金型設計とは?仕事内容・やりがい・おすすめ資格・将来性を徹底解説
幅広い分野の製造業において、金型設計エンジニアは重要な役割を果たしています。当記事では、金型設計の概要から仕事内容、魅力・やりがい、向いている人の特徴、おすすめの資格、将来性までを徹底解説しています。
金型設計エンジニアは、さまざまな分野の製造業において重要性が高い職業です。金型設計は日本のものづくりを支える仕事であり、製造業の企業からは高いニーズがあって求人も豊富に存在します。
金型設計エンジニアに興味を持っていて、具体的にどのような仕事なのか、将来性があるかが気になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、金型設計の基本から仕事内容、魅力ややりがい、おすすめの資格、そして将来性について徹底解説します。
目次
金型設計とは?
金型設計とは、成形機械による大量生産で用いられる「金型」を設計する仕事です。
そもそも金型とは、製品を効率よく大量に生産できるよう、金属素材を使用して作った型のことです。原料の金属・プラスチック・ゴムなどを金型に流し入れることで、型の形に合った製品を得られます。
生産できる製品の品質は金型の精度に左右されるため、製品の形を正確に再現できるようにする金型設計は重要な仕事です。
金型設計で扱う金型は、主に下記の3種類です。
プレス金型 | 原料を上下からプレスして形成する「プレス加工」用の金型 |
鋳造用金型 | 溶融した金属を型に流し入れて形成する「鋳造」用の金型 |
プラスチック金型 | 溶かしたプラスチックを型に流し入れて形成する「射出成形」などに使用する金型 |
どの金型を設計するかは、クライアントの要望や製品の仕様を決めた上で決定します。
また、金型設計と混同されやすい仕事に「機械設計」があります。機械設計とは、家庭で使われる身近な機械から産業用の大型機械まで、さまざまな種類の機械を設計する仕事です。
対して金型設計は、機械設計で製造された産業用の機械が生み出す製品について、大量生産ができるようにサポートする仕事です。
金型設計の仕事内容
金型設計の仕事は、単に金型の設計をするだけではありません。クライアントとの打ち合わせやコンピューターでのプログラミング、設計後の確認なども行います。金型設計の仕事に興味がある方は、具体的な仕事内容と仕事の進み方を把握しておきましょう。
ここからは、金型設計の主な仕事内容を、仕事の流れに沿って解説します。
打ち合わせ
最初に、金型を使用する製品の設計者との打ち合わせを行います。
打ち合わせの内容は、金型で大量生産したい製品を設計者に説明してもらい、図面情報の確認や金型設計時の必要情報を確認するという流れです。
同時に「どの程度のペースで製品を生産したいか」といった製造量の目標値も設定します。 打ち合わせは数回にわたって行い、金型の種類や細かい仕様などについて検討・修正を重ねて、設計図作成に向けた準備を進めます。
設計図作成
打ち合わせによって製作すべき金型の仕様が決定した後は、金型の設計図を作成します。
従来であれば設計図作成は手書きで行われていたものの、近年は3D CADを活用した図面データで作成する方法が一般的です。
設計図作成ではクライアントの要望を考慮して、生産される製品の強度・コスト・機能性などを踏まえた設計を行います。製品を金型から取り出しやすくする「抜き勾配」や、製品の強度に関わる「肉厚」、品質・見た目に影響する「パーティングライン」などを考慮する必要があるでしょう。
プログラム作成
設計図の完成後は、金型が製作されるまでの生産工程をコンピューターでプログラミングします。
金型を製作する際は、加工機械を使用して金属原料を設計図通りに加工します。加工には切削加工・研磨加工・レーザー加工・放電加工などのさまざまな方法があるため、製作したい金型に最適な加工方法を選び、プログラムを構築しなければなりません。
プログラムの構築とコンピューターへのプログラミングが終わった後は、金型の製作を行います。
組み立て・最終チェック
金型が製作できたら、金型の組み立てと最終チェックを行います。金型を組み立てて設計図通りの仕様になっているか、金型の噛み合わせや精度に問題がないかをチェックする工程です。
製作した金型に不具合がある場合、クライアントが要望した製品を目的の精度・効率で生産できません。
そのため、クライアントへの金型の引き渡し前に、人間と機械でのダブルチェックを行います。特に人力でのチェックは、豊富な経験・知識と技術が求められる作業です。
組み立て・最終チェックで問題がないと判断された、もしくは微調整や修正などを行った金型は、クライアントに引き渡されて製品の生産に利用されます。
金型設計の魅力・やりがい
金型設計はさまざまな分野の製造業を支えていて、現代社会に欠かせない仕事です。金型設計の仕事をやってみたい方は、金型設計の仕事が持つ魅力・やりがいを確認した上で、就職・転職の考えを固めるとよいでしょう。
金型設計の仕事で働く主な魅力とやりがいを紹介します。
製造業における幅広いフィールドで活躍できる
金型設計は製造業の中で重要な役割を担っているため、金型設計の仕事で働く方は製造業における幅広いフィールドで活躍できます。
