製造業・工場のお仕事
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2024.02.19

玉掛け作業に必要な資格とは?技能講習や特別講習の内容や受講方法を解説

玉掛けの実習をしているウイルテックの従業員

玉掛け作業を行うためには、資格が必要です。玉掛け技能講習、あるいは玉掛け特別教育を修了しなければならず、どちらが必要であるかはクレーンの吊り上げ荷重によって異なります。今回は、玉掛け作業に必要な資格について、内容や受講方法、受講要件などを解説します。

玉掛け作業とは

玉掛けの画像

玉掛け作業とは、クレーンでものを運べるよう、フックに荷物を掛けたり外したりすることです。

クレーンでものを運搬する際は、ワイヤーロープの先にあるフックにものを引っ掛けます。玉掛けを正しく行わないと、フックからものが外れてしまいます。高所で、重い荷物を吊り上げて作業することも多く、下に機材や人がいる状態でものが外れてしまうと、大事故につながってしまうでしょう。

このように、玉掛け作業には危険が伴うため、知識や操作方法を熟知した担当者が行わなければなりません。そのため、労働安全衛生法により、玉掛け作業を行えるのは資格を取得した者に限られています。

玉掛けに必要な資格

玉掛けに必要な資格は、使用するクレーンや移動式クレーンなどの吊り上げ荷重によって、以下のように異なります。

・吊り上げ荷重1トン以上なら「玉掛け技能講習」

・吊り上げ荷重1トン未満なら「玉掛け特別教育」

なお、吊り上げ荷重とは、クレーンが吊り上げられる最大荷重のことです。実際に吊り上げるものの重さではない点に注意しましょう。

玉掛け技能講習と玉掛け特別教育は、どちらも国家資格であり、クレーンを使用する現場で重宝されます。「玉掛け免許」と呼ばれることも多いですが、正式名称は「玉掛け技能講習修了」あるいは「玉掛け特別教育修了」です。

以下では、それぞれの概要について解説します。

吊り上げ荷重1トン以上なら「玉掛け技能講習」

吊り上げ荷重が1トン以上の大型クレーンで玉掛け作業を行うためには、玉掛け技能講習を受講し、試験に合格しなければなりません。

講習を受けた後、学科試験と実技試験それぞれの修了試験に合格する必要があります。合格率は95%以上とされており、取得難易度は比較的高くありません。

玉掛け技能講習の詳細については後述します。

吊り上げ荷重1トン未満なら「玉掛け特別教育」

吊り上げ荷重が1トン未満のクレーンで玉掛け作業を行うためには、玉掛け特別教育を受講する必要があります。試験に合格する必要はなく、指定のカリキュラムを受講すれば取得できるのが特徴です。

玉掛け特別教育の詳細についても、後述します。

玉掛け技能講習とは

クレーンで荷物を引き上げている画像

玉掛け技能講習は、吊り上げ荷重1トン以上の大型クレーンで玉掛け作業を行うために受講しなければならないものです。

学科と実技の講習を受講し、それぞれの修了試験に合格すると、修了証が発行されて玉掛け作業に従事できるようになります。

以下では、玉掛け技能講習の内容と受講方法、受講要件、費用について見ていきましょう。

玉掛け技能講習の内容

玉掛け技能講習の内容は、受講者の区分によって異なります。

実務経験者以下のいずれかを満たす者
・クレーン等で、吊り上げ荷重が1トン以上の玉掛けの補助作業の業務(特定された玉掛け有資格者の直接指揮の下に行う玉掛けの業務)に6カ月以上就いた経験がある者
・玉掛け特別教育を受講し、吊り上げ荷重が1トン未満のクレーン等の玉掛け業務に6カ月以上就いた経験がある者
一般者実務経験者に該当しない者

