玉掛けとは?主な作業内容・必要な資格・資格取得のメリットを紹介!
玉掛け作業は、工場や建設現場などで重量物を運搬するための技術です。今回は、玉掛け作業の概要や具体的な作業内容、さらに平均年収や必要な資格、資格取得の方法とメリットを徹底解説しています。玉掛けの作業に興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
玉掛け作業は、工場や建設現場などで重量物を安全に運搬するために欠かせない技術です。しかし、この作業には専門知識と技術が必要であり、資格を持った作業者でなければ担当できません。
資格を取得することで作業の安全性が高まるのはもちろん、仕事の幅が広がり、キャリアアップや転職のチャンスも増えるのが大きな魅力です。当記事では、玉掛け作業の概要から具体的な作業内容、さらに必要な資格、資格取得の方法とメリットまで解説しています。玉掛けの作業に興味がある方はぜひ参考にしてください。
目次
玉掛けとは?
玉掛けとは、工場や建設現場などでクレーンを使用する際、吊り荷をフックに固定したり外したりする作業です。玉掛けを行う作業員は「玉掛け作業者」または「玉掛け作業員」と呼ばれます。
玉掛けはクレーンを使用する際に不可欠な作業であり、資格がなければ担当できません。重い荷物を安全に吊り上げるためには、ロープの強度やクレーンの角度など、専門的な知識と技術が求められるためです。
「玉掛け」という名前の由来には明確な根拠はありませんが、掛け軸を掛ける際に使用される宝石(玉)と関連しているという説が有力です。掛け軸を掛ける作業がバランスを重視する点で玉掛け作業と共通する部分があるため、この名称が広まったと言われています。
玉掛け作業者とクレーンオペレーターの違い
玉掛け作業者とクレーンオペレーターは、どちらもクレーンを使った作業に関わりますが、役割は異なります。
玉掛け作業者は、荷物をフックに掛けたりクレーンに渡したりする担当です。一方、クレーンオペレーターはクレーンを操作して荷物を吊り上げ、目的の場所まで移動させるのが役割です。
この2つの職種は相互に補完し合い、現場の安全と効率的な作業を支えています。両方の資格を取得して、1人で作業をこなす方も珍しくありません。
玉掛け作業が必要となる現場
玉掛け作業は、重量物を安全に移動させるため、さまざまな業界で活躍の場があります。代表的な現場は、以下の3種類です。
●製造工場 機械や部品など重量のある製品を扱うことが多い製造工場では、大きな荷物をクレーンで運搬する際に玉掛け作業が必要です。製品や材料の吊り上げ、移動の際には、作業員が正確に荷物をフックに掛けてクレーンオペレーターと連携することで、安全かつスムーズに作業が進行します。 ●建設現場 建設現場では、建材や足場材などの重い資材をクレーンで移動させる機会が頻繁にあります。特に土木工事や高層ビルの建設現場では、重量物を高所に運搬するため、玉掛け作業者が欠かせません。正確な荷掛けと安全な作業手順の実行により、現場全体の安全が保たれます。 ●倉庫 倉庫でも、大型の荷物をクレーンで運搬する場面は少なくありません。特に、物流の場面でフォークリフトだけでは対応できない重い荷物を取り扱う際に、玉掛け作業者の技術が求められます。 |
玉掛け作業は、クレーンを使用することの多い製造・建設・物流の現場で欠かせない作業です。
玉掛け作業に必要な2つの用具
玉掛け作業では、重い荷物を安全に吊り上げるために専用の用具が使用されます。代表的な用具は、ワイヤーロープとベルトスリングの2つです。いずれも異なる特性を持つため、作業内容や荷物の種類に応じて使い分けなければなりません。
ここからは、ワイヤーロープとベルトスリングの特徴をそれぞれ解説します。
ワイヤーロープ
ワイヤーロープは、クレーンで特に重い荷物を吊り上げる際に使用される頑丈なロープです。
安全性が非常に重要で、「クレーン等安全規則」の定めにより、玉掛け用のワイヤーロープは安全係数6以上でなければなりません。
また、ワイヤーロープの両端には、フック・シャックル・リング・アイのいずれかを取りつけることが義務づけられています。この「アイ」とは、ロープの端を輪にした部分で、ここにフックを掛けるケースが一般的です。
ワイヤーロープの端末を加工する方法には、「アイスプライス(編み込み)加工」と「圧縮止め(ロック)加工」の2種類があります。前者はストランドをワイヤーロープの間に差し込む方法で、後者は専用の金具を機械を使って短時間で加工する方法です。
ベルトスリング
ベルトスリングは、合成繊維でできた柔らかいベルト状の紐です。軽量で柔軟性があるため、特に傷つきやすい荷物や軽い荷物の吊り上げに適しています。
扱いやすく作業効率はよいものの、熱や鋭利な物には弱いため、取り扱いには注意が必要です。ベルトが切れると荷物が落下する危険があるため、荷物によっては保護具を使用したり使用を避けたりする判断が求められます。
玉掛け作業の主な方法|各方法の具体的な作業内容も紹介!
