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2023.12.14

【2023年】最低賃金引き上げはいつから?全国ランキング一覧も紹介

最低賃金と書かれた積み木を両手をくの字にして挟んでいる写真

本記事では、2023年10月以降に適用される最低賃金についてまとめました。最低賃金とは何か、日給や月給の計算方法についても紹介します。また、最低賃金の引き上げにより、企業にどのような変化が起こるのかについても解説していますので参考にしてみてください。

そもそも最低賃金とは?

最低賃金とは、国が定めた最低限度の賃金のことです。雇用主は労働者に対して、最低賃金以上の金額を賃金として支払わなくてはいけません。

また、雇用主と労働者の双方が合意をしたうえで賃金を定めた場合であっても、その賃金が最低賃金未満の契約は無効となり、最低賃金と同額で契約したものとされます。

ただし以下のいずれかに該当する労働者に関しては、雇用主が都道府県労働局長の許可を受けている場合には、最低賃金未満の金額で雇用契約を締結することが可能です。

・精神あるいは身体の障害により、著しく労働能力が低い人

・試用期間中の人

・認定職業訓練を受けている人のうち、厚生労働省令で定める人

・軽易な業務に従事する人

・断続的な労働に従事する人

給与支給明細書、封筒に入った現金、電卓の画像

最低賃金を定める「最低賃金法」

最低賃金は、最低賃金法という法律で規定されている賃金のルールです。

雇用主が最低賃金よりも低い賃金しか労働者に支払わない場合は、最低賃金法により50万円以下の罰則が定められています。また、最低賃金のうち、特定最低賃金よりも低い賃金しか労働者に支払わない雇用主に関しては、労働基準法により30万円以下の罰金が定められます。

なお、最低賃金の対象となるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。たとえば、割増賃金や通勤手当などが追加で支払われる場合は、追加で支払われる金額を除いた基本的賃金が最低賃金以上でなくてはいけません。

最低賃金は2種類ある

最低賃金には、次の2つの種類があります。

・地域別最低賃金

・特定最低賃金

地域別最低賃金とは、都道府県別に規定される最低賃金です。都道府県内での労働については、地域別最低賃金以上の賃金が支払われなくてはいけません。

一方、特定最低賃金とは産業別に規定される最低賃金です。一般的には、地域別最低賃金よりも高い基準で最低賃金を定める必要があるときに、地域ごとに規定されます。

なお、地域別最低賃金と特定最低賃金の基準が異なるときは、高い賃金のほうが最低基準となります。たとえば、北海道の地域別最低賃金は960円(令和5年10月以降)ですが、北海道の鉄鋼業の特定最低賃金は1,030円です。そのため、北海道で鉄鋼業に関わる場合は、時給1,030円以上が適用されます。

引き上げはいつから?2023年は平均時給1,000円台に

黒板に右肩上がりの棒グラフと矢印が白い字で書かれている

最低賃金の基準は、毎年変わります。最低賃金の引き上げ時期と目的、2023年の状況について解説します。

最低賃金引き上げの時期と目的

最低賃金の基準は毎年変更されます。年によっても異なりますが、7月ごろに公表されて、その年の10月1日から適用されることが一般的です。ただし、都道府県によっては、10月中ではあるものの2日以降から適用となることもあります。

最低賃金引き上げの目的は、現状に合わせた適正な賃金を定めることです。昨今は物価が上昇傾向にあり、それに合わせて最低賃金も例年上昇しています。

2023年度は初の全国平均時給1,000円台突破

2023年は物価上昇の影響を受け、全国的に大幅な最低賃金の上昇が見られました。労働者数を加味した加重平均値は1,004円となっています。

各都道府県の最低賃金の引き上げ額、平均時給については、次章で詳しく紹介します。

最低賃金が高いのはどこ?全国ランキング一覧

日本列島の模様が書かれている図

労働者数を加味した全国加重平均賃金は1,004円と、初の1,000円台になりました。引き上げ幅は島根県と佐賀県の2県がもっとも多く47円増、ついで山形県と鳥取県の46円増です。反対に引き上げ幅が少ないのは岩手県の39円です。岩手県は令和4年度は全国34番目の最低賃金でしたが、令和5年度では全国でもっとも最低賃金が低い都道府県になりました。

2023年10月以降に適用される最低賃金の高い都道府県順にまとめました。ぜひお住まいの地域の最低賃金をご確認ください。

都道府県改定前の最低賃金改定後の最低賃金引き上げ額
東京都1,072円1,113円41円
神奈川県1,071円1,112円41円
大阪府1,023円1,064円41円
埼玉県987円1,028円41円
愛知県986円1,027円41円
千葉県984円1,026円42円
京都府968円1,008円40円
兵庫県960円1,001円41円
静岡県944円984円40円
三重県933円973円40円
広島県930円970円40円
滋賀県927円967円40円
北海道920円960円40円
栃木県913円954円41円
茨城県911円953円42円
岐阜県910円950円40円
富山県908円948円40円
長野県908円948円40円
福岡県900円941円41円
山梨県898円938円40円
奈良県896円936円40円
群馬県895円935円40円
石川県891円933円42円
岡山県892円932円40円
新潟県890円931円41円
福井県888円931円43円
和歌山県889円929円40円
山口県888円928円40円
宮城県883円923円40円
香川県878円918円40円
島根県857円904円47円
福島県858円900円42円
山形県854円900円46円
鳥取県854円900円46円
佐賀県853円900円47円
大分県854円899円45円
青森県853円898円45円
長崎県853円898円45円
熊本県853円898円45円
愛媛県853円897円44円
高知県853円897円44円
宮崎県853円897円44円
鹿児島県853円897円44円
秋田県853円897円44円
徳島県855円896円41円
沖縄県853円896円43円
岩手県854円893円39円
全国加重平均961円1,004円43円

