ヒヤリハットとは?起こる原因や報告書を書くポイント、具体的事例を紹介
ヒヤリハットとは、重大な事故や災害が起こる一歩手前の出来事を指します。どの職業においても誰にでも起こり得ることであり、その原因は状況によって異なります。 本記事では、ヒヤリハットの意味や発生の主な原因、ヒヤリハットの防止に有効なトレーニング方法などを解説します。起こりやすい現場の事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットとは、一歩間違えれば重大な事故になる出来事を指します。「ヒヤリとする」「ハッとする」という言葉を組み合わせた造語です。事故はいつどこで起こるかは予測できず、どのような仕事においてもヒヤリハットが起こる可能性はあります。
ヒヤリハットと似た言葉には、「インシデント」や「アクシデント」などもあります。また、ヒヤリハットを語る上で欠かせないのが「ハインリッヒの法則」です。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
ヒヤリハットとインシデントとの違い
ヒヤリハットとは、危険な状態に陥ったり、危険を感じたりした出来事を指します。つまり、実際に事故に至らなかったものの、事故につながる可能性のある出来事です。例えば”作業中に足を滑らせた”などの主に人為的なミスを原因とする状況を指します。
インシデントとは、重大な事故に発展する可能性がある出来事のことです。どちらも「事故に至らなかった出来事」を指す言葉ですが、具体的な意味合いは異なります。
インシデントにはヒヤリハットに該当しないものも含まれます。人為的なミスに限らず、重大な事故に発展する可能性のある出来事も含まれるのが異なる点です。
企業におけるインシデントの例として、情報漏洩・ウイルス攻撃など情報セキュリティに関するものや、セクハラ・パワハラなどのハラスメントがあげられます。
これらは、実際に事故に至らなかったとしても、企業の信用や顧客の信頼を失うなどの重大な影響を与える可能性があります。
企業では、ヒヤリハットとインシデントを適切に区別し、報告・分析を行うことで、安全対策をより効果的に行うことができます。
ヒヤリハットとアクシデントとの違い
アクシデントとは、すでに発生してしまった事故や災害を指します。ヒヤリハットは、このような事故に発展する一歩手前の出来事のことです。
ヒヤリハットの段階を超えてしまうと、アクシデントが発生してしまいます。このようなアクシデントを防ぐために、ヒヤリハットの状態にならない対策が必要です。
ヒヤリハットと「ハインリッヒの法則」との関係
ハインリッヒの法則とは、別名「1:29:300の法則」とも呼ばれます。1931年、米国の損害保険会社に在籍していたハインリッヒという人物が、ある工場で発生した5,000件もの労働災害を調査して導きだした法則です。
「1件の重大な事故の背後には、29件の重大な事故には至らなかった軽微な事故があり、さらにその背後には300件の事故につながりかねないヒヤリハットが隠されている」という法則です。1件の重大事故の裏には、数多くのヒヤリハットが存在していることを示しています。
ヒヤリハットは、重大事故につながる危険な兆候です。ヒヤリハットを減らす対策をすることで、重大事故の発生を未然に防ぐことができるのです。
ヒヤリハットが起こる原因とは?
ヒヤリハットの原因は注意不足とされていますが、注意不足になるまでにはさまざまな原因が隠されています。ヒヤリハットを未然に防ぐには、これら隠れた原因を把握し、減らしていく努力をしなければなりません。
ヒヤリハットが起こるいくつかの原因をみていきましょう。
チーム内のコミュニケーション不足
チーム内のコミュニケーションが不足してメンバー間の認識にズレが生まれると、情報共有がうまくできず、連絡が十分に行き渡りません。重要な指示を聞き逃すことがあれば、ヒヤリハットが発生しやすくなるでしょう。
また、コミュニケーションが不足すると、従業員への教育や注意喚起も怠りがちになります。したがってヒヤリハットを防止するためには、コミュニケーションを活性化して情報共有を円滑にする工夫が欠かせません。
焦りや油断
焦りや油断、疲労などの不注意は、ヒヤリハットの原因の一つです。
焦りや油断は、納期や工程などの制限がある作業において起こりやすい傾向があります。制限時間内に作業を終わらせようと、定められた手順を省いたり、確認作業を怠ったりしてしまうのです。また、自分は大丈夫という思い込みから、注意力が散漫になり、ミスを起こしてしまうこともあります。
疲労も、不注意の原因となります。長時間の作業や、過重労働によって疲労が蓄積すると、注意力が低下し、ミスをしやすくなります。
これらの原因は、初心者やベテランなど業務の経験年数とは無関係に、誰でも起こり得るものです。そのため、ヒヤリハットを防止するためには、焦りや油断、疲労などの原因を踏まえた対策を講じることが重要です。
経験やスキルの不足
知識や経験不足によりヒヤリハットが起こることもあります。新入社員や未経験者などは慣れない業務にミスを起こしやすく、何か異常が起きてもすぐに気付きにくいことから、ヒヤリハットにつながりやすいでしょう。
このような原因のヒヤリハットを防止するためには、知識やスキルを高める機会を積極的に提供する必要があります。現場で作業を行う前に、ヒヤリハットに関する研修を設けることも必要になるでしょう。
5S(職場環境改善)の徹底不足
職場環境を改善する5Sの徹底も必要です。5Sとは、次の5つの言葉の頭文字をとった職場環境を改善するための取り組みです。
- 整理:作業スペースを整える
- 整頓:道具をきちんと保管場所に置く
- 清掃:作業場所は常にきれいにしておく
- 清潔:清潔な状態を保つ
