クリーンルームとは?工場での仕事内容やきついと言われる理由も解説
クリーンルームとは、空気中の浮遊物を一定基準以下にコントロールした部屋のことです。 主に食品や精密機器などの製造に用いられています。 クリーンルーム内で検査作業を行うことで、製品の品質を向上させ、消費者からのクレームを減らすことができます。 また、クリーンルームを導入している企業は、品質管理への取り組みが行き届いており、安全な製品を製造していることを消費者に示すことができます。 本記事では、クリーンルームの仕組みや活用するメリット、クリーンルーム内での作業内容、きつい?と思われるルールなどについて解説します。
クリーンルームとは?
クリーンルームとは、空気中の浮遊物や浮遊微生物が一定以下にコントロールされた部屋のことです。温度や湿度も管理され、外界から異物が入り込まないように室圧や気流もコントロールされています。
クリーンルームの清浄度や温度・湿度は状況に応じて変わりますが、いずれの場合においても、基本的には次の4つの原則に従っています。
・異物を持ち込まない
・異物を発生させない
・異物を堆積させない
・異物を排除する
異物を持ち込まないために、クリーンルーム内で使用する機器は、全て洗浄してから設置しなくてはいけません。また、クリーンルーム内で作業する人も同様で、身体を覆うクリーンスーツを着用し、エアーシャワーなどを使って服表面についた異物を吹き飛ばしてから入室します。
クリーンルーム内に異物が発生しないために、ホコリが出やすい衣類や備品は使用せず、最低限の動きで作業をおこないます。室内は清掃しやすい凹凸の少ない構造で、万が一、ホコリなどの異物が侵入した場合も堆積させません。
適度な排気により、異物を排除することもクリーンルームの条件です。ホコリが発生しやすい場所で排気をおこない、一定の清浄度を保てるようにします。
クリーンルームの目的
クリーンルームの目的は、空間内のモノに異物が付着しないように管理することです。目に見えるホコリや異物だけでなく、細菌やごく小さなホコリなども取り除けるため、主に製造や研究の場として活用されます。
たとえば、精密機器や食品の製造において、クリーンルームを使用しない場合を考えてみましょう。
製品に細菌やホコリなどの微細な異物が付着し安全で品質の良い商品を消費者に届けることができなくなり、場合によってはクレームにつながってしまうでしょう。 一方、クリーンルームを導入している会社なら、安全で高品質な価値の高い製品を生み出すことができ、従業員のやりがいにもつながっていくことでしょう。
クリーンルームの仕組み
クリーンルームは、次の仕組みにより清浄さを維持します。
- 浄化した空気を室内に送り込む
- 空調機によって室内の空気を吸い込み、気流の方向を一定に管理する
- 空気の排出量と採取量を同量に保ち、室内を陽圧(外部よりも気圧が高い状態)に維持する
また、作業員が汗を大量にかくと、クリーンルーム内の水蒸気が増え、製品に影響を及ぼす可能性があります。そのため、クリーンルームは湿度と温度を一定に保ち、作業員があまり汗をかかないで過ごせるように調整されています。
クリーンルームの種類
クリーンルームは、取り扱うものによって次の種類に大別できます。
・工業用クリーンルーム
・食品医薬品用クリーンルーム
それぞれの違いについて見ていきましょう。
工業用クリーンルーム
工業用クリーンルームとは、工業製品の製造工程で使われるクリーンルームのことです。製品によって求められる空気清浄度が異なり、適切な基準以下に管理されます。
なお、空気清浄度は、空気中に浮遊する塵埃(一定以下の大きさの塵埃が一定量以下含まれていること)によって決まります。
食品医薬品用クリーンルーム
食品医薬品用クリーンルームとは、食品工場や医薬品の製造・研究などで使われるクリーンルームのことです。バイオロジカルクリーンルームとも呼ばれます。
食品医薬品用クリーンルームでは、空気清浄度に加え、微生物学的清浄度が求められます。外部から新たに侵入することで増える空気中の塵埃とは異なり、微生物は増殖するため、温度や湿度なども含めた厳正な管理が必要な空間です。
クリーンルームが使われる場所
高い清浄度が求められる場面で、クリーンルームは使用されます。主な場所については、以下をご覧ください。
工業用クリーンルーム | 半導体・液晶・電子部品・フィルム・精密機器などの製造、印刷、宇宙開発研究など |
食品医薬品用クリーンルーム | 食品・医薬品などの製造、手術室、無菌治療室、培養・醸造・発酵などの過程、遺伝子工学やバイオテクノロジーの研究など |
クリーンルーム内での仕事内容
食品医薬品用クリーンルームは主に治療や研究の場として使われますが、工業用クリーンルームは作業の場として使われることが多いです。主に次のような作業・仕事は、クリーン内で実施されます。
・検査作業
・組立作業
・機械操作
それぞれの仕事内容と、クリーンルーム内で実施するメリットについて見ていきましょう
検査作業
検査作業とは、工場で製造された製品の仕上がりを確認する作業です。破損や傷はないか、規格どおりにつくられているかといった外観上のチェックだけでなく、正常に動作するかなども総合的にチェックします。
検査中に異物が混入するリスクを回避するためにも、検査作業はクリーンルーム内で実施されることが多いです。高い清浄度を保つクリーンルーム内で検査作業を行うことで、製品の品質を向上させ、消費者からのクレームを減らすことができます。
また、クリーンルームは企業の信頼性を高めるためにも重要な役割を果たしています。クリーンルームを導入している企業は、品質管理への取り組みが行き届いており、安全な製品を製造していることを消費者に示すことができます。
組立作業
組立作業とは、図面などに従って部品を組み合わせ、製品を完成させる作業です。おもちゃや家電製品、自動車などのさまざまな製品は、組立作業を必要とします。