たとえば身近な家庭用製品の製造に携わったり、一方で大型の産業用機械の製造プロジェクトに関わったりするケースもあります。自身が設計した金型から生産されている製品が市場に流通することも多く、やりがいを感じやすい仕事です。
また、金型設計ができる技術者は製造業界でのニーズが高く、将来性もあります。特に樹脂製品の製造に用いられるプラスチック金型の設計技術は、安定したニーズが存在すると考えられています。
多様なジャンルのものづくりに深く関われる
製造業に欠かせない金型設計の仕事は、多様なジャンルのものづくりに深く関われる魅力があります。クライアントの意図や要望を汲み取り、オーダーに応えられる金型を製作できる技術者になれば、自身の活躍の場を広げることが可能です。
現代の市場で販売されている量産品は金型から生産されていて、日本製品が高品質として評価されている要因にも高精度な金型の存在があります。将来の日本のものづくりに貢献する職業として、金型設計で働くことに大きなやりがいを感じられるでしょう。
金型設計の平均年収
厚生労働省によると、「金属製品製造工」の平均年収は約456万円です。なお、この年収は金型設計エンジニアを含む、金型工全体の年収となっています。
(出典:job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))「金型工 – 職業詳細」/https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/253)
また、実際の求人サイトで金型設計エンジニアの情報を確認すると、年収約300万~520万円が平均的な年収額です。
金型設計の求人と年収の例をいくつか紹介します。
求人の概要 | 月収・年収モデル |
精密プレス部品量産用金型の設計者の求人 | 月給:32万~46万円 年収モデル:500万~700万円 |
CADによるプラスチック成形用金型の設計に従事するエンジニアの求人 | 月給:20万~30万円 |
金型設計の内製化に伴う求人 | 年収モデル:350万~600万円f |
CADで精密射出成型金型を設計できるエンジニアの求人 | 年収モデル:500万~600万円 |
業務経験やCADの使用経験を求める求人は、基本的に年収が高いことが多い傾向にあります。本人の経験やスキルによっては、500万円以上の年収を目指すことも可能です。
金型設計の仕事に向いている人の特徴
金型設計はものづくりに関わる仕事であり、人によって向いているかどうかに違いがあります。金型設計の求人に応募する前に、向いている人の特徴に自分が当てはまっているかをチェックしてみましょう。
以下では、金型設計の仕事に向いている人の特徴と、向いている理由を解説します。
責任感がある
責任感がある方は、金型設計の仕事に向いています。金型設計は、クライアントが求める金型を製作し、製品の大量生産に役立てる仕事であるためです。
金型設計エンジニアが製作した金型の仕様・精度が、クライアントが生産する製品の品質に影響します。仕事に対して責任感を持つことができる方は、クライアントが要望する金型を作れるように努力できるでしょう。
また、金型設計エンジニアは金型の設計・製作だけでなく、製作した金型に問題がないかをチェックしなければなりません。金型の最終チェックを入念に行う作業も、仕事への責任感が求められます。
細かい作業を注意深く進められる
金型の設計では、製品の図面情報を確認したり、コンピューターへのプログラミングをしたりといった業務があります。設計プロセスで注意しなければならないことがいくつもあるため、細かい作業を注意深く進められる方が向いている仕事です。
細かい作業が得意な方は、設計図作成・プログラム作成のような複雑な作業も楽しんで行えるでしょう。組み立て・最終チェックも、注意深さがあれば問題を発見しやすくなり、製作する金型の精度向上につながります。
問題解決能力が高い
金型設計の仕事は、クライアントの要望をヒアリングした上で、技術者やクライアントと打ち合わせをしながら設計図の作成へと進みます。要望の内容・方向性はクライアントごとに異なるため、金型設計エンジニアには問題解決能力の高さが重要です。
要望に応えるためにはどのような金型を設計すればよいかを考え、クライアントに説明する発想力と説明力が求められるでしょう。
また、要望の実現が困難な場合には、別の方法を提案できる提案力も必要です。
問題解決能力が高い金型設計エンジニアは、クライアントの要望を満たしやすくなり、企業の評判や満足度の向上にも貢献できます。
コミュニケーション能力が高い
金型設計エンジニアにはコミュニケーション能力の高さが欠かせません。金型設計の仕事はクライアントとの打ち合わせが前提であり、他の技術者や従業員との連携も必要となるためです。
たとえばプログラム作成の作業において、元の設計図を修正しなければならない場合、修正の理由をほかの技術者に説明して了承を得る必要があります。計画全体に変更が生じた場合は、クライアントにも説明しなければなりません。
コミュニケーション能力が高い方は、金型設計の仕事で発生するさまざまなやりとりをスムーズに進めやすくなります。
未経験者が金型設計技術者を目指すには?
