工場用語辞典
随意契約 【よみ】 ずいいけいやく 【英語】 voluntary contract
随意契約(ずいいけいやく)とは、国や地方公共団体などの公共機関が、競争入札によらず、特定の相手方を選んで契約を結ぶ方式のことです。原則として、公共工事や物品の購入などは公正な競争原理に基づき競争入札で行われますが、随意契約は、その例外的な契約方法となります。
随意契約が認められる理由
競争入札は、原則として最も有利な条件を提示した者と契約を結ぶため、透明性や公平性が高いとされています。しかし、全ての場合において競争入札が最適とは限りません。随意契約が認められる主な理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 契約の性質: 競争入札になじまない契約である場合。例えば、高度な専門性や特殊な技術が必要とされる業務、他の業者では代替が困難な物品の購入などが該当します。
- 緊急性: 緊急に契約を締結する必要がある場合。災害復旧工事や感染症対策のための物品調達など、迅速な対応が求められる場合に用いられます。
- 少額な契約: 比較的小規模な契約については、入札にかかる事務手続きのコストや時間を考慮し、随意契約が認められる場合があります。
- 特定の政策目的: 障害者就労支援施設からの物品購入など、特定の政策目的を達成するために、特定の事業者との契約が推奨される場合があります。
- 競争入札の不成立: 競争入札を実施したにもかかわらず、入札者がいなかったり、全ての入札が無効になったりした場合、再度入札を行うよりも随意契約の方が効率的な場合があります。
- 秘密保持の必要性: 契約内容が高度な機密情報を伴う場合、情報漏洩のリスクを避けるために、特定の信頼できる相手方と随意契約を結ぶことがあります。
これらの理由に基づき、法律や条例等で随意契約が認められる具体的な要件が定められています。
随意契約の種類と手続き
随意契約には、いくつかの種類があります。主なものとしては、以下のものが挙げられます。
- 特命随意契約: 特定の相手方しか履行できない契約や、競争入札を行うことが著しく不利と認められる場合に、相手方を特定して行う契約です。高度な専門性や特殊な技術を要する業務委託などが該当します。
- 企画競争(プロポーザル方式): 複数の事業者から企画提案を募り、その内容を審査して最も優れた提案をした者と契約を結ぶ方式です。技術提案やデザイン提案など、価格以外の要素も重視される場合に用いられます。
- 少額随意契約: 一定金額以下の少額な契約について、見積もり合わせなどの簡易な手続きを経て行う契約です。
随意契約の手続きは、競争入札に比べて簡略化されていますが、透明性や公正性を確保するための措置が講じられています。一般的には、契約締結の理由や相手方を選定した理由などを明らかにする書類を作成・公開したり、複数の業者から見積もりを徴取したりするなどの手続きが行われます。
随意契約における課題と透明性の確保
随意契約は、特定の状況下においては合理的かつ効率的な契約方法となり得ますが、一方で、透明性や公正性の観点から課題も指摘されています。競争原理が働かないため、価格が適正でない可能性や、特定の事業者への利益誘導が行われる懸念があるためです。
そのため、随意契約を行う際には、その必要性を慎重に判断し、手続きの透明性を確保するための取り組みが重要となります。具体的には、以下のような対策が講じられています。
- 契約理由の明確化と公開: なぜ随意契約を選択したのか、その理由を具体的に説明し、広く公開することで、透明性を高めます。
- 選定理由の明確化と公開: 契約の相手方をどのように選定したのか、その理由やプロセスを明確にし、公開することで、公正性を確保します。
- 複数業者からの見積もり徴取: 可能であれば複数の業者から見積もりを徴取し、価格の妥当性を検証します。
- 第三者によるチェック: 随意契約の妥当性を第三者機関がチェックする仕組みを導入することで、不正を抑制します。
- 情報公開の強化: 随意契約に関する情報を積極的に公開し、市民や議会による監視を可能にします。