工場用語辞典
半導体 【よみ】 はんどうたい 【英語】 semiconductor
「電気を通す導体(金属など)」と「電気を通さない絶縁体(ゴムやガラスなど)」の中間の性質を持つ物質のことです。電気の流れやすさをコントロールできるという特性から、現代の電子機器に欠かせない重要な材料となっています。スマートフォン、パソコン、テレビ、自動車、家電製品など、私たちの身の回りにあるほとんどの機器に半導体が使われています。
1. 半導体の基本的な性質と材料
1-1. 半導体の定義と特徴
半導体は、温度や不純物(ドーピング)によって電気の流れ方が変化する特徴があります。常温ではある程度の電気を通しますが、金属ほどではなく、逆に絶縁体よりは通電性があります。この「中間的な性質」が、回路のスイッチや増幅器として活用される理由です。
1-2. 主な材料:シリコン(Si)
半導体として最も広く使われている材料は「シリコン(ケイ素)」です。シリコンは地球上に豊富に存在し、化学的に安定しており、加工がしやすいため、半導体産業の主力素材となっています。他にも、ガリウム砒素(GaAs)やシリコンカーバイド(SiC)なども特定の用途で使われます。
1-3. ドーピングと電子制御
純粋なシリコンに微量の不純物を加えることで、電気の流れをよりコントロールしやすくなります。これを「ドーピング」と言います。例えば、リンやホウ素などを加えることで、電子や正孔(電子の穴)の動きを制御し、電気回路として機能させることができます。
2. 半導体の主な種類と役割
2-1. トランジスタ
トランジスタは、半導体の基本的な構成要素の一つで、電気のスイッチや信号の増幅に使われます。パソコンのCPU(中央演算処理装置)などでは、何十億個ものトランジスタが使われ、計算処理や制御機能を担っています。
2-2. ダイオード
ダイオードは、電気を一方向にしか流さない特性を持つ部品です。整流器やLED(発光ダイオード)などに使われており、電流の向きを制御することで、安全かつ効率的な電力供給を可能にしています。
2-3. 集積回路(IC)とマイクロチップ
多数のトランジスタや電子部品を一つのチップにまとめたものが「集積回路(IC)」です。これにより、小型で高性能な電子機器が実現可能となりました。スマートフォンの中には、非常に高密度な集積回路が搭載されており、通信、画像処理、センサー制御などの複雑な処理をこなしています。
3. 半導体の応用と今後の展望
3-1. 幅広い応用分野
半導体は、情報機器だけでなく、自動車(とくに電気自動車や自動運転車)、医療機器、ロボット、エネルギー分野など、多岐にわたる産業で使われています。最近では「スマート家電」や「IoT(モノのインターネット)」の普及により、あらゆる物に半導体が組み込まれるようになってきています。
3-2. 技術革新と微細化
半導体技術は年々進化しており、「微細化」と「高性能化」が大きなテーマです。半導体回路の幅はナノメートル(1nm=10億分の1メートル)単位で縮小されており、2020年代後半には2nmプロセスと呼ばれる超微細技術も実用化されています。これにより、省電力かつ高速なチップが開発され、AIやクラウドコンピューティングなどの分野を支えています。
3-3. 半導体不足と経済への影響
一方で、半導体は非常に高度な製造技術とサプライチェーンが必要なため、地政学リスクや自然災害、パンデミックなどによって供給が不安定になることがあります。2020年代初頭には世界的な「半導体不足」が起き、自動車産業や電子機器の生産に大きな影響を及ぼしました。これにより、各国が半導体の国内生産を強化する動きを加速させています。
●関連ワード
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