工場用語辞典
特恵関税 【よみ】 とっけいかんぜい 【英語】 preferential tariff
特定の国や地域に対して、通常よりも低い関税率、あるいは無税での輸入を認める制度のことです。これは経済的に発展途上にある国々を支援し、国際的な経済格差を縮小するための手段として設けられたものです。
この制度の背景には、「国際貿易における平等な競争条件」が存在しないという現実があります。先進国と開発途上国の間には、資本力、生産能力、技術力などに大きな差があり、同じ条件で競争すれば途上国は不利になることが多いのです。そこで、関税という障壁を取り除き、途上国の商品が先進国の市場に入りやすくすることで、経済成長を後押ししようというのが特恵関税の主な目的です。
2. 特恵関税の仕組みと種類
1. 一般特恵関税制度(GSP)
「一般特恵関税制度(Generalized System of Preferences:GSP)」は、先進国が開発途上国からの輸入品に対して、通常の関税よりも低い税率または免税での輸入を認める制度です。1960年代に国連で提唱され、現在では多くの国がこの制度を導入しています。
例: 日本は、GSPの対象国であるバングラデシュからの衣料品に対して、通常よりも低い関税を適用しています。これにより、バングラデシュの衣料産業は海外市場で競争力を持ち、外貨獲得や雇用創出につながっています。
2. 二国間・地域協定に基づく特恵関税
FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)など、国や地域間で締結された経済協定にもとづき、特定の国・地域との間で関税を引き下げるケースもあります。これも一種の特恵関税と考えられます。
例: 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)とのEPAでは、多くの工業製品や農産物について関税が撤廃または引き下げられています。これにより、日本企業がASEAN市場に商品を供給しやすくなり、双方にとって経済的利益があります。
3. 特定品目に対する優遇
特恵関税は必ずしもすべての輸入品に適用されるわけではなく、原則として対象品目が限定されています。また、特恵を受けるためには、輸出国が「原産地証明書」を発行し、商品の生産地が制度の対象国であることを証明する必要があります。
例: 日本がある途上国から輸入する農産物については、品目ごとに特恵関税の対象かどうかが決まっており、加工の程度や産地などの条件が厳格に管理されています。
3. 特恵関税の意義と課題
1. 発展途上国の経済成長支援
特恵関税の最大の目的は、経済的に不利な立場にある国々を貿易を通じて支援することです。途上国が特恵関税を利用することで、自国の産品を先進国市場に輸出しやすくなり、外貨を得る機会が増え、産業の育成にもつながります。
例: ケニアからの花卉(かき:花の輸出品)やコーヒー豆は、特恵関税制度により欧州連合(EU)に免税で輸出されており、ケニア経済の重要な収入源となっています。
2. 先進国にとってのメリット
特恵関税は一方的な支援のように見えますが、実は先進国側にもメリットがあります。安価で質の高い商品を輸入できるほか、将来的な経済パートナーの育成にもなります。また、安定した供給源を確保する意味でも、途上国の発展は重要です。
例: 日本のスーパーで販売される東南アジア産の冷凍エビなどは、特恵関税の恩恵を受けており、消費者も手ごろな価格で商品を購入できます。
3. 課題と批判
一方で、特恵関税にはいくつかの課題もあります。第一に、対象国や品目が限定されているため、すべての途上国や業種に恩恵が及ぶわけではありません。第二に、一部の国が特恵を長期的に享受することにより、自立的な経済成長が妨げられる可能性も指摘されています。
また、原産地証明の取得や書類の整備など、実務上の手続きが煩雑で、特恵制度をうまく活用できていない国や企業もあります。