玉掛け作業には、大きく分けて「フックに掛ける方法」と「吊り荷に掛ける方法」の2つがあります。どちらも複数種類の玉掛け方法がありますが、荷物の形状や重心に合わせて適切な方法を選ばなければなりません。
フックに結びつけたロープを荷物に掛ける場合は「目掛け」、荷物を縛ったロープをフックに掛ける場合は「半掛け」がよく使用される方法です。以下では、玉掛け作業の代表的な方法をそれぞれ解説します。
フックに掛ける方法
フックに掛ける方法は、玉掛け作業の基本的な技術です。荷物に直接フックを掛けるわけではなく、ロープやワイヤーを介して荷物を吊り上げます。フックに掛ける場合の代表的な方法は、以下の4つです。
●目掛け 目掛けは、もっとも一般的な玉掛けの方法です。ワイヤーロープの端部をアイ(輪状)に加工し、このアイをクレーンのフックに掛けます。1本のワイヤーロープで荷物を吊ることもあれば、2本や4本のワイヤーロープを使用して吊る場合もあります。シンプルで効率的な方法ですが、重さや形状が不均等な荷物やバランスを保つのが難しい荷物の運搬には向きません。 ●半掛け 半掛けは目掛けと異なり、ワイヤーロープのアイをフックに掛けずに、ロープ自体を直接フックに掛ける方法です。ワイヤーロープの使用本数により2本吊りや6本吊りとも呼ばれ、定型的な荷物や吊り手がついている荷物に適しています。しかし、ワイヤーロープのバランスを取るのが難しいため、重心が偏っている荷物には向きません。熟練した技術が求められます。 ●あだ巻き掛け あだ巻き掛けは、ワイヤーロープをフックに1回巻きつける方法です。この手法は、荷物が滑らないようにするために使われます。特に重心がしっかりしている荷物に適しており、バランスが崩れにくいのが利点です。しかし、ワイヤーロープに癖がつくため、作業後はワイヤーロープの修理が必要になります。また、太いワイヤーロープには向きません。 ●肩掛け 肩掛けは、フックの「肩」の部分にワイヤーロープを巻きつける方法です。あだ巻き掛けに似ていますが、ワイヤーロープの摩耗が少なく、ロープの状態を維持しやすいメリットがある一方、ロープが重なって擦れると荷物の落下リスクが高まるデメリットもあります。フックの形状によってはこの方法が使えません。 |
吊り荷に掛ける方法
吊り荷に掛ける方法は、荷物自体にロープやワイヤーを巻きつけてからクレーンのフックに掛ける技法です。荷物の形状や大きさに応じて、さまざまな掛け方が存在します。吊り荷に掛ける場合の代表的な方法は、以下の4つです。
●目掛け 目掛けは、吊り荷の吊り手にワイヤーロープのアイを掛ける方法です。この方法はバランスのよい荷物に適しています。ワイヤーロープが緩んだ場合には荷物が落下する危険性があるため、荷物の重心をしっかりと確認して作業を行わなければなりません。 ●半掛け 半掛けは、ワイヤーロープを吊り荷の下に回し、フックに掛けるシンプルな方法です。簡単で汎用性が高い方法ですが、吊り角度が大きくなると荷物が不安定になるため、慎重にバランスを取る必要があります。荷揺れや接触による事故を防ぐためにも、正確な角度調整が重要です。 ●目通し(絞り) 目通し(絞り)は、ワイヤーロープを吊り荷に巻きつけ、ロープを絞るようにして固定する方法です。この方法は、「チョーク吊り」や「縛り吊り」とも呼ばれ、ロープの滑りを防ぎ、荷物を安定させる効果があります。ただし、ワイヤーロープに強い負担がかかるため、使用後のメンテナンスが欠かせません。 ●あだ巻き掛け あだ巻き掛けは、ワイヤーロープを吊り荷に1回巻きつけてから吊るす方法です。長尺の荷物を安定して運ぶ場合に効果的ですが、ロープを2回巻きつけて固定する必要があり、作業には手間がかかります。しっかりと荷物を固定するには、高度な技術が必要です。 |
玉掛け作業員の平均年収
玉掛け作業員の平均年収は、約442万円(平均月収310,400円、年間賞与等695,700円)と推定されます。この金額は、厚生労働省による「令和5年賃金構造基本統計調査」による、「その他の定置・建設機械運転従事者」のデータを参考に算出しました。
「その他の定置・建設機械運転従事者」には、ボイラーオペレーターやコンプレッサー運転工も含まれており、玉掛け作業員に限定した正確な給与情報はありません。ただ、1つのカテゴリーにまとめて計上されていることから、給与の差も大きくないと考えられます。
(出典:政府統計の総合窓口e-Stat「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」/https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040163741&fileKind=4)
