工場用語辞典

出来高制 【よみ】 できだかせい 【英語】 piece rate system

労働者が実際に行った作業の量や成果に応じて賃金が支払われる制度を指します。別名「出来高払い」「成果報酬型賃金制度」とも呼ばれ、作業時間ではなく仕事の完成度や生産量に基づいて報酬が決まるのが最大の特徴です。

この制度は製造業や農業、営業、IT業界の一部など、成果が数字で明確に表せる職種・業種で多く導入されています。働いた時間に関係なく「どれだけの仕事をしたか」で収入が変わるため、働き手のモチベーション向上や生産性の向上に役立つとされています。

出来高制の仕組み

出来高制では、以下のような要素によって賃金が決まります:

  • 単価 × 作業量(成果量)= 賃金

たとえば、1個500円の製品を10個作った場合、賃金は「500円×10個=5,000円」となります。作業スピードや効率によって報酬が変動するため、自分の工夫や努力が直接収入に反映されるというメリットがあります。

ただし、日本の労働基準法では、出来高制を採用していても、最低賃金を下回ることは認められていません。そのため、多くの企業では「最低保証給+出来高報酬」という形で制度を設計しています。

出来高制の主な適用業種

出来高制は、以下のような成果が明確に数値化できる業務でよく使われます:

1. 製造業・工場勤務

ライン作業や部品組立など、完成品の数量で評価しやすい作業に適しています。例えば、1時間に10個の製品を作った作業員には、単価に応じた報酬が支払われます。

2. 営業職(歩合給)

営業職では「契約1件ごとに〇円」という出来高報酬が設定されていることが多く、売上や契約件数に応じて給与が増減します。基本給+インセンティブの形が一般的です。

3. フリーランス・在宅ワーク

ライティング、プログラミング、翻訳など、成果物が明確な業務では、出来高制が主流です。たとえば「1記事2,000円」「1プログラム5,000円」などが典型的な報酬設定です。

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出来高制のメリット

1. モチベーションが上がる

努力すればするほど報酬が増えるため、働く側の意欲向上につながります。自分の成果が評価されやすく、公平感を感じやすいという利点もあります。

2. 成果主義に合致している

成果で評価されるため、能力や効率の高い人が報われやすく、企業側も生産性の高い人材を維持しやすくなります。

3. 経営側もコストをコントロールしやすい

作業量に応じた支払いとなるため、無駄な人件費を抑えやすいという企業側のメリットもあります。

出来高制のデメリット・注意点

1. 安定した収入が得にくい

仕事量が変動するため、月によって収入が大きく上下することがあります。特に初心者や未経験者には不安定な制度となる可能性があります。

2. 労働時間の把握が難しい

働いた時間と収入が連動していないため、労働時間の管理が不十分になりがちです。結果的に長時間労働や過重労働を引き起こすこともあります。

3. 労働基準法との兼ね合い

前述の通り、出来高制であっても最低賃金を下回ってはいけません。また、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の支払い義務もあるため、制度設計には注意が必要です。

出来高制と他の賃金制度との違い

出来高制は、「時間給」や「月給制」とは根本的に異なります。時間給は働いた時間に応じて報酬が決まるのに対し、出来高制は成果そのものに報酬を支払うという違いがあります。実際には「固定給+出来高」の併用型も多く、完全出来高制は業務委託契約や個人事業主で多く見られます。