- しつけ:4つの項目を習慣にするよう指導する
5Sが徹底されず、作業する場所が散らかっていたり汚れていたりすると、ヒヤリハットが起こりやすくなります。
ヒヤリハット対策に有効な「KYT」トレーニング
ヒヤリハットの防止には、「KYT」が効果的です。KYTとは「危険予知トレーニング」のことで、ヒヤリハットなど重大な事故につながる危険を発見し、解決する能力を高めるためのトレーニングを指します。
KYTは、4ラウンド法と呼ばれる手法で進めます。手順は以下のとおりです。
- 第1ラウンド :どのような危険が潜んでいるか現状を把握する
- 第2ラウンド :危険ポイントを分析する
- 第3ラウンド :対策を確立する
- 第4ラウンド :目標を設定する
4ラウンド法によるトレーニングは、各自が意見を出しやすいように5~6人程度のチームを作り、リーダーと書記も設定します。
リーダーはKYTを始める前に、危険性に対する意識を高めて労働災害を防止するためにするべきことを説明します。各ラウンドの話し合いでは、各メンバーの積極的な意見を求めることが大切です。
KYTを導入することで、従業員の危険を予知する能力が向上し、注意深く作業できるようになります。安全を自分の問題として考えるようになり、チームワークの強化にも効果的です。
KYTについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
ヒヤリハットの業種別事例
ヒヤリハットはどのような場所でも起こり得るものですが、特に製造業や建設業の現場は発生のリスクが高まりやすい場所です。それぞれの事例をみていきましょう。
製造業や工場のヒヤリハット事例
製造業や工場では機械を扱うこともあり、作業手順を守らないと事故が起こりやすい現場です。ヒヤリハット防止のため、より安全性を意識した作業が求められます。
起こりやすいヒヤリハットには、次のような事例があげられます。
- プレス機に手を挟まれそうになった
- 作業員がフォークリフトに接触しそうになった
- フォークリフトで荷物を上げる作業中に転落しそうになった
- 機械に作業員の衣服が巻き込まれそうになった
- 不良品を出荷しそうになった
機械を動かしているときは事故の可能性を意識し、安全確認を徹底することが大切です。
建設業のヒヤリハット事例
建設業の現場は高所での作業が多く、大きな資材を運搬することもあるため、事故につながる可能性も高い場所です。
特に、次のようなヒヤリハットが起こりやすいでしょう。
- 高所から作業員が転落しそうになった
- 器具を高所から落としてしまった
- トラックが現場から出る際に歩行者と接触しそうになった
- 完成の日程が迫り、強風の日も作業を中止できなかった
建設作業の現場では扱う資材が数多くあり、資材を置く場所に注意しなければなりません。また、工事の日程には余裕を持ち、天候の悪い日の作業を避けることも重要です。
ヒヤリハット報告書とは?目的や書き方のポイント
ヒヤリハットが起きてしまったときは、起こした従業員にヒヤリハット報告書の作成が求められます。ヒヤリハット報告書とは、発生した際の状況や原因、対策などの項目を記載し、共有するための文書です。
ヒヤリハット報告書の目的や、書く際のポイントをみていきましょう。
ヒヤリハット報告書を作成する目的
ヒヤリハット報告書を作成する目的は、主にヒヤリハットの状況や原因を記録して、共有するためのものです。ヒヤリハットの原因を究明し、再発防止策を立てることができます。
ヒヤリハットの報告書を作成することで、ヒヤリハットの事例がデータとして蓄積されます。ヒヤリハット報告書の作成は、重大な事故の防止につながる重要な取り組みです。
ヒヤリハット報告書を書く際のポイント
ヒヤリハット報告書に特別な形式はありませんが、基本的に「5W1H」を記載し、客観的事実を漏れなく書くことが必要です。
また、広く共有するための文書であるため、専門用語は避けなければなりません。
ヒヤリハット報告書を書くときのポイントを詳しくみていきましょう。
基本は「5W1H」
5W1Hとは、次の6つの項目のことです。
- When:発生した日時
- Where:発生した場所
- Who:ヒヤリハットを起こした人
- What:対象となった事象
- Why:ヒヤリハットの原因
- How:どのように対処したか
報告書はこれらの項目を意識しながら作成することで、原因の分析・究明がしやすくなります。特に「Why」の項目は重要で、なぜそのような事象になったのかを掘り下げなければなりません。
客観的事実を記載
報告書は、客観的事実の記載が大切です。体験した様子や状況などをありのままに記載します。主観や推測が入ると、正確な情報を共有できません。
報告書の目的はあくまで情報の共有と再発防止にあり、責任の追及ではないことを周知しておく必要があります。責任を逃れるため、事実の記載をためらうことのないようにしなければなりません。
専門用語は避ける
報告書は多くの関係者に共有する必要があるため、誰が読んでも内容を理解できることが大切です。そのため、専門用語を避け、分かりやすい言葉で記載しましょう。
自分では携わる業務の言葉に慣れていても、他部署の従業員や新入社員には馴染みがない用語もあります。それらの言葉はできるだけ使わないようにすることが重要です。
まとめ
ヒヤリハットは重大な事故につながる可能性のある出来事で、焦りや油断、チーム内のコミュニケーション不足などさまざまな原因で起こります。業種や仕事の熟練度にかかわらず起こり得るものであり、その都度ヒヤリハット報告書を作成し、共有して対策を立てることが大切です。
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