工場用語辞典
ジグ中ぐり盤 【よみ】 じぐなかぐりばん 【英語】 jig boring machine
量
ジグ中ぐり盤とは?精密な穴あけ・中ぐり加工に特化した工作機械
ジグ中ぐり盤(ジグボーラー)は、極めて高い精度で穴あけ加工や中ぐり加工を行うことに特化した工作機械です。特に、穴の位置決め精度が非常に高く、±数ミクロン(1ミクロンは1/1000ミリメートル)という精密な加工が可能です。その名の通り、元々は治具(ジグ)などの精密な部品加工に用いられていましたが、近年では、高精度な穴加工が求められる様々な分野で活用されています。
1. ジグ中ぐり盤の構造と特徴
ジグ中ぐり盤は、一般的な中ぐり盤と比較して、より精密な位置決め機構と、それを支える高剛性な構造を持っていることが特徴です。
- 1.1 高精度な位置決め機構: ジグ中ぐり盤の最も重要な特徴は、テーブルと主軸頭の位置決め精度です。このために、以下のような精密な機構が採用されています。
- 精密送りねじ: バックラッシ(遊び)が極めて小さく、正確な移動量を実現する精密なボールねじなどが使用されます。
- 高精度スケール: 光学式や磁気式の高精度なリニアスケールが各軸に搭載され、テーブルや主軸頭の現在位置をミクロン単位で正確に検出します。
- 位置決め制御システム: 検出された位置情報に基づいて、サーボモーターなどが精密に駆動し、目標位置への正確な移動と停止を行います。近年では、数値制御(NC)装置と組み合わせることで、プログラムによる自動運転も可能です。
- 微調整機構: 手動操作による微細な位置調整機構を備えている機種もあります。
- 光学式読取り装置(旧型機): 古い機種では、光学式の読取り装置を用いて、基準となるスケールを目視で読み取り、精密な位置決めを行っていました。
- 1.2 高剛性な機械構造: 精密な加工を実現するためには、機械本体の剛性が非常に重要です。加工中の振動を極力抑え、工具と工作物の相対的な位置関係を安定させる必要があります。そのため、ジグ中ぐり盤は、重量のある強固なベッド、コラム、主軸頭などで構成されています。また、熱膨張による精度への影響を最小限に抑えるために、機械室の温度管理が行われることもあります。
- 1.3 その他の特徴:
- 精密な主軸: 高精度な回転と低い振れを実現する主軸が搭載されています。
- 多様な加工に対応: 中ぐり加工だけでなく、ドリル加工、リーマ加工、エンドミルによる軽切削などの多様な加工に対応できる機種もあります。
- 精密測定機能: 高精度な位置決め機構を利用して、加工後のワークの寸法や位置を測定する機能を持つ機種もあります。三次元測定機としての代用も可能な場合があります。
2. ジグ中ぐり盤の種類と用途
ジグ中ぐり盤は、主軸の配置によって主に立て形と横形に分類されます。
- 2.1 立て形ジグ中ぐり盤: 主軸が垂直方向に配置されたタイプです。精密な穴あけ加工や、比較的浅い中ぐり加工に適しています。治具、金型部品、精密機械部品などの高精度な穴加工に広く用いられます。
- 2.2 横形ジグ中ぐり盤: 主軸が水平方向に配置されたタイプです。深い穴の中ぐり加工や、大きなワークの加工に適しています。大型の金型部品や、複雑な形状のワークの精密加工に用いられます。
主な用途:
- 精密治具・金型の製作: 部品を正確に固定・位置決めするための治具や、高精度な成形を行うための金型の製作に不可欠です。特に、多数の穴を高精度な位置関係で加工する場合に威力を発揮します。
- 精密機械部品の加工: 時計部品、光学機器部品、航空機部品、半導体製造装置部品など、高い寸法精度と位置精度が要求される精密機械部品の加工に用いられます。
- 測定作業: 高精度な位置決め機構を利用して、ワークの寸法や形状を精密に測定する用途にも利用されます。
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