なお、一般者であっても、以下を取得・受講することで、「力学に関する知識」と「運転のための合図」の受講が免除されます。

・クレーン運転士免許

・移動式クレーン運転士等免許

・デリック運転士免許

・揚貨装置運転士免許

・床上操作式クレーン運転技能講習

・小型移動式クレーン運転技能講習

それぞれの講習内容は以下のとおりです。

実務経験者1日目(学科)クレーン等に関する知識、関係法令、玉掛けの方法、力学に関する知識
2日目(学科)玉掛けの方法、学科修了試験
3日目(実技)質量目測、玉掛け用具の選定・ 使用、玉掛けの応用・合図、実技修了試験
一般者・力学免除(※合図免除者は、合図の採点は免除されるが講習時間が短縮するわけではない)
1日目(学科)クレーン等に関する知識、関係法令、玉掛けの方法
2日目(学科)玉掛けの方法、学科修了試験
3日目(実技)質量目測、玉掛け用具の選定・ 使用、玉掛けの基本・合図、玉掛けの応用、実技修了試験
上記以外1日目(学科)クレーン等に関する知識、関係法令、玉掛けの方法、力学に関する知識
2日目(学科)玉掛けの方法、学科修了試験
3日目(実技)質量目測、玉掛け用具の選定・ 使用、玉掛けの基本・合図、玉掛けの応用、実技修了試験

参考:一般社団法人日本クレーン協会近畿支部「玉掛け技能講習」

玉掛け技能講習の受講方法

玉掛け技能講習を受講するためには、講習を実施している全国各地の講習会場に足を運びましょう。

事業所が出張講習を依頼すれば、団体で受講できる場合もあります。団体での受講を希望する場合は、自身が勤める事業所に相談してみてください。

玉掛け技能講習の受講要件・費用

玉掛け技能講習は、実務経験がない方であっても、18歳以上であれば受講できます。

講習の料金は、テキスト込で20,000円〜40,000円程度で設定されることが多いです。科目が免除される実務経験者の方が、費用が安くなります。

なお技能講習の学科、あるいは実技の一方の修了試験に不合格であった場合は、再受験料を支払うことで、2カ以内に再受験が可能です。

玉掛け技能講習に合格するポイント

玉掛け技能講習の合格率は95%以上とされており、難易度は決して高くありません。まじめに講習を受け、講習内容を自分のものにできれば、問題なく合格できるでしょう。

合格するために押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。

・わからないことがあったら講師に質問する

・実技試験前は繰り返し頭の中で動きをシミュレーションする

・玉掛けの実技では、相手にはっきりと声かけをする

・質量目測計算では、実際よりも軽い重さを見積もらないようにする

玉掛け技能講習は、国家資格の中でも取得難易度は比較的低い資格ですが、油断は禁物です。講習はまじめに受講し、不明点はすぐに解消できるようにしましょう。

また、実技試験は一発勝負です。直前まで動きをシミュレーションし、徹底的に身体に染み込ませましょう。

玉掛けは協力して行うものであるため、合図の際は声かけを忘れてはなりません。

質量目測計算では、わからなければ実際よりも少しだけ重く見積もることが大切です。軽く見積もると事故につながるため、試験に落ちてしまうリスクが高いです。

玉掛け特別教育とは

玉掛け部分の画像

玉掛け特別教育とは、吊り上げ荷重が1トン未満のクレーンで玉掛け作業を行うために受講しなければならないものです。

試験を受験する必要はありません。講習を修了すれば、修了証が発行され、玉掛け作業に従事できるようになります。

以下では、玉掛け特別教育の受講内容と受講方法、受講要件、費用について見ていきましょう。

玉掛け特別教育の受講内容

玉掛け特別教育の講習の内容は、以下のとおりです。

<学科>

・クレーンに関する知識:1時間

・玉掛けに必要な力学に関する知識:1時間

・玉掛けの方法:2時間

・関係法令:1時間

<実技>

・玉掛け: 3時間

・運転のための合図 :1時間

玉掛け特別教育の受講方法

玉掛け特別教育を受講するためには、学科講習を開催している全国各地の講習会場に足を運びましょう。事業所が出張講習を依頼すれば、団体で受講できる場合もあるため、事業所に問い合わせてみてください。

