工場用語辞典
トヨタ生産方式(TPS) 【よみ】 とよたせいさんほうしき(てぃーぴーえす) 【英語】 Toyota Production System
日本の自動車メーカー・トヨタ自動車が開発した、生産工程を効率化するための独自の管理方式・製造哲学です。その特徴は、「ムダの排除」「品質の向上」「効率的な生産」**にあります。
この方式は、戦後の資源や設備が限られた中で、いかに効率よく品質の高い製品を作るかという課題から生まれました。アメリカの大量生産方式(フォード式)とは対照的に、少ない在庫で多品種少量生産を可能にする柔軟性を追求した点が特徴です。
TPSは、現在ではトヨタだけでなく、世界中の製造業やサービス業にも影響を与え、「リーン生産方式(Lean Production)」としても知られています。
2. トヨタ生産方式の二本柱と代表的な手法
トヨタ生産方式は、2本の柱で成り立っています。これらは生産現場のすべての活動の基礎となる考え方です。
1. ジャスト・イン・タイム(JIT)
**ジャスト・イン・タイム(Just In Time)**とは、「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ」生産・供給するという考え方です。これにより、在庫を最小限に抑え、無駄を削減します。
例: 自動車の組立ラインでは、各部品が車の組立順に合わせて、必要なタイミングでラインに供給されます。部品が過剰に在庫されることもなく、保管コストが抑えられます。
JITを実現するためには、サプライヤーや運送業者との密接な連携が不可欠です。時間のズレが生じれば、生産ラインが停止するリスクもあるため、全体最適な仕組みが求められます。
2. 自働化(じどうか)
**自働化(Jidoka)**は、「機械に人間の知恵を持たせる」考え方です。単なるオートメーションとは違い、異常があれば機械が自動停止し、不良品の流出を防ぐという品質重視の仕組みです。
例: トヨタの織機では、糸が切れると機械が自動で止まる機能があり、不良品を大量に作ることが防がれます。これはTPSの原点でもあります。
自働化により、作業員は常に機械を監視する必要がなくなり、異常時には原因を突き止めて改善する「問題解決型の現場運営」が可能になります。
3. トヨタ生産方式の具体的な手法と効果
TPSには、多くの実践的な手法があり、すべてが「ムダの排除」に向けられています。
3-1. カンバン方式(かんばん)
カンバン方式とは、部品の供給や製造の指示を「カンバン(カード)」によって行う方法です。この仕組みによって、生産ラインが自律的に動き、必要な分だけを次工程へ送るプル型生産が実現されます。
例: エンジン部品を組み立てる部署が、必要な部品の「かんばん」を出すと、前工程がそれに応じて供給を開始。作りすぎがなくなり、無駄な在庫が減る。
3-2. 5S活動と標準作業
TPSでは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5S活動を徹底しています。職場環境を整えることで、作業効率が上がり、不具合やミスの発生も減少します。
また、標準作業では、すべての作業者が同じ手順で作業することを定めることで、品質の安定と作業の平準化を実現しています。
例: 工場内の工具置き場に輪郭を描いて管理し、誰が見ても一目で道具の位置がわかるようにする。
3-3. ムダの「7つの分類」
TPSではムダを7種類に分類しています:
- 作りすぎのムダ
- 手待ちのムダ
- 運搬のムダ
- 加工そのもののムダ
- 在庫のムダ
- 動作のムダ
- 不良を作るムダ
これらのムダを徹底的に排除することで、コスト削減と生産性向上を実現します。


