工場用語辞典
引取り責任 【よみ】 ひきとりせきにん 【英語】 pick-up responsibility
製造業者や販売業者などの事業者が、自らが販売または提供した製品が使用後に不要となった際に、それを回収・処分する責任のことを指します。これは、製品の「製造・販売」だけでなく、「廃棄・リサイクル」までのライフサイクル全体に責任を持つという考えに基づくものです。
この考え方は、日本では「拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)」という概念に沿って制度化されており、環境保全や資源循環型社会の実現に向けて重要な役割を果たしています。
つまり、企業は「売ったら終わり」ではなく、「使い終わった後どうなるか」まで考え、適切に処理・再利用する責任があるということです。
引取り責任の対象と制度:誰が、何を、どう処理するのか?
引取り責任の対象となる製品や業者は、法律や条例によって細かく定められています。主な制度として、以下のようなものがあります。
1. 家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの家電製品は、使用後に消費者が廃棄する際、販売店が製品を引き取り、メーカーがリサイクル処理を行うことが義務付けられています。
【例】
古い冷蔵庫を買い替えるとき、家電量販店が古い製品を引き取り、製造メーカーが分解・再資源化。消費者は「リサイクル料金」と「収集運搬料金」を支払う。
2. 資源有効利用促進法
この法律は、製品設計の段階からリサイクルしやすい構造を求めるとともに、使用済み製品の引取りと再資源化の努力を事業者に求める法律です。パソコン、携帯電話、プリンターなどが対象となっています。
【例】
使用済みパソコンをメーカーが回収し、基板や金属などを分別・再利用。事業者は無料回収サービスを提供することもある。
3. 自動車リサイクル法
自動車も、廃車時にはフロン類の処理、エアバッグの解体、シュレッダーダストの再資源化などが必要で、メーカーや輸入業者が責任を負います。
【例】
廃車を解体業者に引き渡すと、メーカーがリサイクル料金を使って適切に処理。消費者は新車購入時に「リサイクル料金」を前払いしている。
引取り責任の目的と社会的意義:持続可能な循環型社会へ
引取り責任が求められる背景には、現代社会が直面している環境問題や資源の枯渇といった課題があります。製品の大量生産・大量廃棄が当たり前だった時代から、**「つくる責任、つかう責任」**へと意識が変化しています。
1. 廃棄物の削減と不法投棄の防止
使用済み製品が適切に回収・処理されれば、不法投棄や不適正処理による環境汚染を防ぐことができます。特に、家電製品や自動車などには有害物質が含まれている場合もあり、適切な処理が不可欠です。
2. 資源の有効活用とリサイクルの推進
引き取った製品から、金属・プラスチック・ガラスなどを再資源化することで、資源の消費を減らし、持続可能な社会に貢献できます。例えば、パソコンの基板からは貴金属(金・銀など)が回収され、再利用されます。
3. 消費者・企業の意識改革
引取り責任を制度化することで、企業は製品設計の段階から「壊れにくく、分解しやすい」製品作りを意識するようになります。また、消費者も「使用後の行方」を考えて製品を選ぶようになり、環境に優しい購買行動が促されます。
