品質管理と品質保証の違いとは?仕事内容と必要なスキルも解説
製品やサービスを作る過程で重要となるのが、品質管理と品質保証です。名前が似ていることから、混同されやすいものの、2つには明確な違いがあります。仕事内容も異なるため、これから品質管理または品質保証の仕事をしたい方は、違いを理解することが大切です。 当記事では、品質管理と品質保証の違いについて解説します。仕事内容や必要なスキル・資格についてもまとめています。品質管理・品質保証の仕事に興味がある方は、ぜひご一読ください。
目次
品質管理と品質保証の違い
品質管理とは、製品やサービスを作る過程で不良品を出さないために行う活動です。具体的には、PDCAサイクルを繰り返し実行して品質向上を進めたり、「QC7つ道具」と呼ばれるグラフや図を使って品質管理の状況を定量的に分析したりします。
品質保証はお客様が安心して、安全に製品を使い続けるために行う活動です。企画・材料選別から、製品が消費者の手に届いた後まで、長いスパンの中で幅広い業務が存在します。
出荷時点の品質を担保するために、主に製造プロセスのみを対象とする品質管理は、品質保証業務の一部とされています。
品質管理では製品が基準通りに作られているか、不良品が混入していないかを管理する部分に責任を負うのに対し、品質保証では顧客に対して責任を負うのが特徴です。
品質管理と品質保証の仕事内容
品質管理と品質保証は、どちらも製品のクオリティを守る重要な活動ですが、具体的な仕事内容は異なります。
以下では品質管理・品質保証の詳しい仕事内容について解説します。
品質管理の仕事内容
品質管理業務は、製造から出荷までのプロセスで製品に問題点がないかを判断・管理する役割が求められます。顧客ニーズに合わせた製品の安定供給を前提とし、製造工程管理や品質検証などを行うのが主な仕事です。
製造工程管理の具体例としては、製品製造の作業手順を統一・可視化することで、ミスが起きないように管理する手法が挙げられます。品質管理教育・設備点検も、質の高い製品を出荷するために欠かせない業務です。
出荷前の製品を検査するだけではなく、生産工程や製品部品の検査も業務に含まれます。トラブルが発生した場合は原因を特定し、品質不適合を改善・防止する必要があります。
品質保証の仕事内容
品質保証は、製品が定められた品質基準を満たすように保証する目的で行う業務です。品質基準は、企業独自で定めたものや法令などに基づいて設定されるものがあります。
製品企画・開発から販売後のすべての工程に関わり、品質の担保・改善を進めるため、品質保証部門には幅広い業務内容が存在します。例えば、クレームに対応して各部門にフィードバックを行うといった品質改善に向けた業務も仕事内容の1つです。
品質トラブルがあった場合、他部門と連携して対応したり、顧客へ定期的な経過報告をしたりする役割も担います。
品質管理・品質保証の仕事に必要なスキル
品質管理・品質保証の仕事をするには、さまざまなスキルが必要です。
製品製造や販売に関わる現場で、品質管理・品質保証の仕事に就く場合に身につけたい具体的なスキルとして、以下の3つを解説します。
リスクマネジメントスキル
製品の品質を担保・保証するためには、問題を未然に防いだり、起こってしまった問題に適切に対処したりできるリスクマネジメントスキルが欠かせません。製造する製品に限らず、製造工程における人材や設備に関して起こりうる課題も想定しておく必要があります。
不具合の発生した製品の検査などを行う品質保証では、観察力や課題解決力も必要です。状況を冷静に分析し、問題の本質を迅速に把握して対応することで、リスクを最小限に食い止める能力が要求されます。
論理的な思考力
品質管理や品質保証の仕事では、論理的に状況を整理するスキルも求められます。例えば、製品トラブルの要因を調査する場合、なぜそのような問題が発生したのかを推測・検証する必要があります。
必要な情報やデータを迅速に集めるためには、発生した事象を論理的に正しく整理する力が欠かせません。具体的な改善策を見つけ出す際にも、情報やデータを正しく分析・評価するスキルに加えて、論理的に解決への道筋を立てる力が必要です。
品質改善に関する報告書を分かりやすくまとめる業務においても、論理的な思考力が求められます。
コミュニケーションスキル
品質管理・品質保証では、製品に関わる関連部門や担当者と連携して業務を行います。現場で作業した従業員との対話において、自分が気づかなかった課題に出会える可能性があるため、周囲とのコミュニケーションは非常に重要です。
製品品質の向上に向けて、企画開発・製造・生産技術部門といったさまざまな立場の人とコミュニケーションを取るスキルも求められます。不良品などの品質トラブルが発生した場合の検査が、複数の部門で行われるケースも多いため、他部門と綿密なコミュニケーションを取る必要があります。
製品に不具合が発生した場合の顧客訪問やクレーム対応においても、具体的な問題や解決策を提案するためにコミュニケーション能力が必須です。
品質管理・品質保証の仕事に役立つ資格
品質管理・品質保証の仕事には、必須資格が存在しないため、未経験から挑戦できます。ただし、資格を取得しておくと一定のスキルを証明することが可能です。
品質管理や品質保証の仕事で役立つ資格として、以下の3つを紹介します。
品質管理検定(QC検定)
品質管理検定(QC検定)は、品質管理分野における代表的な資格として知られています。一般社団法人 日本品質管理学会の認定を受けた「日本規格協会グループ」が試験を実施している民間資格です。
年に2回、1級から4級までのレベル別に、品質管理の知識や実践方法を問う試験が実施されます。受験資格は設けられておらず、誰でも挑戦しやすいのが特徴です。ただし、2級以上は難易度が高くなるため、品質管理未経験の場合は4級から受験するのがおすすめです。
1級に合格すれば、品質管理活動を主導できるスキルを備えた証明になるため、就職や転職で有利に働く効果が期待できます。
信頼性技術者資格認定制度(JCRE)
一般財団法人 日本科学技術連盟が行う、品質管理における信頼性の知識があることを証明できる資格試験です。信頼性や品質保証業務に関わる技術者の課題解決能力の向上を目的として実施されています。
初級は受験資格が問われないため、学生や未経験の場合でも受験可能です。
初級信頼性技術者の試験は、マークシート方式の筆記試験で実施されます。中級・上級の信頼性技術者の試験では、書類審査と面接審査の両結果をもとに合否が判定されます。
品質マネジメントシステム審査員(JRCA)
品質マネジメントシステム審査員(JRCA)は、組織運営の仕組みを審査する専門職であり、品質管理・品質保証に関わる上級者向けの資格です。
品質マネジメントシステム審査員(JRCA)になるためには、一般財団法人日本要員認証協会のマネジメントシステム審査員評価登録センターへの登録が必要です。JRCAのマネジメントシステム審査員は、審査員補・審査員・主任審査員の三段階に分かれています。
最初の登録時点では審査員補からスタートし、審査チームに同行しながら実践経験を積むことで、審査員や主任審査員へ昇格する仕組みです。
まとめ
品質管理は、製品やサービスを作る過程で不良品を出さないために行う活動です。製造のプロセスで製品に問題点がないかを判断・管理する役割を担います。
品質保証は、お客様が安心して安全に製品を使い続けるために行う活動で、製品が定められた品質基準を満たすように保証するのが主な仕事です。製品企画・開発から販売後のすべての工程に関わり、品質管理も業務の一部とされています。
どちらの仕事も必須の資格はありませんが、品質管理検定(QC検定)のような関連資格を取得しておくと、スキルを証明できます。仕事に必要なスキルとしては、リスクマネジメントスキルや論理的な思考力、コミュニケーションスキルが求められます。