオン注入装置：シリコンに不純物を注入して、電子の流れを制御するための装置です。
• 洗浄装置：微粒子や有機物などの汚れを取り除き、工程間でウェハーを清浄に保ちます。

後工程で使われる装置には、ダイシング装置（チップの切り出し）、ワイヤーボンダー（配線接続）、モールディング装置（封止）などがあります。

2. 半導体製造装置の特徴と技術的課題

2-1. 超精密・超クリーン技術

半導体製造には、ナノメートル（1ナノメートル＝10億分の1メートル）単位の精度が求められます。そのため、製造装置も原子レベルでの精密な加工が可能な技術を備えています。また、クリーンルームと呼ばれる極めて清浄な環境で使われるため、装置にも高い防塵性能が必要です。わずかなホコリや異物でも製品不良につながるからです。

2-2. 巨大な設備投資と開発コスト

製造装置は1台で数億円から数百億円にもなることがあり、半導体工場（ファブ）の建設には数千億円規模の投資が必要とされます。特に先端のEUV（極端紫外線）露光装置は、1台で数百億円とも言われ、製造装置メーカーと半導体企業との連携が不可欠です。

2-3. 技術進化のスピード

半導体の進化に伴い、製造装置も常に改良されなければなりません。数年ごとに回路線幅が小さくなり（例：7nm → 5nm → 3nm）、そのたびに装置も対応する必要があります。また、AIや自動運転など新しい用途に対応したプロセス技術の開発も急速に進んでいます。

3. 製造装置産業の現状と日本企業の強み

3-1. 世界の主要企業と市場構造

半導体製造装置は、アメリカ、オランダ、日本などの企業が世界市場を支配しています。以下は代表的な装置メーカーです：

• ASML（オランダ）：EUV露光装置で世界唯一のメーカー
• Applied Materials（米）：成膜やエッチング装置で世界トップクラス
• Lam Research（米）：エッチング装置で強みを持つ
• 東京エレクトロン（日本）：成膜、洗浄、エッチング装置など幅広く展開
• SCREENホールディングス（日本）：洗浄装置で高シェア
• 日立ハイテク（日本）：電子顕微鏡や計測装置に強み

3-2. 日本の高い技術力と課題

日本は露光装置以外の多くの分野で高い技術力を持ち、素材・部品・装置の多くで世界シェアを有しています。特に洗浄や成膜、計測装置など、不可欠な工程を担う企業が多く存在します。

一方で、最先端技術ではアメリカやオランダにリードされている面もあり、国家としての技術力維持と人材育成、サプライチェーンの強化が課題となっています。

3-3. 地政学リスクと国内回帰の動き

最近では、米中対立や台湾情勢などの影響で、半導体製造の安全保障が注目されています。そのため、日本を含む各国で製造装置や材料の国産化、供給網の多様化が進められています。装置メーカーにとっても、こうした動きは新たな成長機会となっています。

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