工場用語辞典
先行手配 【よみ】 せんこうてはい 【英語】 Prior arrangements
製品の正式な設計が完了する前に、必要となる部品や資材をあらかじめ発注・調達しておく行為を指します。特にリードタイム(納期)が長い部品や、手配に時間がかかる部材について、事前に手を打つことで、製品開発や生産のスピードを確保する目的があります。
なぜ先行手配が必要なのか?
製品開発のスピードが重視される現代においては、「設計が完了してから調達を始める」では納期に間に合わない場合があります。たとえば、以下のような理由から先行手配が行われます:
- 市場投入時期を逃さないため
- 部品の入手に時間がかかるため
- 生産開始に間に合わせるため
- 試作や先行評価を早く行うため
先行手配の具体例
例:家電メーカーの冷蔵庫開発
ある家電メーカーが新型冷蔵庫を開発中で、完成までに1年かかるとします。扉のハンドル部分に使う特注の金属部品は、製造に3か月、輸送に1か月かかる長納期品です。
この部品を正式な設計確定後に注文すると、製品の出荷が大幅に遅れるおそれがあります。そこで、「ほぼ仕様が確定している段階」で、設計変更のリスクを承知の上で先に部品を手配するのが「先行手配」です。これにより、生産スケジュール通りに製品の出荷が可能になります。
メリットとリスク
メリット
- 製品の開発スピードが向上
- 生産ラインへの影響を最小限に
- 市場投入時期の前倒しが可能
リスク
- 設計変更で部品が無駄になる(廃棄や再手配が必要)
- コストが増える(無駄な在庫や再調達の費用)
- サプライヤーとの調整が複雑になる
先行手配を成功させるためのポイント
先行手配はリスクが伴うため、以下のような工夫が求められます:
- 設計の凍結度を見極める
変更可能性の低い部品から優先的に手配する - 数量を限定する
最初は試作や初期ロット分だけ手配し、量産は設計確定後に対応する - 部品の共通化を進める
他製品と共通の部品を使用することで、流用や転用がしやすくなる - リスク分担の契約を結ぶ
サプライヤーとリスク分担の合意を事前に取り決めておく