ホークアイとは?仕組みや採用されている主要スポーツを徹底解説!
「ホークアイ」の導入によって、スポーツ競技の判定が正確かつ公正に行えるようになりました。当記事では、ホークアイの概要や仕組み、ホークアイが採用されている主なスポーツに加え、ホークアイと大きく関係する半導体の知識について徹底解説しています。
近年、さまざまなスポーツ業界で導入されて話題になっているシステムに「ホークアイ」があります。
スポーツ観戦をよくする人はもちろん、半導体技術に興味がある方も、ホークアイという名称を聞いたことはあるのではないでしょうか。ホークアイの導入により、スポーツ競技の判定が正確かつ公平に行えるようになっています。
今回はホークアイとは何か、どのような仕組みかを説明した上で、ホークアイが採用されている主要スポーツについて徹底解説します。
目次
ホークアイ(Hawk-Eye)とは?
ホークアイ(Hawk-Eye)とは、複数のスポーツで導入されている審判補助システムのことです。ソニー株式会社のグループ会社であるホークアイイノベーションズがホークアイを開発・提供しており、日本国内ではソニーPCL株式会社が提供しています。
ホークアイの仕組みは、「ボールトラッキング」と「ビデオリプレイ技術」の2つで構成されています。
ボールトラッキングとは、複数のハイスピードカメラでボールの位置を高精度で追跡し、データをコンピューター上の3Dイメージ映像に変換する技術です。目まぐるしく動くプレー中のボールもリアルタイムに追跡できます。
もう1つのビデオリプレイ技術は、試合中に撮影された映像を活用して、選手の位置などのデータを取得・分析する技術です。
ホークアイはボールと選手の動きを3Dイメージ映像に変換することで、得点や反則などがきわどいライン上にある場合に審判の判定をサポートします。
ホークアイの歴史
ホークアイはもともと、イギリスでロケットの弾道研究を行っていたポール・ホーキンス氏によって、2001年にボールトラッキング技術として作られたシステムです。
ポール・ホーキンス氏自身がクリケット選手であったことにより、最初にクリケットボールの軌道追跡アプリケーションとして開発されました。クリケットのボール追跡を高精度で行えることが広く認められ、後にテニス・サッカー・バドミントンなどさまざまなスポーツにも導入されています。
ホークアイを提供しているホークアイイノベーションズは、2011年にソニー株式会社に買収され、以降も順調に事業拡大をしています。近年は野球やバレーボールにも導入され、試合の展開を左右する審判補助システムとして大きな注目を浴びるようになりました。
ホークアイが提供する主なシステム3選
ホークアイでは、主に「SMART」「TRACK」「INSIGHT」という3つのコア技術によるシステムがそれぞれ提供されています。いずれもプロスポーツで活用されていて、試合展開や審判の判断サポートに役立っているシステムです。
以下では、ホークアイが提供する3つのシステムについて詳細を説明します。
SMART(Synchronised Multi-Angle Replay Technology)
SMARTは、ビデオキャプチャ・レビュー・クリッピング・映像配信といったビデオリプレイ技術として普及している技術です。Synchronised Multi-Angle Replay Technologyの頭文字を取り、SMARTと呼ばれています。
SMARTは複数カメラで映像を撮影して、タイムスタンプによって同期する仕組みとなっています。複数カメラの映像により、試合中のプレーをさまざまな角度から確認することが可能です。
SMARTは放送・配信機能のサポートにも対応しており、審判の判定サポートだけでなく、スポーツ中継時のハイライト配信に活用されています。
TRACK
TRACKは、ボールトラッキング・パフォーマンストラッキング・オブジェクトトラッキングの目的で使用されている光学追跡とカメラ補正技術のことです。
ホークアイはTRACKによってボールや選手、オブジェクトの動きを追跡し、データとして記録しています。
またホークアイは2019年、TRACK技術をさらに進化させた「SkeleTRACK」をリリースしました。SkeleTRACKは、選手の骨格や関節の動きを3Dで追跡・分析して、蹴る・投げる・振るといったスポーツ特有の動作を検知できる技術です。
INSIGHT
INSIGHTは、データの収集・保存・集約・配信・視覚化といった機能を提供するサービスです。各種スポーツイベントから収集されたデータを集約し、3Dイメージ映像やヒートマップ、グラフなどに視覚化して提供します。
