生産技術とは?仕事内容・必要スキル・向いている人の特徴も
モノづくりに携わる製造業に欠かせない仕事の1つに、生産技術が挙げられます。当記事では、生産技術の概要と具体的な仕事内容、さらに平均年収や必要スキル、向いている人の特徴を徹底解説しています。
生産技術は、モノづくりに携わる製造業に欠かせない仕事です。生産体制の構築のプロとして、モノづくりの根幹を支えます。
生産技術に興味はあるものの、「未経験でも目指せるのか」「自分に適性があるか分からない」など迷いを感じている人もいるのではないでしょうか。まずは具体的な仕事内容や必要となるスキルなどをチェックしておきましょう。
今回は、生産技術の概要と目指すにあたり必要となるスキルや向いている人の特徴について解説します。生産技術について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
生産技術とは?
生産技術とは、製造業において重要な役割を担う部門の1つです。主に工場や生産現場で生産体制の設計や管理を行います。コストや納期、品質を踏まえて生産体制を構築する、モノづくりの根幹を支える仕事と言えます。
生産技術の主な活躍フィールドは、下記の通りです。
● 電気メーカー ● 機械メーカー ● 化学メーカー ● 食品メーカー |
各業界には工場を持つメーカーが多く、生産技術の需要があります。海外に製造体制がある企業であれば、海外赴任をして設計や管理を行うこともあるでしょう。
いずれのメーカーにおいても、生産技術は生産に関する一連の工程に関わることになります。製造の効率化や高品質な製品の完成に深く関わるため、生産の要となるポジションです。
生産技術に求められる主な役割は、「QCDの達成」「4Mのコントロール」の2つです。
QCDとは、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の略で、生産技術はそれぞれの基準を満たす製造計画を立てる必要があります。4Mは、人(Man)・機械(Machine)・材料(Material)・方法(Method)を意味し、それぞれをコントロールすることも重要な役割です。
生産技術と製造技術の違い
生産技術と混同されやすい仕事に、「製造技術」があります。
製造技術は、生産技術と同様に工場や生産現場で必要とされる職種です。ただし、製造技術は製造工程に特化しており、生産体制の効率化や技術改善に向けた開発や導入などを行います。生産体制のトラブル対応も仕事に含まれます。
生産工程全体に関わる生産技術に対して、製造技術は関わる範囲が狭いことが特徴です。製造技術に求められる主な役割は、「高品質な製品の効率的な生産」です。
生産技術の具体的な仕事内容
生産技術が携わる業務は多岐にわたります。一連の生産工程は複数の領域に分類され、それぞれ意識すべきポイントが異なります。4MのコントロールとQCDの達成には、各領域での作業を着実に進めることが重要です。
ここでは、生産技術の具体的な仕事内容と意識して取り組むべきポイントを詳しく解説します。
効率性・生産性の高い生産体制の設計・構築
効率的かつ生産性が高い生産体制の設計・構築は、生産技術の仕事の1つです。生産性の向上に向けてすべきことを明確にし、生産体制を作り上げます。
生産体制の効率性や効率性を高めるには、「労働生産性」「資本生産性」の2つの指標を意識する必要があります。
2つの指標の概要は、下記の通りです。
労働生産性 | 労働者の労働効率を表す指標 ● 「生産活動によって生み出された成果÷労働量」で求める |
資本生産性 | 設備からどれだけの製品を生産できたかを表す指標 ●「生産活動によって生み出された成果÷有形固定資産」で求める |
労働生産性が高い場合は、従業員の作業の質が高いことを意味します。資本生産性が高ければ、設備の性能が高い状態です。
生産体制の課題発見・改善
生産技術は、すでにある生産体制の課題を見つけて改善につながる対策も講じなければなりません。生産体制を全体的に把握して分析を行い、労働生産性・資本生産性に悪影響を及ぼしている部分を早期に発見することが大切です。
生産体制の課題を改善する具体的な方法は、次の通りです。
● 人員の増減や移動 ● 生産体制の見直し |
季節的な要因に対応するために人員を増減したり移動したりすることで、労働生産性の向上を目指せます。新たに効率性・生産性の高い生産体制が見つかった場合は、社内に提案して見直しを図ります。
生産技術の開発・導入
