工場用語辞典
セカンドソース 【よみ】 せかんどそーす 【英語】 second source
ある製品や部品について、複数の供給元(メーカー)が同一仕様で製造・供給できるようにすること、またはその供給元自体を指します。主に電子部品や半導体業界で使われる用語ですが、広く製造業や調達の分野でも使用されています。
特定の部品や素材を一社だけから調達している場合、その会社が供給停止や価格変更を行ったときに、製品の生産やサービスの提供が止まってしまうリスクがあります。これを「単一供給リスク(シングルソースリスク)」と呼びますが、セカンドソースを確保することでこのリスクを回避できます。
2. なぜセカンドソースが必要か
(1)供給の安定化
1社の供給元に依存すると、災害や経営不振、技術的な問題などにより部品が入手できなくなる可能性があります。セカンドソースを持つことで、別の供給元から部品を調達でき、生産を継続できます。
(2)コスト競争力の確保
複数の供給元があることで、価格交渉の余地が広がります。独占的な立場にあるメーカーに比べ、競争原理が働くことでコストを抑えることができます。
(3)品質・納期の最適化
異なる供給元を比較検討することで、より高品質・短納期の製品を選ぶことが可能になります。万一の不具合にも迅速に対応できます。
3. 実際の例:半導体業界の場合
半導体業界では、あるメーカーが開発したIC(集積回路)について、別のメーカーがライセンスを受けて同じ仕様で製造・販売することがあります。これが典型的なセカンドソースです。
【例】インテルとAMDの関係
1970年代、インテルはマイクロプロセッサ「8080」を開発しましたが、IBMはコンピュータの中核部品であるこのプロセッサに対して、セカンドソースを要求しました。インテルはAMDにライセンス供与を行い、AMDも8080互換チップを製造するようになりました。これにより、IBMは複数の供給元から安定的にプロセッサを調達できるようになりました。
このようなセカンドソース契約は、メーカー同士の技術共有に基づくため、特許や製造ノウハウが関係してきます。そのため、正式なライセンス契約や相互承認試験などが不可欠です。
4. セカンドソースと偽物・模倣品の違い
セカンドソースと混同されやすいのが「模倣品」や「コピー製品」です。セカンドソースは、元のメーカーと正式な契約を結んだ上で製造される合法的な製品です。一方、模倣品は正規の許可なしに作られた違法製品であり、品質保証もなく、信頼性に欠けるため大きなリスクがあります。
5. 他業界での応用例
セカンドソースの考え方は、食品業界や医薬品業界、建設資材などでも応用されています。たとえば、製薬会社がある成分の供給を海外の1社に頼っていた場合、輸送の問題で供給が止まることがあります。セカンドソースを国内にも確保しておくことで、医薬品の安定供給が可能になります。
●関連ワード

