工場用語辞典
タレットパンチプレス 【よみ】 たれっとぱんちぷれす 【英語】 turret punch press
金属板(薄板)に対して穴あけ・切り欠き・成形などの加工を行う産業用機械です。金属板に複数のパンチ(金型)を組み合わせて打ち抜くことで、精密な図形やパターンを連続的に加工できます。「タレット(Turret)」とは回転式の工具マガジンを意味し、機械に取り付けられた多数の金型(パンチ・ダイ)が円盤状に配置されていることが特徴です。
タレットパンチプレスは、自動車部品、家電製品、配電盤、制御盤、厨房機器、建築金物など、さまざまな製品の筐体(きょうたい)やカバーなどを加工する現場で使われており、金属板の加工作業を高精度かつ効率的に行うために欠かせない設備です。
構造と動作の仕組み
1. タレット構造と金型の使い分け
タレットパンチプレスには、上タレット(パンチ側)と下タレット(ダイ側)があり、それぞれ複数の金型が円盤状に並んでいます。作業時には、加工プログラムに従ってタレットが回転し、目的のパンチとダイを選択して加工を行います。1台の機械に30~60種類以上の金型を搭載できるため、多彩な加工に対応できます。
例:制御盤のフロントパネルを製作する際、タレットパンチプレスを使って表示窓の四角い穴、スイッチ用の丸穴、取り付けビスの小さな穴などを一度のセッティングで連続して加工できます。
2. 加工の流れ
- 金属板(鋼板、アルミ板、ステンレスなど)を機械のテーブルにセット
- NC(数値制御)プログラムによって加工位置へ自動移動
- 指定の金型がタレットで選択され、プレスにより金属板を打ち抜く
- 加工終了後、板材を取り出す
打ち抜き加工は高速度かつ高精度で行われ、通常は1分間に100回以上の打ち抜きが可能です。形状や加工内容によっては、曲げやエンボス加工(凸加工)も可能です。
活用例とメリット・注意点
1. 活用例
- 電気製品の筐体部品:換気口のスリットや端子穴、操作パネルの開口部などを精密に加工
- 厨房機器:ステンレス製の機器に多数の穴や折り曲げ加工を施し、組立に必要な部品を製造
- 通信機器・ラック部品:放熱用の穴、取り付け用の長穴などを一括加工
タレットパンチプレスの大きな特長は、同じ板材の中に異なる形状・サイズの加工を複数組み合わせて行えることです。
2. メリット
- 加工スピードが速い:1台で多種類の加工ができるため、生産効率が非常に高い
- 高い再現性:数値制御で加工するため、寸法のばらつきが少なく精密な製品が作れる
- 段取りが短い:金型交換の手間が少なく、段取り替えの時間も最小限で済む
- 中量生産に最適:多品種・中ロットの生産に非常に適している
3. 注意点と限界
ただし、金型による加工であるため、複雑な自由曲線や極端に細かい形状の加工は難しい場合があります。また、金型の摩耗や破損によるメンテナンスも必要です。そうした加工が必要な場合は、レーザー加工機やウォータージェット加工機と組み合わせることで対応できます。
