工場用語辞典
サスペンション 【よみ】 さすぺんしょん 【英語】 suspension
サスペンション(Suspension)とは、自動車やオートバイなどの車両において、車体と車輪の間に設けられ、路面から伝わる振動や衝撃を吸収し、乗り心地を向上させるとともに、タイヤを常に路面に接地させ、車両の安定性や操縦性を確保するための重要な機構です。「懸架装置(けんかそうち)」とも呼ばれます。
1. サスペンションの主な役割
サスペンションは、車両の安全かつ快適な走行を実現するために、主に以下の3つの重要な役割を担っています。
- 1.1 乗り心地の向上: 路面の凹凸や段差を通過する際に、車輪に加わる衝撃は直接車体に伝わると、乗員にとって大きな不快感となります。サスペンションは、この衝撃を吸収し、車体に伝わる振動を軽減することで、滑らかで快適な乗り心地を提供します。バネやショックアブソーバーといった部品が、衝撃エネルギーを吸収・緩和する働きをしています。
- 1.2 タイヤの接地性確保: 走行中、路面は常に平坦であるとは限りません。凹凸のある路面でも、タイヤが常に路面にしっかりと接地していることは、車両の安定性や操縦性を維持するために非常に重要です。サスペンションは、車輪が路面の変化に追従して上下動することを可能にし、タイヤのグリップ力を最大限に引き出す役割を果たします。これにより、加速、制動、旋回といった車両の基本的な動作を安全かつスムーズに行うことができます。
- 1.3 車体姿勢の安定化: 加速時や制動時には、車両には前後の姿勢変化(ピッチング)、旋回時には左右の傾き(ローリング)が発生します。サスペンションは、これらの姿勢変化を適切に制御し、車両の安定性を保つ役割を果たします。特に、ショックアブソーバーは、バネの振動を抑制し、車体の不要な動きを抑えることで、安定した走行をサポートします。
2. サスペンションの構成要素と種類
サスペンションは、複数の部品が組み合わさって構成されており、その種類も様々です。代表的な構成要素と種類について解説します。
- 2.1 主要な構成要素:
- スプリング(ばね): 路面からの衝撃を吸収し、車体を支える役割を担います。コイルスプリング、リーフスプリング、トーションバースプリングなど、様々な種類があります。
- ショックアブソーバー(緩衝器): スプリングの振動を抑制し、車体の揺れを速やかに収める役割を果たします。オイルやガスを利用したダンパーが一般的です。
- リンク機構: 車輪を車体に取り付け、上下動をスムーズにするためのアームやロッドなどの部品群です。車輪の動きを適切に制御し、タイヤの接地性を保つ上で重要な役割を果たします。
- スタビライザー(アンチロールバー): 車体の左右の傾き(ローリング)を抑制し、旋回時の安定性を高める役割を果たします。左右のサスペンションを連結する棒状の部品です。
- ブッシュ: 金属同士の連結部に用いられ、振動や騒音を軽減し、スムーズな動きを助けるゴムや樹脂製の部品です。
- 2.2 代表的なサスペンションの種類: サスペンションの形式は、リンク機構の違いによって様々な種類が存在します。代表的なものとしては以下のようなものがあります。
- マクファーソンストラット式: シンプルな構造で軽量かつ省スペースなため、多くの前輪サスペンションに採用されています。
- ダブルウィッシュボーン式: 複数のアームを使用し、タイヤの接地性やキャンバー角の変化を最適に制御できるため、高性能車や一部の後輪サスペンションに採用されています。
- マルチリンク式: 複数のリンクを複雑に組み合わせることで、高い運動性能と乗り心地の両立が可能です。主に後輪サスペンションに採用されています。
- トレーリングアーム式: シンプルな構造で軽量であり、主に後輪サスペンションに採用されています。
- 車軸懸架式(固定軸式): 左右の車輪が一本の軸で繋がっている構造で、耐久性が高い反面、乗り心地や運動性能は他の形式に劣ります。トラックやSUVなどに採用されています。