INSIGHTにはボール・選手の位置情報や、プレーの統計情報、試合の情報といったデータが含まれていて、選手のトレーニングや戦術強化などに活用されています。
ホークアイが採用されている主なスポーツ7選
スポーツの公正な判定を支援するために開発されたホークアイ技術は、現在では世界中の多くのスポーツで採用されています。
ホークアイが採用されているスポーツの代表例は以下の7種目です。
● クリケット ● テニス ● サッカー ● バドミントン ● ラグビー ● 野球 ● バレーボール |
それぞれのスポーツについて、ホークアイがどのように活用されているかを解説します。
クリケット
クリケットはホークアイの活用が始まった最初のスポーツで、2002年に初導入されました。
クリケットにおいてホークアイは、投手が投げたボールの軌跡を可視化し、追跡・解析ができるサービスとして使用されています。主な使用ケースは、打者がアウトになるLBW(レッグ・ビフォー・ウィケット/Leg Before Wicket)の判定やキャッチの判定などです。 クリケットにおいて、ホークアイを活用した判定システムは「DRS(Decision Review System)」と呼ばれています。
テニス
テニスでは、ホークアイを2006年に初導入しました。
テニスでホークアイが使われるケースは、主にボールがライン内に入ったか外れたかの判定(イン・アウト判定)です。ホークアイはテニスのさまざまな大会で導入されていて、四大大会のうち全仏オープンを除く3大会で活用されています。
2021年の全豪オープンでは選手の後ろ側に線審を置かなくなるなど、ホークアイの導入はプロテニスの運営に大きな変化をもたらしました。
テニスのホークアイを使用した判定は「チャレンジシステム」と呼ばれます。選手がボールのイン・アウト判定に異議がある場合、チャレンジシステムを利用することでビデオリプレイによる判定が行われる仕組みです。
サッカー
サッカーでは、ホークアイが2013年に初導入されました。2018年には、ロシアで開催されたFIFAワールドカップにおいて初めてVARシステムの一部として使用されています。
VAR(Video Assistant Referee)とは、試合のビデオ映像を確認しながら主審の判定をサポートする審判員のことです。VARシステムは最小限の干渉で最大限の利益を得ることを目的としていて、判定に重大なミスなどがあった場合にのみ、VARによる介入が行われます。
また、VARシステムとは異なる技術であるGLT(Goal Line Technology)においても、ホークアイは使用されています。
2022年12月2日にカタールで行われた「2022 FIFAワールドカップ」における「三苫の1mm」も、VARシステムによる判定の結果です。「三苫の1mm」によって、ホークアイはミリ単位での高精度な追跡・分析ができるシステムとして注目を集めました。
バドミントン
バドミントンは、2014年にホークアイを初導入しています。バドミントンにおけるホークアイシステムの名称は「IRS(Instant Review System)」です。
IRSが導入されたコートでは、選手がIRSでの判定を要求できるチャレンジシステムが採用されています。判定に疑問や不明な点があったときに、選手や主審がチャレンジをできるという内容です。
バドミントンはホークアイの導入により、試合の公平性向上を実現しています。
ラグビー
ラグビーでは、2015年に開催されたラグビーワールドカップ2015以降、さまざまなイベントでホークアイが活用されています。
ラグビーにおけるホークアイを使用したシステムは、「TMO(Television Match Official)」と「HIA(Head Injury Assessment)」の2つです。
TMOはビデオ審判員のことです。審判やTMOがビデオ判定を要求したときに、ビデオ映像を確認して判定を下します。もう1つのHIAは、医師が選手の脳震とうを確認するときに、支援を提供するサービスです。
ホークアイはTMOとHIAという2つのシステムにより、ラグビーの公平性と選手の安全確保向上に貢献しています。
野球
野球では、2020年6月に日本のヤクルトスワローズが、2020年7月にはアメリカのMLBがホークアイを導入しました。
野球におけるホークアイは、アウト・セーフといった審判の判定に対して監督が異議を申し立てる「チャレンジ制度」で使用されています。監督がチャレンジを行った場合、ビデオ映像の確認によって判定をしてもらえるシステムです。