新たな生産技術の開発・導入も生産技術の重要な仕事です。生産技術の開発・導入は、資本生産性を高める上で必要不可欠です。
新しい加工プロセスや製造プロセスの開発により、生産効率の向上が期待できます。製品開発職が思い描く製品を製造するために、必要な生産体制を構築するのも生産技術の仕事の1つです。
最新の技術を発見した場合は、導入する価値を見極めるためのリサーチが必要です。資本生産性を高める生産技術であると判断された場合、競合よりも早く導入することで業界内での優位性が高まります。
設備の導入・設置
生産技術は、設備の導入・設置に向けた計画と提案も行います。
生産性を高める新たな生産技術の導入はもちろん、既存設備の定期的なメンテナンス対応も仕事の1つです。設備への投資により、労働生産性・資本生産性の向上が期待できます。
新たな生産技術を導入するには、コスト面や導入効果をシミュレーションした結果をもとに経営陣への提案が必要です。導入を目指すには、説得力のあるデータと提案力が求められます。
設備の導入・設置にはまとまった資金が必要となるため、コスト回収までの期間を試算しておくことも大切です。
生産技術の平均年収
生産技術の平均年収は、約460万~520万円と言われています。しかし、あくまでも求人情報の内容にもとづく目安の金額であり、実際の平均年収は業種・年齢・経験などによって大きく異なります。
特に差が生じやすいのは、年齢と経験による差です。例えば、20代の平均年収は約390万、30代では約625万円となっており、235万円の差があります。30~40代のベテラン生産技術職の場合は、年収600万円以上を目指すことも十分に可能です。
生産技術は専門知識と高度な技術を必要とするため、経験を積むことで年収アップしやすい傾向にあります。
生産技術の仕事に必要な4つのスキル
生産技術は携わる業務が多岐にわたるため、設備に関する専門知識以外にもさまざまなスキルが必要です。生産技術職に興味がある人は、どのようなスキルが求められるのかチェックしておきましょう。
ここでは、生産技術の仕事に必要な4つのスキルを解説します。
課題発見・解決能力
課題発見・解決能力は、生産技術に必要不可欠なスキルです。
生産技術は、モノづくりの根幹を支えるために生産体制の課題発見と解決を繰り返します。生産体制の効率化の課題を洗い出すには、小さな違和感や非効率な部分に気づく力が必要です。さらに、新たな課題を発見しようとする探求心も、生産体制の効率化に役立ちます。
発見した課題を解決するには、正確な判断力・考察能力・対応力が求められます。現場の意見と経営陣の意向も考慮するバランス力も重要です。
コミュニケーション能力
生産技術は、工場や生産現場の従業員や本社の管理職など多くの人々と関わる仕事です。スムーズに仕事を進めるには、コミュニケーション能力の高さが求められます。
工場や生産現場でのリサーチやヒアリング、製品開発職との連携などが円滑であれば、課題の発見や生産技術の開発での不和が生じる可能性が低くなります。万が一意見が合わなかったとしても、歩み寄りにより落としどころを見つけやすくなるでしょう。
海外に製造体制がある場合は、外国語能力や慣習に順応する柔軟性も必要です。
設計ツール・表計算ソフトの基本技術
生産技術の仕事には、設計ツールや表計算ソフトなどの基本技術を使うことが多いため、身につけておくと就職に有利になります。
特に必要となることが多い基本技術は、下記の通りです。
● CAD ● Excel ● スプレッドシート |
CADは、コンピューターで設計図を作成するツールで、生産技術だけでなく建築や服飾などさまざまな分野で用いられています。Excelやスプレッドシートは、作業データの集計や分析などに使うことが多いツールです。
生産技術の仕事はPCでの作業が多いため、基本的なツールは使えるようにしておきましょう。
プログラミングスキル
基本的には自社用のシステムを活用して業務を行うため、プログラミングスキルは必須ではありません。しかし、業種や導入システムによっては、プログラミングスキルが必要となる場合もあります。
プログラミングスキルを活用できる主なシーンは、下記の通りです。
● 機械学習による故障の予知 ● データ分析 ● 機械を連携させた同時作業 |
さらに、システムの再構築や回収が必要な場合、プログラミングスキルがあれば動作のメカニズムをイメージしやすくなります。
プログラミングスキルは、転職の幅が広がったりキャリアアップにもつながったりするため、習得しておいて損はないでしょう。
