工場用語辞典
ティアダウン 【よみ】 てぃあだうん 【英語】 teardown
製品や装置を分解し、その内部構造・部品構成・設計意図などを詳細に調査・分析するプロセスを指します。特に、他社製品の機能や技術を理解し、自社製品の改善や研究開発に役立てる目的で行われることが多いです。日本語では「分解調査」や「解体分析」などと訳されることがあります。
ティアダウンの目的
ティアダウンは単なる分解作業ではなく、以下のような複数の明確な目的があります。
1. 技術解析・設計思想の把握
競合他社の製品を分解することで、その構造、回路設計、冷却システム、コスト低減技術などの設計方針を知ることができます。これにより、技術的トレンドを把握し、自社の開発戦略に生かすことが可能です。
2. 原価分析(コストダウン)
各部品やモジュールの素材、加工方法、組立方式を調べることで、製品全体の原価構造を推測することができます。どの部分にコストがかかっているかを知り、自社製品とのコスト比較を行うことができます。
3. ベンチマーキング
製品の性能や機能、構造を比較して、自社の製品が競合と比べてどの点で優れているか、または劣っているかを評価するためにティアダウンが用いられます。これにより開発方針や改良点を明確にすることができます。
実施のプロセス
ティアダウンは、一般的に以下のような流れで実施されます。
1. 製品選定
分解する対象製品を選定します。主に競合他社の最新製品や、市場で話題になっているものが対象になります。
2. 分解作業
製品を慎重に分解し、各部品の配置や組立方法を記録します。必要に応じて写真撮影、部品の採寸や素材分析も行います。
3. 部品・構成分析
内部の基板、チップ、機構部品などを調べ、それぞれの機能、製造方法、原産地などを分析します。電子製品であればICチップのロット番号やメーカー名を特定することもあります。
4. 報告書の作成
分析結果を整理し、コスト構造、設計意図、技術トレンドなどの情報をレポートとしてまとめます。これが、社内の製品開発やマーケティングの参考資料になります。
ティアダウンの活用例
● 家電・電子機器分野
スマートフォン、テレビ、パソコンなどの電子機器は、ティアダウンの代表的な対象です。Apple、Samsung、Sonyなどの製品は、専門の調査会社(iFixit、TechInsightsなど)によって定期的に分解・公開されています。
● 自動車産業
EV(電気自動車)や先進運転支援システム(ADAS)を搭載した車両は、競争が激化しており、ティアダウンによってモーターやバッテリー、制御系の技術が詳細に分析されています。
倫理的・法的な注意点
ティアダウンは一般に合法とされていますが、注意すべきポイントもあります。たとえば、分解した情報をそのままコピーして製品化すると、知的財産権(特許や意匠権など)を侵害する可能性があります。また、分析対象が企業秘密にあたる技術である場合、取り扱いには慎重さが求められます。