また、ホークアイのTRACKで収集されたデータはプレー中の中継映像やデータサイト、チームのコーチングなどにも活用されています。
バレーボール
バレーボールではホークアイが世界各国のイベントで導入されており、日本の国内リーグであるVリーグも2019年にホークアイを導入しました。
バレーボールでのホークアイは、ボールのイン・アウトなど審判の判定について異議を申し立てる「チャレンジシステム」で使用されています。
またバレーボールでは、ホークアイイノベーションズの元関係者らが開発した「Bolt6」というシステムも使用されています。
Bolt6は、FIVB(国際バレーボール連盟)が主催する国際大会において導入されている技術です。Bolt6の導入により、国際大会ではもともと4人いた線審(ラインズマン)がいなくなり、試合の高速化・効率化が進んでいます。
スポーツ業界を支える「半導体」の存在
世界中で楽しまれている数々のスポーツを支えるホークアイシステムにとって、半導体は欠かせない存在となっています。
半導体とは、機械製品の情報処理を担う部品のことです。
半導体はある条件で電気を通し、それ以外では電気を通さない性質を持っていて、電流の制御を行えます。半導体を組み込んだIC(集積回路)を機械製品に搭載することにより、電流の制御で情報をデジタル処理できるという仕組みです。
ホークアイをはじめとした半導体製品・サービスは、世界中の半導体エンジニアによって作られています。半導体エンジニアは、ICの設計を行うエンジニア職です。
近年は製品をインターネットに繋ぐIoT技術がさまざまな領域で導入されており、情報処理に欠かせない半導体の需要が高まっています。さらなるデジタル化が見込まれる今後、半導体の製造に携わる半導体エンジニアは人々の娯楽や生活を支える重要な存在となるでしょう。
半導体エンジニアにご興味のある方はこちらのコラムも是非ご一読ください。
半導体エンジニアになるには?
半導体エンジニアになるにあたって、必須となる資格や経験・技術はありません。未経験の方であっても、半導体エンジニアを目指すことは可能です。
しかし、半導体エンジニアの求人では、応募条件として特定のスキルや資格を提示しているケースがあります。半導体エンジニアを目指したい方は、採用が有利になりやすいスキル・資格を取得しておいたほうがよいでしょう。
半導体エンジニアを目指す上で習得しておきたいスキル・資格をいくつか紹介します。
●半導体業界の最新情報を学ぶ姿勢
半導体業界は常に進歩しており、情報が変化するスピードが速い業界です。半導体エンジニアとして活躍するためには、業界の最新情報を学ぶ姿勢が求められます。 |
●半導体の情報収集に役立つ英語力
半導体の研究・開発は世界中で行われていて、半導体に関する最新情報は英語の文献が多い傾向があります。英語力が備わっていると、半導体の最新情報を学びやすくなるでしょう。 |
●良好な人間関係を構築できるコミュニケーション能力
半導体エンジニアは企業内のチームで働き、クライアントや他部署の人員とやり取りをする機会もあります。仕事を円滑にこなすには、高いコミュニケーション能力が欠かせません。 |
●半導体技術者検定
半導体技術者検定は、半導体についての知識を保有していることを証明できる資格です。受験級はエレクトロニクス1級・2級・3級・4級があり、2級~4級は誰でも受験できます。 |
●CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験は、CADを使用する業務についての知識・技術を証明できる資格です。「2次元CAD利用技術者試験」「3次元CAD利用技術者試験」の2科目があります。 半導体エンジニアはCADを平面図面作成に使用する機会が多いため、2次元CAD利用技術者試験の合格を目指すとよいでしょう。 |
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まとめ
ホークアイは、SMART・TRACK・INSIGHTという3つのコア技術で、スポーツにおける審判の判定補助や、中継配信のサポートに活用されているシステムです。ホークアイはさまざまなスポーツに導入されており、試合の公平性向上や誤審の防止に役立っています。
ホークアイのシステムには半導体が使われており、半導体業界は間接的にスポーツ業界を支える存在になっています。ホークアイから半導体に興味を持った方は、半導体エンジニアを目指してみてはいかがでしょうか。
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