組立作業中に異物が混入すると、目視による検査作業では見抜けない可能性があり注意が必要です。そのため、クリーンルーム内で部品を組み立て、内部への異物混入を回避します。
機械操作
機械操作とは、工場内の機械を適切に設定・操作・監視する仕事です。また、機械が正常に作動するために点検・メンテナンスすることや、トラブル発生時に修理をおこなうことも、機械操作の仕事に含まれます。
精密機器や食品などを扱う機械は、機械自体が高い清浄度を保つことが必要です。そのため、操作や監視・点検なども、クリーンルーム内でおこなわれることがあります。
クリーンルームで働くメリット
クリーンルーム内で製造や研究をおこなうことには、企業にとってさまざまなメリットがあります。たとえば、異物混入を防いで社会的信頼性を高められること、温度や湿度をコントロールして細菌の繁殖を防ぐことなどは、クリーンルームによって得られるメリットです。
また、クリーンルーム内での仕事は、作業員にとっても多くのメリットがあります。
主なメリットとしては次の3点が挙げられます。
・清潔で快適な環境で働ける
・未経験からでも働ける企業が多い
・工場勤務の中では給料が高い
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
清潔で快適な環境で働ける
クリーンルームは、品質や衛生状態を管理するために、人工的に高い清浄性を保たれた空間です。そのため、作業員は清潔な場所で働けます。
また、作業中に汗をかきにくいように温度や湿度もコントロールされているため、快適さも保たれています。暑さ・寒さに弱い人も、クリーンルーム内なら心地よく作業できるでしょう。 花粉症やハウスダストによる鼻炎などに敏感な方にもおすすめです。
未経験からでも働ける企業が多い
クリーンルームでは、検査や組立などの単純作業を実施することが多いです。マニュアルも整っているため、今まで検査作業や組立作業をしたことがない人でも無理なく働けるでしょう。
実際に、クリーンルーム内での作業の求人案件には「未経験歓迎」「マニュアル完備」と記載されていることが多く、未経験者も気兼ねなくチャレンジできます。
工場勤務の中では給料が高い
クリーンルーム内では、精密機器や医療機器、医薬品などを扱うことが多いです。とりわけ半導体や医薬品などを扱う工場は給料が高い傾向にあるため、工場勤務で収入増を目指す人にも適しています。
また、半導体や医薬品などの製造は大企業が母体となっていることが多く、賞与が多く、福利厚生も整っている傾向にあります。
クリーンルーム内での仕事はきつい?
クリーンルームでの仕事にはメリットもありますが、いくつかデメリットもあります。主なデメリットとしては、次の3つが挙げられます。
・クリーンスーツに着替える必要がある
・トイレに行きづらい
・厳しいルールがある
いずれも慣れれば問題なく働けますが、最初は戸惑うかもしれません。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
クリーンスーツに着替える必要がある
クリーンルーム内では、専用のクリーンスーツに着替えて作業をおこないます。入退室のたびに着替えるのは、面倒に感じるかもしれません。また、慣れるまでは、動きにくさや息苦しさを感じることもあります。
トイレに行きづらい
クリーンルーム内にはトイレがありません。そのため、トイレに行くときは次の手順が必要になります。
- 作業を停止する
- クリーンルームから出る
- クリーンスーツを脱ぐ
- トイレに行く
- クリーンスーツを着用し、衛生チェックをする
- クリーンルームに戻る
手間がかかるため、気軽にトイレに行けないと感じるかもしれません。
厳しいルールがある
品質や衛生状態の管理のために、入退室や室内行動において細かなルールが定められていることは一般的です。
扱う製品や企業によって細かい内容は異なりますが、飲食物やアクセサリーは持ち込み禁止、マスク・ゴーグルの取り外し禁止、お化粧禁止などのルールが定められており、面倒に感じるかもしれません。しかしながら、出勤時にお化粧をしたりアクセサリーを選んだりする手間が省けるため、出勤前の準備時間が短いのはありがたいポイントです。
クリーンルーム内での仕事に向いている人
クリーンルーム内での仕事は、次のいずれかに該当する人に向いています。
・細かい作業が得意な人
・清潔な職場で働きたい人
具体的にどのような人なのか解説します。
細かい作業が得意な人
クリーンルームでは、検査作業や組立作業などをおこなうことが多いです。いずれも細かな違いに気付くことや細かな手作業が求められる仕事のため、変化に対して敏感に反応し、手先が器用なことが求められます。
たとえばプラモデル作りや手芸などを趣味としている人や、DIY好きの人などは、クリーンルームの作業に適していると考えられます。
思い当たる点がある人は、ぜひクリーンルームの仕事にチャレンジしてみましょう。
清潔な職場で働きたい人
クリーンルームは空気が清潔に保たれていることから、ハウスダストや花粉症で悩んでいる人にとって適した仕事です。快適な環境で、心地よく働けるかもしれません。
また、普段から「潔癖症」と呼ばれることが多い人にも、適切な仕事です。目に見えない部分まで清潔に保たれているため、不潔さによるストレスを感じずに働けます。
まとめ
クリーンルームは、人工的に高い清浄度が維持された空間です。温度・湿度も快適にコントロールされていることが多いため、暑さや寒さが苦手な人にも働きやすい環境といえます。
また、クリーンルームの業務はマニュアル化されていることが多く、未経験者でもチャレンジできる点も特徴です。検査作業や組立作業などの軽作業がメインのため、男女問わず体力にあまり自信がない人でも無理なく働くことができるでしょう。
とりわけ半導体や医薬品などを扱う工場は大企業が母体となっていることが多く、福利厚生や労働条件も整っている傾向にあります。
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