工場用語辞典
なぜなぜ分析 【よみ】 なぜなぜぶんせき 【英語】 why-why analysis
問題が発生した際にその**真の原因（根本原因）**を明らかにするために、「なぜ？」を繰り返して問い続ける問題解決の手法です。一般的には、1つの問題に対して5回程度「なぜ？」を繰り返して原因を深掘りしていくことから、「5回のなぜ」とも呼ばれます。
この手法は、製造業の品質管理やトラブル対応で広く用いられており、トヨタ自動車が導入・普及させたことで世界的に知られるようになりました。表面的な問題の対処ではなく、再発防止を目的としている点が最大の特徴です。
なぜなぜ分析の目的
なぜなぜ分析の主な目的は以下のとおりです：
- 問題の再発を防止する
- 対症療法でなく根治を目指す
- チームで原因を共有し、改善活動に活かす
「見えている問題」は結果であり、本当の原因はその背後にあることが多いのです。表面的な「なぜ？」で止まらず、思考を掘り下げることで、組織としての気づきや改善点が見えてきます。
なぜなぜ分析の進め方
基本ステップ
なぜなぜ分析は、以下のようなステップで進めます。
- 現象（問題）を明確にする
まず「何が起きたのか」を具体的に記述します。曖昧な表現を避け、定量的に書くのがポイントです。 - 最初の「なぜ？」を問う
その現象がなぜ起きたのかを考え、1つ目の「なぜ？」に対する答えを出します。 - さらに「なぜ？」を繰り返す
出てきた原因に対して「なぜそれが起きたのか？」を問い続けます。これを繰り返すことで、より深い原因を追求します。 - 根本原因を特定する
「これ以上なぜを重ねても意味がない」と判断できるまで追及し、根本原因を特定します。 - 再発防止策を検討・実行する
特定された根本原因に対して、実行可能かつ効果的な対策を立てます。
なぜは5回必要？
「なぜ」を5回繰り返すというのはあくまで目安であり、実際には3回で済むこともあれば、7回以上必要な場合もあります。重要なのは回数ではなく、原因が結果に対して論理的につながっているか、納得できるかという点です。
なぜなぜ分析の例と活用
例：製造現場でのなぜなぜ分析
問題：製品にキズがついて出荷できなかった。
- なぜ1：なぜ製品にキズがついていたのか？
→ 検査工程で異物が製品に接触していた。 - なぜ2：なぜ異物が接触していたのか？
→ 検査装置内に異物が混入していた。 - なぜ3：なぜ異物が混入していたのか？
→ 装置の清掃が不十分だった。 - なぜ4：なぜ清掃が不十分だったのか？
→ 清掃手順が明確になっていなかった。 - なぜ5：なぜ手順が明確でなかったのか？
→ 清掃マニュアルが存在せず、作業者任せだった。
→ 根本原因：清掃作業の標準化がされていなかった。
→ 対策：清掃マニュアルを作成し、作業者への教育を実施。定期点検も導入。
このように、表面上は「異物が原因」と見える問題でも、深掘りすると「標準化の欠如」や「教育不足」といった根本原因にたどりつくことができます。
ビジネスや教育分野での応用
なぜなぜ分析は、製造現場に限らず、さまざまな場面で応用できます。
- サービス業：クレーム対応の根本原因分析（例：「なぜお客様が不満を感じたのか？」）
- 教育：生徒の学力低下の原因分析（例：「なぜ勉強しないのか？」→「授業が理解できていないから」→「なぜ理解できないのか？」）
- プロジェクト管理：納期遅延の原因特定（例：「なぜ納期に間に合わなかったか？」）
チームで行うメリット
なぜなぜ分析は1人で行うよりも、複数人でブレインストーミング形式で実施すると効果的です。異なる視点からの「なぜ？」が出てくることで、より多面的に問題を捉えられ、実効性のある対策につながります。