金型設計エンジニアになるためには、必須と呼べる資格はありません。
金型設計の職場に就職し、金型設計の仕事に従事すれば、金型設計エンジニアになれます。金型設計エンジニアの需要は非常に高く、未経験歓迎・学歴不問の求人も少なくありません。
しかし、金型設計の仕事は技術的な専門性が高く、経験者のほうが採用で有利になったり、優遇されたりする傾向があります。未経験者は、未経験歓迎の求人や、教育制度の整った金型設計エンジニアの求人に応募することがおすすめです。
金型設計エンジニアにおすすめの資格
金型設計エンジニアを目指すなら、金型の設計・製作技術に関するスキルの保有を証明するためにも、関連資格を取得しておくことが望ましいと言えます。
金型設計エンジニアにおすすめの資格は、「金型製作技能士」「3次元CAD利用技術者試験」の2つです。
それぞれの資格について、証明できるスキルや受験の要件を説明します。
金型製作技能士
金型製作技能士は、金型の製作技能と専門知識が備わっていることを証明できる国家資格です。取得するには、技能検定制度にもとづいて開催される「金型製作」の技能検定試験を受験し、合格する必要があります。
金型製作技能士の等級は特級・1級・2級があり、1級・2級は「プレス金型製作作業」「プラスチック成形用金型製作作業」の2科目から選んで受験します。特級の科目は「金型製作」のみです。
ただし、技能検定試験は受験資格として、受験職種に関する実務経験が原則求められています。受験に必要な実務経験は、難易度が最も低い2級でも2年以上、1級は7年以上、特級は1級の合格後5年以上です。
まずは金型設計エンジニアとして働き、実務経験を積んだ上で受験するとよいでしょう。
3次元CAD利用技術者試験
3次元CAD利用技術者試験は、金型の設計図作成でよく使用する3D CADについての知識・技術を証明できる資格です。民間資格ではあるものの、3D CADを使用するエンジニアに必要なスキルの証明に役立つため人気が高まっています。
3次元CAD利用技術者試験の等級は1級・準1級・2級の3つです。2級では3D CADの機能やモデリング手法、データ管理についてなどの基礎知識が問われます。1級・準1級は実際のモデリング作成能力や形状認識能力を中心に問われる内容です。
3次元CAD利用技術者試験の受験資格は、2級は特に設定されておらず、誰でも受験できます。準1級は2級の有資格者、1級は2級もしくは準1級の有資格者であることが条件です。
3次元CAD利用技術者試験は金型設計エンジニアに役立つ資格であるため、まずは2級の取得を目指しましょう。
金型設計エンジニアの将来性
日本はかつて金型生産額が世界一であったものの、近年は自動車・電機メーカーの海外移転や海外企業の台頭などにより、金型生産額は減少傾向にあります。
しかし、プレス金型や鋳造用金型などは現在でも一定の生産額があり、現在も日本の金型技術の需要は高い状況です。
金型設計はものづくりの根幹を担っている技術であり、将来的にも安定したニーズが存在すると考えられています。金型設計に携わる金型設計エンジニアも、将来性は明るいと言えるでしょう。
まとめ
金型設計とは、クライアントの要望を汲み取って設計図作成・プログラム作成を行い、金型を製作する仕事です。 金型設計は製造業の幅広いフィールドで活躍できて、ものづくりにも深く関われる魅力があります。将来性が高く、経験・スキルがあれば高収入も目指せるため、自分に向いていると感じる方は就職・転職を検討してみてはいかがでしょうか。
金型設計に関心をお持ちの方は、モノづくりから始めてみることをお勧めいたします。
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