プラントメンテナンスとは?職種別の仕事内容から将来性まで解説!
工業製品を生産する施設の安全・安定を保つためには、プラントメンテナンスが欠かせません。当記事では、プラントメンテナンス業の主な仕事内容や求められるスキル、魅力や将来性について徹底解説しています。
プラントメンテナンス業は、工業製品の生産を支える重要な役割を果たしています。プラントの運営を安全かつ効率的に保つためには、定期的な点検や修理が欠かせません。多岐にわたる職種それぞれが専門的なスキルと知識を駆使して、プラントの稼働を支えている業界です。
当記事では、プラントメンテナンス業の主な仕事内容や求められるスキル、魅力や将来性について詳しく解説します。プラントメンテナンス業界に興味がある方にとって、役立つ情報が満載です。
目次
プラントメンテナンスとは?プラントエンジニアリングとの違いも
プラントメンテナンスとは、工業製品を生産する工場や機械・設備の点検や修理を行い、安全・安定を保つための保全活動です。「プラント」とは、工場や設備を意味し、原料を加工して工業製品を生産する施設を指します。
たとえば、自動車やパソコン、家電や医薬品などの製品を生産する工場や、プラスチックや製紙などの素材・部品を生産する施設などです。また、電力やガソリンなどのエネルギーを生産する施設も含まれます。
プラントの主な種類は以下の3つです。
系統 | 製品系 | エネルギー系 | 環境系 |
例 | 石油プラント 化学プラント 製鉄プラント 製薬プラント 食品プラント | 発電プラント LNGプラント (ガス) | 環境プラント(廃棄物の処理、再利用、焼却による発電など) 水処理プラント(上下水の処理など) |
プラント業界は「プラントメンテナンス業」と「プラントエンジニアリング業」に大きく分けられます。プラントメンテナンス業は、既存のプラントが正常に稼働するよう、日々の運用と保守を担当する職種です。企業によってはプラントの改造工事も請け負います。
一方、プラントエンジニアリング業は、新しいプラントの設計や建設、既存プラントの改良などを行う職種です。彼らは企画から設計、資材調達、施工管理まで、プロジェクト全体をコーディネートする役割を持ちます。
プラントメンテナンス業は維持管理に重点を置き、プラントエンジニアリング業は新設計と構築に焦点を当てる業種です。両者は相互に補完し合い、産業の基盤を支えています。
【職種別】プラントメンテナンス業の主な仕事内容
プラントメンテナンスの仕事は、プラントの保全・整備・改善に関する業務です。「プラントメンテナンス」とひとくちに言ってもさまざまな職種があり、大きく「技術職」「施工管理職」「安全衛生職」「総務・事務職」の4つに分けられます。
ただしプラント・企業によっても仕事内容は多岐にわたり、職種に関わらずさまざまなメンテナンス業務を横断的に担当するケースも少なくありません。以下では、各職種の仕事内容を解説します。
技術職
技術職とは、プラントの機械や設備のメンテナンスを専門に行う職種です。技術職の中にも、さまざまな役割があります。
たとえば「仕上げ工」は、発電タービンや大型ポンプなどの回転機械を分解、整備、再組立する仕事です。これらの機械は非常に精密で、1/100mm単位で調整しなければなりません。
また、「製缶工」は、プラント内のボイラーやタンク、大口径配管などの溶接構造物を製作・修理します。金属の特性を理解し、適切に加工・溶接する高度な技術が必要です。
そして、工場内の配管システムの設置・修理を担うのが「配管工」です。配管はプラント内の気体や流体を効率的に移動させるための重要な要素であり、図面を正確に読み取り、適切に施工する能力が求められます。
施工管理職
施工管理職とは、プラントメンテナンス工事の全般的な管理を行う職種です。メンテナンス監督として、メンテナンス計画の立案からスケジュール管理、品質管理、そして現場の安全管理まで多岐にわたる業務を担当します。
たとえば、作業員の指揮監督、資材や人員の手配、工程管理などです。施工管理職には、品質基準を満たしつつ安全性が確保された状態で、工事が計画通りに進行しているかを監督する責任があります。
さらに、工事の進捗や予算管理も行い、コストオーバーが発生しないようにするのも重要です。そのため、施工管理職には高い統率力と計画力が求められます。
安全衛生職
安全衛生職とは、プラント内の安全を確保し、労働環境を最適化する仕事を担う職種です。たとえば、職場環境の安全衛生の推進や安全パトロールの実施、法規関連の事務処理などを行います。また、電気設備の点検や修理を行う「電気保全」や、計測機器の保守・管理を行う「計装保全」なども安全衛生職の一部です。