また、Web講座を利用して学科講習を受講するという方法もあります。自宅で受講できるため、学科を受けるために講習会場を訪れる手間が省けるのはメリットです。しかし、実技試験は別途受けなければならない点には注意しましょう。

玉掛け特別教育の受講要件・費用

玉掛け特別教育の受講要件は特に定められていません。18歳以上で玉掛け作業を行いたい方であれば、どなたでも受講可能です。

費用は、受講場所によって異なりますが、テキスト込で15,000〜20,000円程度かかるケースが多く見られます。

玉掛けの資格を取得するメリット

玉掛けの資格を取得することには、以下のようなメリットがあります。

できる仕事の幅が広がる

転職時に有利になりやすい

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

クレーンの画像

できる仕事の幅が広がる

玉掛けの資格を取得することで、できる仕事の幅が広がるのはメリットです。

玉掛け作業は有資格者しかできない仕事であり、建設現場や製造工場、造船所、倉庫など幅広い現場で求められます。クレーンを使う現場では、玉掛け作業も必要である、と言えます。

多くの現場で重宝される人材を目指したい方には、玉掛けの資格取得が有効です。さまざまな現場で活躍できるようになれば、技術力の向上や、施工管理、労働安全衛生などへの知見も深まるでしょう。

国家資格であり、資格を取得することで給与アップを期待できるのも魅力です。

転職時に有利になりやすい

玉掛けの資格を取得しているという事実が、転職時に有利になりやすいというメリットもあります。

建設業や製造業では人手が不足しており、特に技術力のある人材が減少していることは課題です。玉掛けは業務独占資格であるため、有資格者であることをアピールすれば、転職に成功する可能性も高まります。

さらに、資格を取得するハードルが低いのもポイントです。玉掛けの資格や講習は、18歳以上なら未経験でも取得・受講できます。未経験から建設や製造工場といった現場作業に応募したい方も、玉掛けの資格に挑戦してみてはいかがでしょうか。

玉掛けの資格と併せて取得したい資格

玉掛けの資格と併せて取得したいのは、クレーンの運転に関する資格です。

玉掛けの資格と併せて取得することで、玉掛け作業とクレーンの運転作業をどちらもできるようになり、できる仕事の幅がさらに広がります。転職やキャリアアップの際にも有利になりやすいでしょう。

クレーンに関する資格は、対象となるクレーンの種類によって分かれています。

ここでは、以下の2つについて紹介します。

・移動式クレーン運転士

・クレーン・デリック運転士(限定なし)

移動式クレーン運転士

移動式クレーン運転士は、吊り上げ荷重5トン以上の移動式クレーンを運転する際に必要な資格です。

移動式クレーンや電動機、電気、力学、法令などに関する学科試験と、実技試験に合格することで取得できます。玉掛け技能講習を修了している場合は、運転のための合図に関する実技が免除されます。

受験資格は特に定められていません。

参考:公益財団法人安全衛生技術試験協会「移動式クレーン運転士」

クレーン・デリック運転士(限定なし)

クレーン・デリック運転士(限定なし)は、クレーンまたはデリックのいずれの機種も運転できる資格です。クレーンまたはデリックや原動機、電気、力学、法令などに関する学科試験と、実技試験に合格することで取得できます。移動式クレーン運転士と同様、玉掛け技能講習を修了していれば、運転のための合図に関する実技が免除されます。

受験資格は、特に定められていません。

参考:公益財団法人安全衛生技術試験協会「クレーン・デリック運転士(限定なし)」

まとめ

玉掛けのシミュレーションをしているウイルテックの従業員

玉掛け作業とは、クレーンのフックにものを掛けたり外したりすることです。危険を伴うため、玉掛けの資格を有する者でなければ、玉掛け作業を行えません。

吊り上げ荷重1トン以上のクレーンであれば玉掛け技能講習、1トン未満なら玉掛け特別教育を受講しましょう。18歳以上であればどなたでも受講でき、取得難易度も比較的高くありません。できる仕事の幅を広げてキャリアアップを目指したい方や、製造業や建設業などに転職したい方は、取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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