参考:厚生労働省「令和5年度 地域別最低賃金答申状況」

【日給・月給】最低賃金の計算方法

電卓、ボールペン、葉の画像

最低賃金は時給で働くアルバイトやパートだけではなく、月給で働く正社員にも適用されます。日給、月給の最低賃金の計算方法を紹介します。

【日給】最低賃金の計算方法

日給で給与を受け取っている場合は、以下の計算式にあてはめて、最低賃金の基準に沿っているか確認してください。

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金

たとえば、日給が8,000円で1日の所定労働時間が8時間なら、時給は1,000円と計算できます。事業所のある都道府県の最低賃金額以上であるかチェックしてみましょう。

ただし、日額が定められている地域内の特定産業については、日給が特定最低賃金の日額以上であることが基準となります。

【月給】最低賃金の計算方法

月給で給与を受け取っている場合は、以下の計算式にあてはめて、最低賃金の基準に沿っているか確認してください。

月給÷1ヵ月の平均所定労働時間≧最低賃金

たとえば、月給が20万円で1ヵ月の所定労働時間が200時間なら、時給は1,000円と計算できます。事業所のある都道府県の最低賃金額以上であるかチェックしてみてください。

なお、時間外手当や通勤手当は最低賃金を計算するときには含ませんが、職務手当は含まれます。たとえば基本給が15万円、時間外手当・通勤手当が各1万円、職務手当が3万円で合計月20万円を受け取っている場合、月給は18万円(15万円+3万円)です。1ヵ月の平均所定労働時間が200時間であれば時給は900円と算出でき、最低賃金の基準を満たしているか確認できます。

最低賃金引き上げが企業へ及ぼす影響とは

道路からビルを映した写真

最低賃金引き上げは労働者にとっては喜ぶべき対応ですが、企業にとっては必ずしも喜ばしいこととはいえません。最低賃金の引き上げによる主な影響としては、次のものが挙げられます。

・人件費が増加する

・新規採用が難しくなる

・扶養内で働く従業員のシフト調整が必要になる

それぞれについて解説します。

人件費が増加する

給与を最低賃金に近い金額で設定している企業の場合、最低賃金の上昇により人件費が高騰する可能性はあります。人件費が高額になると、その分、企業の利益は圧縮され、収益悪化につながるかもしれません。

新規採用が難しくなる

企業が一律に賃金を上げることで、時給の差別化が難しくなり、採用における競争力が低下することがあります。たとえば、最低賃金が900円の地域で時給1,000円に設定している場合、高時給が魅力となって採用希望者が増える可能性があります。しかし、最低賃金が1,000円に引き上げられると、時給1,000円は魅力的とはいえず、より高い賃金を設定している企業へと労働者が流れるかもしれません。

また、人件費が増加することで、新規採用にかける費用が確保できなくなる可能性も想定されます。既存の労働者が流出しない魅力ある職場づくり、満足度の高い賃金設定などが求められるでしょう。

扶養内で働く従業員のシフト調整が必要になる

扶養内で働く従業員は、賃金の引き上げにより給与が増えないように、労働時間を減らして調整する必要があります。扶養内で働く従業員が多い職場では、シフトを減らした結果、人員不足に陥る可能性があるでしょう。

最低賃金引き上げに向けた政府の支援策

ビルと青空と雲の写真

前述したように、最低賃金の引き上げは企業にとっては負担増につながることがあります。そのため政府では、賃金引き上げに伴う企業の負担を緩和する目的も含め、以下の支援制度を実施しています。

・業務改善助成金

・キャリアアップ助成金      

・中小企業向け賃上げ促進税制

・企業活力強化貸付

業務改善助成金とは、生産性向上につながる設備投資を実施した企業が事業場内最低賃金を引き上げたときに支給される助成金です。設備投資により少ない労働者で業務を行えるようになるため、企業にとっては人件費削減にもつながります。

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者が正規雇用労働者になるための取り組みを実施している企業に支給される助成金です。労働者にとっては安心して働ける環境が整い、労働力の定着化も期待できます。

中小企業向け賃上げ促進税制とは、前年度よりも給与などを増加させた企業に対して、増加分の一部を法人税の課税対象から除外できる制度です。法人税の節税にもつながり、コスト減を実現できます。

企業活力強化貸付とは、特定産業の企業が人材確保などのために使う資金を貸付する制度です。日本政策金融公庫の特別利率か基準利率で借りられます。

まとめ

横断歩道を人々が行き交う風景

最低賃金の引き上げは、労働者の生活にも影響を及ぼします。新しく雇用される労働者だけでなく、すでに雇用されている労働者にも最低賃金の基準は適用されるため、紹介した計算式を使って確認しておきましょう。また、転職する場合は、勤務先が基準を満たしているか確認しておくことで、より安心して働ける雇用環境を選択できるようになります。

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