電気保全では、電気設備の異常を検知し、故障を未然に防ぐためのメンテナンスを実施します。一方、計装保全は、プラントの運転状況をリアルタイムで監視し、安全で効率的な運転を支援する役割です。安全衛生職は、プラントの運営において欠かせない重要な役割を果たしています。
総務・事務職
総務・事務職は、プラントの運営を支えるためのさまざまな業務を担当する職種です。たとえば、社員の働きやすい環境を整えるための業務や経理業務、人事業務、購買管理などが含まれます。また、各営業所内での庶務や備品の管理、手配、納品書の処理なども担当します。
総務・事務職は、会社全体の円滑な運営を支えるいわば「縁の下の力持ち」的な存在です。彼らの仕事は、プラントの運営がスムーズに行われるために必須であり、企業の健全な経営と事業の成長に直結しています。正確で迅速な業務遂行が求められる職種です。
プラントメンテナンス業の平均年収
プラントメンテナンス業の平均年収は、約300万円~600万円です。職種や勤務地、担当業務によって異なりますが、技術職や管理職など専門的なスキルや資格を持つ場合はさらに高収入が期待できるでしょう。
職能手当や資格手当のある職場も多く、施工管理技士や電気工事士などの資格を持つと、資格手当が毎月の給与に加算されます。さらに海外勤務の経験があれば、年収を大幅に上げることも可能です。
勤続年数や経験、役職も年収に大きく影響します。たとえば、技術職で経験豊富なエンジニアは年収600万円以上、施工管理職の所長クラスでは年収700万円以上になるケースも珍しくありません。プラントメンテナンス業は、専門知識を生かしてキャリアアップを図ることで、高収入を実現できる魅力的な分野です。
プラントメンテナンス業の魅力
プラントメンテナンス業には、仕事への愛着を持ちやすくなる多くの魅力があります。日常のメンテナンス業務からトラブル対応まで、幅広い業務に携わることで技術力や問題解決能力を磨く機会が多い仕事です。
ここからは、プラントメンテナンス業の代表的な魅力を3つ紹介します。
トラブルの復旧作業が多くやりがいを感じやすい
プラントメンテナンスでは、日常的に小さなトラブルから大きな問題まで発生します。これらのトラブルは早期に発見し、迅速に対応しなければ、重大な事故につながりかねません。
トラブルの復旧作業が成功すればプラントの稼働も早期に再開でき、関係者から感謝の言葉をもらえることも多い仕事です。こうした経験は、技術者にとって大きな達成感とやりがいを感じられるでしょう。
また、トラブルの原因を特定し再発防止策を講じることで、自身の技術力を高める機会となり、さらなる成長を実感できます。
縁の下の力持ちとして活躍できる
プラントメンテナンス業は、日常的な点検や保守作業を通じて、プラントの平常運転を維持するのが主な業務です。華々しさや直接的な評価を受ける機会は少ないかもしれませんが、プラント全体の運営には絶対に欠かせません。
問題が発生せずに安定稼働が続く状態を維持できるのは、メンテナンスチームの努力の賜物です。縁の下の力持ちとして自分の仕事が多くの人々の生活を支えているという実感は、ほかに代えがたい大きな誇りや達成感をもたらします。
あらゆる企業や人とのかかわりをもてる
プラントメンテナンス業では、さまざまな企業や技術者と連携する仕事が多くあります。新しいプラントの設計や部品製作、定期メンテナンス時には、異業種や他国の企業と協力するのが一般的です。海外企業との協力が必要なプロジェクトや国際的な視点が求められる場面も多く、グローバルな経験を積むことができるでしょう。
また、異なるバックグラウンドを持つ人々とのコミュニケーションを通じて、柔軟な対応力や問題解決能力を磨くことができる点も、この業界の魅力です。こうした経験は、キャリアプランにおいても大きな財産となります。
プラントメンテナンス業の大変なところ
どの仕事にも難しい側面があるように、プラントメンテナンス業にも魅力だけでなく大変なところも少なからず存在します。特に指摘されるのは、以下の2点です。
●勤務時間が一定ではない可能性もある
プラントメンテナンス業では、勤務時間が固定されていない職場があります。プラントの稼働状況によって交代制勤務を実施する企業もあり、早番や夜勤などに勤務時間が変わるケースも珍しくありません。
また、トラブルが発生した場合、緊急作業のために残業になる可能性があります。特に迅速な復旧が求められる重大なトラブルの場合は、休日出勤を余儀なくされることもあるでしょう。
●現場作業が発生する可能性もある