生産技術の仕事に向いている人の特徴
生産技術の仕事に向いている人には、いくつか特徴があります。生産技術に興味がある人は、自身の適性をチェックしてみましょう。
ここからは、生産技術の仕事に向いている人の特徴を3つ紹介します。ただし、働いているうちに適性が身につくケースも多いため、紹介する特徴が当てはまっていなくても諦めずにチャレンジしてみましょう。
モノづくりに興味がある人
仮説と検証を繰り返しつつ生産体制の効率化を図るには、特定の業務を淡々とこなすだけでなく能動的なアクションもしばしば求められます。
モノづくりに興味がある人は、特定の業務をこなしつつ自発的に行動することに苦痛を感じにくいため、生産技術の仕事への適性が高いと言えます。
また、自身が関わった生産体制で製造された製品が世の中に流通することは、大きなやりがいとなるでしょう。
柔軟性の高い人
柔軟性が高い人は、業務を進める上で発生したトラブルにも一つ一つ着実に対応できるため、生産技術の仕事に向いています。
生産体制の設計・構築、生産技術の開発・導入は、すべて想定通りに進むわけではありません。トラブルが発生する可能性もあり、想定外の事態には臨機応変に対応する必要があります。
また、柔軟な発想力は、生産体制の効率化につながる課題発見や改善策の検討にも活かせるでしょう。
物事や状況を客観的に見られる人
生産技術の仕事は、現場と経営の両方の立場・視点で物事を捉える必要があります。どちらかに偏りすぎれば片方に不具合が生じるため、客観的に判断してバランスを取らなければなりません。
物事や状況を客観的に見られる人であれば、双方の意見や希望をできるだけ反映させて、生産体制の効率性や効率性の高い生産体制の設計・構築ができるでしょう。
生産体制の課題を改善する場合も、優先事項の見極めや効果的な対策の実行を効率良く進められます。
未経験から生産技術職を目指すには?
大手メーカーの場合は、新卒採用や経験者募集の求人が中心で未経験の中途採用はほとんどないのが現状です。未経験者の中途採用があっても、多くは補助業務からのスタートです。
生産技術職は専門知識や技術が求められるため、未経験から目指すのはハードルが高いと言えます。
未経験から生産技術職を目指すには、メーカー企業の生産技術職以外の職種に就職して、スキルや経験を積んでからキャリアチェンジをするのがおすすめです。まずは製造ラインで現場の感覚を覚えたり、人材マネジメントの経験を積んだりするところから始めましょう。
また、生産技術に役立つ下記の資格を取得しておくのも効果的です。
● 生産技術者マネジメント認定 ● CAD利用技術者試験 ● 情報処理技術者試験 ● TOEIC |
生産技術に必要なスキルの習得と併せて資格を取得しておくと、転職でのアピールにつながります。
生産技術の主なキャリアパス
生産技術における主なキャリアパスは、社内でのキャリアパスと転職によるキャリアパスの2つに分けられます。
社内でのキャリアパスイメージは、下記の通りです。
入社年数 | キャリアパスの具体例 |
1~5年 | 新人・若手社員として担当業務にあたる |
5~10年 | チームリーダーや後輩社員の指導役になる |
10~20年 | 主任や課長など管理職のポストに就く |
20年以上 | 事業部長や経営陣など重要なポストに就く |
社内でのキャリアパスは、過去の実績やポストの空き状況などによってイメージ通りにいかないこともあります。
転職によるキャリアパスは、技術力や経験が大きく影響します。キャリアパスが期待できる転職先例は、次の通りです。
● より大きなメーカー ● 外資系メーカー ● コンサルタント職 ● アドバイザー職 |
人材不足に悩む大手メーカーや技術力を事業に活かしたいと考える異業種など、生産技術職を求める企業は多いため、転職によるキャリアパスも検討しましょう。
まとめ
生産技術は、製造業において重要な役割を担うモノづくりに欠かせない仕事です。生産体制の設計や構築、生産技術の開発や導入など、生産技術の仕事内容は多岐にわたります。
生産技術の平均年収は、年齢や経験によって差が生じやすいことが特徴です。生産技術職は未経験の中途採用が少ない傾向にあるため、まずはメーカー企業の生産技術職以外の職種に就職して、徐々にキャリアチェンジを目指すのがおすすめです。
生産技術に興味がある人は、必要なスキルや役立つ資格をチェックしておきましょう。
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