工場用語辞典
抜き取り検査 【よみ】 ぬきとりけんさ 【英語】 sampling inspection
大量の製品や部品の中から一部のサンプルを選び、品質や規格に問題がないかを検査する方法です。すべてを検査する「全数検査」とは異なり、コストや時間の削減を目的として行われる効率的な検査方法です。英語では「sampling inspection(サンプリングインスペクション)」とも呼ばれ、製造業や流通業、小売業など多くの現場で導入されています。
抜き取り検査の目的は、大量生産された製品の中に不良品が混入していないかを判断することです。全体を検査せずとも一部を調べることで、製造過程に問題がないか、ロット全体の品質が安定しているかを判断できます。
抜き取り検査のメリットと注意点
メリット
- コスト削減
全数検査には多くの人手・時間・検査機器が必要ですが、抜き取り検査ではその負担が大きく軽減されます。 - 短時間で実施可能
検査対象が一部で済むため、スピーディな品質チェックが可能です。 - 現場への負担が少ない
検査中にラインを止める必要がなく、業務に与える影響が小さいことも利点です。
注意点
- 見逃しのリスク
検査対象外の製品に不良が含まれていても、それを発見できない可能性があります。 - サンプリング方法が重要
サンプルの取り方が偏っていると、正確な結果が得られません。統計的な手法や基準(JIS、ISOなど)に基づいた選定が必要です。
抜き取り検査の種類と流れ
抜き取り検査には、主に以下のような種類があります:
- ロット抜き取り検査
生産や納品単位(ロット)ごとに、一定数のサンプルを抽出して検査する方式です。合格・不合格の基準をあらかじめ設定し、それに基づいて判断します。 - 連続抜き取り検査
生産ラインの流れに沿って、一定間隔でサンプルを抜き取る方法です。リアルタイムで品質を監視するのに適しています。 - 特別抜き取り検査
過去に不良が多発した場合や、クレームのあった製品など、特定条件下で行う検査です。リスク管理の一環として活用されます。
検査の流れ
- 対象ロットの確定
どのロットから検査するかを決定します(例:1,000個単位など)。 - サンプル数の決定
品質基準や検査レベルに基づき、抜き取る数(例:50個)を決めます。 - 検査の実施
寸法測定、外観チェック、動作確認などを行います。 - 判定
規定の不良数以内であれば合格、それを超えるとロット全体が不合格と判断されることもあります。
業界別:抜き取り検査の実例
① 家電製品の検査(製造業)
家電メーカーでは、工場で大量に生産された冷蔵庫のうち、1ロットあたり数台を抜き取り、外観、電源の起動、音漏れ、消費電力などを検査します。もし1台でも重大な不具合が発見されれば、同一ロットすべての製品が出荷停止になり、追加検査や再生産の判断が行われます。
② アパレル業界(流通・小売)
ファッションブランドでは、海外工場から届いた衣類に対して抜き取り検査を実施します。例えば、500着のTシャツのうち20着をランダムに選び、縫製の乱れ、プリントのずれ、生地の破れがないかを確認します。不良率が規定内であれば合格となり、店舗への出荷が許可されます。
③ 食品業界(衛生管理)
冷凍食品メーカーでは、製造後に抜き取りで細菌検査や異物混入検査を実施します。1日ごとに製品をランダム抽出し、検査機関で分析します。万一、基準値を超える細菌が検出された場合、そのロット全体の廃棄や回収が必要になることもあります。