プラントメンテナンス業では、現場での作業が発生することもあります。点検作業を主に担当する場合でも、状況によっては現地での修繕作業を行わなければなりません。特に大きなトラブルが発生した際には、現場での緊急対応が求められ、忙しい日々が続くこともあります。
体力や技術力が求められるため、現場での作業が苦手な方には大変に感じるケースもゼロではありません。
とは言え、適切な職場を選べばこれらの課題に対処することが可能です。また、仕事に慣れてくると大変さも軽減され、業務を効率的にこなせるようになります。職場環境や勤務条件をよく理解し、自分に合った労働環境を見つけることが最も大切です。
プラントメンテナンス業に求められるスキル・素質
プラントメンテナンス業は、高度な専門知識と技術が求められる業界です。この分野で働くためには、ただ知識を持っているだけでなく、実際の作業や問題解決に活用できるスキルも欠かせません。さらに、コミュニケーション能力や体力も重要です。
以下では、プラントメンテナンス業で特に求められる3つのスキル・素質を解説します。
業界に関する専門知識
プラントメンテナンス業では、業界に関する深い専門知識や関連資格が必要です。これは、プラントの機械や設備が多岐にわたり、各種装置の特性や動作原理への理解が求められるためです。
たとえば、電気系の業務を行う場合には「電気主任技術者」や「電気工事士」の資格が必要とされる傾向にあります。また、機械保全技能士やボイラー溶接士などの資格も、該当業務を行う際に欠かせません。
これらの資格は、プラント内での安全な作業を保証するものであり、専門的な技術力を持つ証となります。さらに、各プラントや企業で取り扱う分野に特化した知識も重要です。
コミュニケーション能力
プラントメンテナンス業では、多くの人々と協力して仕事を進める必要があります。関連企業や協力会社、設計チーム、施工チームとの連携が求められる場面が多く、スムーズなコミュニケーションが欠かせません。たとえば、業務の進行状況を共有したり、問題が発生した際の対策を協議したりするための折衝能力が必要となります。
また、技術的な情報を分かりやすく伝えるスキルも必要です。特に、緊急対応が必要な場面では、迅速かつ的確なコミュニケーションが求められます。コミュニケーション能力は、チームワークを強化し、仕事の効率を上げるためにも不可欠な要素です。
ある程度の体力
プラントメンテナンス業は、体力を要する現場作業が少なくありません。高所や狭い場所での作業、重機を使った作業などは日常的です。また、プラントの稼働を維持するために、緊急対応で夜間や休日に作業を行う場合もあります。これらの作業は、長時間にわたることが多く、体力的な負担が大きい仕事です。
さらに、厳しい気候条件や環境下での作業もあるため、体調管理が重要となります。プラントメンテナンス業において、体力の維持は作業効率を上げるだけでなく、事故や怪我のリスクを減らすためにも重要です。
基本的に現場で活躍する技術職や施工管理職・安全衛生職に就くのであれば、ある程度の体力をつけておくと余裕をもって働きやすくなるでしょう。
プラントメンテナンス業の将来性
プラントメンテナンス業界は、技術の進歩やDX(デジタルトランスフォーメーション)の影響により、業務内容や作業環境が変化しています。たとえば、設備のIoT化が進むことで、従来の手作業による検査がセンサーによる自動化に置き換わるなど、新たな技術や知識の習得が必須です。
今後、プラントメンテナンス業務はより高度で専門的なものとなり、専門知識を持つ技術者の需要が高まると予想されます。また、海外のプラントでのメンテナンス需要も増加しており、国際的な展開も進んでいます。このように、プラントメンテナンス業は今後も成長が見込まれる分野です。
若手技術者の育成や新たな技術の導入が進む中、将来のキャリアアップも期待できます。DX化に伴う技術の進歩に対応できる人材は、業界でますます重要視されるでしょう。プラントメンテナンス業は、持続的な成長と安定した需要が見込まれるため、将来性のある職業として注目されています。
まとめ
プラントメンテナンス業は、工業製品の生産を支える重要な役割を担う業界です。技術職や施工管理職、安全衛生職、総務・事務職といったさまざまな職種があり、それぞれが専門知識とスキルを生かして働いています。
業界のDX化で業務内容も進化しており、将来性も高い分野です。体力やコミュニケーション能力も求められますが、やりがいを感じやすくキャリアアップの選択肢も豊富にあります。新しい技術や知識を積極的に学びたいと考えている方にとって、今がチャレンジする絶好の機会と言えるでしょう。
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