工場用語辞典
バルブリフター 【よみ】 ばるぶふりたー 【英語】 valve lifter
内燃機関(エンジン)において、カムシャフトの動きをバルブに伝える役割を持つ部品です。バルブとは、燃焼室に空気を取り込んだり、燃焼ガスを排出したりする吸気バルブ・排気バルブのことで、バルブリフターはその開閉動作に関与します。
エンジンが正常に作動するためには、バルブの開閉タイミングと正確なリフト量(開く量)が非常に重要であり、その調整と伝達を行うのがバルブリフターの主な仕事です。
バルブリフターの仕組みと種類
バルブリフターは、カムシャフトとバルブの間に配置され、カムの回転運動を上下の直線運動に変換してバルブを動かします。エンジンの構造や目的によって、バルブリフターの種類や設置方法が異なります。
1. ソリッドリフター(メカニカルリフター)
ソリッドリフターは、金属の塊(ソリッド)でできた、最もシンプルな構造のリフターです。調整式になっており、定期的にバルブクリアランス(隙間)の調整が必要です。
- 特徴:高回転エンジンやスポーツエンジンに多く採用
- メリット:正確なバルブ制御が可能
- デメリット:メンテナンスに手間がかかる
2. ハイドロリックリフター(油圧式)
ハイドロリックリフターは、エンジンオイルの圧力を使って自動的にバルブクリアランスを調整するタイプです。乗用車や量産車に多く採用されています。
- 特徴:自動調整機能により静音性が高く、メンテナンスが楽
- メリット:長期間にわたってバルブクリアランスを一定に保てる
- デメリット:高回転域での精度はソリッドリフターに劣る
3. ローラリフター
ローラリフターは、カムとの接触部分にローラー(転がる部品)を持ち、摩擦を低減した設計です。効率が高く、燃費向上や摩耗低減に寄与します。
- 特徴:高効率・長寿命
- 採用例:高性能車・燃費重視の最新エンジン
バルブリフターの役割とその重要性
バルブリフターはエンジンの動作において非常に重要な役割を果たしています。もしリフターに不具合が生じた場合、エンジン全体の性能や寿命に深刻な影響を与えかねません。
1. バルブタイミングの正確性を保つ
バルブリフターは、カムシャフトが決めたタイミング通りにバルブを開閉させる役目があります。もしリフターにガタつきや詰まりがあれば、バルブの開閉タイミングがずれ、燃焼効率が低下します。
2. ノイズの低減と快適性の向上
特にハイドロリックリフターは、金属同士の打音(タペット音)を抑える効果があり、エンジンの静粛性向上に貢献しています。現代の車でエンジン音が静かなのは、バルブリフターの進化によるものでもあります。
3. 燃費・排出ガス性能への影響
バルブの開閉が正確であれば、エンジン内部の燃焼が適切に行われ、燃費性能や排出ガスの浄化効率が向上します。逆にリフターの故障は、未燃焼ガスの増加や燃費悪化の原因になります。
バルブリフターの故障例とメンテナンス
バルブリフターが正常に機能しないと、さまざまな不具合が生じる可能性があります。以下に、よくある故障例と対策を紹介します。
故障例1:タペット音(カチカチ音)
エンジン始動時やアイドリング時に、「カチカチ」「カチャカチャ」といった金属音が聞こえる場合、バルブリフターが摩耗している可能性があります。特にソリッドリフターでは、クリアランスが大きすぎるとこのような音が発生します。
- 対策:バルブクリアランスの調整、またはリフターの交換
故障例2:油圧リフターの詰まり
ハイドロリックリフターはオイル通路が細いため、スラッジ(汚れ)で詰まることがあります。この場合、油圧が不足してリフターが動作不良を起こし、バルブの開閉不良に繋がります。
- 対策:定期的なオイル交換、洗浄剤の使用
故障例3:バルブタイミングのズレ
リフターの劣化や変形により、バルブの開くタイミングがずれると、エンジンの出力が落ちたり、排気ガスが増えたりすることがあります。
- 対策:早期の異常発見と部品の交換