玉掛け作業に必要となる資格|各資格の取得方法も
玉掛け作業は、非常に重い荷物を扱うため慎重に行わなければなりません。不適切な作業は重大事故につながる危険性があるため、資格を持った作業者のみが従事することが許されています。
玉掛け作業に必要な資格には、扱う荷物の重量に応じて「玉掛け特別教育」の「玉掛け技能講習」の2種類があり、いずれも18歳以上であれば誰でも取得可能です。
ここからは、それぞれの資格と取得方法について解説します。
【1トン未満】玉掛け特別教育
1トン未満の荷物を扱う玉掛け作業には「玉掛け特別教育」を受ける必要があります。この資格は、各事業者や教習所が実施しており、学科5時間と実技4時間の合計9時間の講習を受ければ取得可能です。試験はなく、講習の全過程を終了すると修了証が発行され、これにより作業に従事できるようになります。
受講料はテキスト代を含めて15,000円前後が一般的です。資格取得の難易度は低く、特別な事前知識や経験は必要ありません。初心者でも比較的簡単に取得できるため、玉掛け作業の最初のステップとして有用な資格です。
【1トン以上】玉掛け技能講習
1トン以上の荷物を扱う場合には「玉掛け技能講習」の資格が必要です。この資格は、労働安全衛生法に基づき、各都道府県の労働局に登録された事業者が講習を実施します。
3日かけて学科12時間、実技7時間の合計19時間の講習を受講し、すべての内容を修了すると資格が取得できます。学科・実技ともに修了試験が実施されますが、国家資格でありながら合格率は高めです。
すでに「玉掛け特別教育」の修了証を持っている場合やクレーン運転免許を持っている場合には、一部の講習が免除されます。受講料は20,000円程度が一般的です。資格取得後は大型荷物の玉掛け作業に従事できます。
玉掛け資格取得についてはこちらのコラムもご参照ください!
玉掛けの資格を取得する3つのメリット
玉掛けの資格を取得することで、現場作業の安全性や正確さが向上するだけでなく、キャリアや就職においても多くの利点があります。玉掛けはクレーンを使う現場では必要不可欠であり、持っていることでさまざまな場面で優遇されることが多い資格です。
最後に、玉掛けの資格を取得する主なメリットを3つ解説します。
仕事の幅が広がりキャリアアップにもつながる
玉掛けの資格を取得すると、クレーン作業のある現場での重要性が高まり、幅広い業務を任せてもらえる機会が増えます。さまざまな現場での経験を積めれば現場での信頼が高まり、スムーズなキャリアアップが実現するでしょう。
さらに、クレーン運転士の資格と併せて取得し、ダブルライセンスとなればより多くの仕事に携われるようになります。結果的に給与アップも期待できるため、取得するメリットが大きな資格です。
応募できる求人の幅が広がる
玉掛けの資格を持っていると、応募できる求人の選択肢が大幅に広がります。クレーン作業のある現場では、玉掛けの資格を持つ作業員の存在が必須条件です。資格保有者のみが応募できる求人も少なくありません。
玉掛けの資格保持者を欲する業界は多く、特に建設業や製造業、物流業などでは玉掛け資格の需要が高い傾向です。たとえ実務経験が少なくても、玉掛け資格を取得しているだけで即戦力として評価され、採用されやすくなります。
就職・転職に有利となる
玉掛けの資格は国家資格のため、履歴書に記載するとよい評価を得やすくなります。国家資格は、スキルや知識を証明するための非常に有効な手段であり、就職や転職活動を有利に進められるケースが少なくありません。
特に、玉掛け作業が必要な現場では、資格保有者が優先的に採用される傾向にあります。また、国家資格の保有は採用担当者への大きなアピールとなり、ほかの候補者との差別化につながる武器となるでしょう。
まとめ
玉掛け作業は、クレーンを使って重い荷物を安全に運搬するために欠かせない作業です。作業には資格が必要で、扱う荷物の重量によって「玉掛け特別教育」と「玉掛け技能講習」の2種類があり、それぞれ決められた講習を受講して取得します。
いずれも国家資格であり、資格保有者は現場での需要が高めです。資格を取得すれば、応募できる求人の種類やキャリアアップの機会も増え、就職や転職にも有利になります。仕事の幅を広げつつ、現場で安全に作業を行うためにも、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
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