工場用語辞典

塗装 【よみ】 とそう 【英語】 painting

物体の表面に塗料やコーティング材を塗り、乾燥または硬化させて膜を形成する作業のことを指します。これは、美観の向上、素材の保護、特定の機能(防水・防錆・耐熱など)の付加といった目的で行われます。

私たちの身の回りには塗装された物が数多くあります。例えば、住宅の外壁、車のボディ、家具、家電製品、橋梁や鉄塔などのインフラに至るまで、塗装は幅広い分野で使われています。見た目を美しく保つだけでなく、風雨や紫外線、腐食などから素材を守るために欠かせない技術なのです。

2. 塗装の目的と種類

塗装はただ「色を塗る」だけではなく、いくつかの重要な目的を果たします。ここでは、代表的な目的とそれに対応する塗装の種類を紹介します。

1. 美観の向上

塗装の最も一般的な目的は、美観を良くすることです。物体の色や光沢を調整し、デザイン性を高めます。

例: 自動車の塗装は、車のデザイン性を高めるだけでなく、個性やブランドイメージを表現する手段でもあります。

カラーや質感(つや消し・つやありなど)を自由に調整できるため、建築やインテリアの分野でも重要な役割を果たします。

2. 保護機能の付与

塗装は、素材の表面を覆うことで外部からのダメージを防ぎます。特に鉄や木などの素材は、放置すれば腐食や劣化が進みやすいため、塗装による保護が不可欠です。

例: 鉄製の橋に塗装を施すことで、雨や海風による錆(さび)から保護し、構造の安全性を維持します。

また、屋根や外壁への防水塗装は、建物内部への雨水の浸入を防ぐ効果もあります。

3. 機能性の付加

近年では、塗料自体にさまざまな機能を持たせることも一般的になっています。これを「機能性塗装」と呼びます。

例:

  • 断熱塗料:太陽光を反射して室内温度の上昇を防ぐ。
  • 防汚塗料:汚れが付着しにくく、メンテナンスの手間を減らす。
  • 抗菌塗料:病院や食品工場などで、衛生環境を維持する目的で使用。

こうした塗装は、環境負荷の低減や快適性の向上にも貢献しています。

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3. 塗装の工程と技術

塗装には、適切な工程と技術が必要です。仕上がりの美しさや耐久性は、塗料の種類だけでなく、下地処理や塗装方法の精度にも大きく左右されます。

1. 塗装の一般的な工程

塗装は、大きく分けて以下の3つの工程で行われます。

下地処理(素地調整)
 表面の汚れ、錆、古い塗膜などを取り除き、塗料がしっかり密着するように整えます。これを怠ると、塗料が剥がれたり、ムラが出たりする原因になります。

下塗り(プライマー塗布)
 素材と塗料を密着させるための下地塗装です。金属には防錆効果のある下塗り材が使われることもあります。

中塗り・上塗り
 色味や耐久性を確保するために行う本塗装です。複数回重ね塗りすることで、塗膜に厚みを持たせ、機能を高めます。

2. 塗装方法の種類

塗装にはさまざまな方法がありますが、代表的なものは以下の通りです。

  • 刷毛(はけ)・ローラー塗装:手作業で行い、小面積や細かい部分に適している。
  • スプレー塗装:広範囲に均一に塗装でき、自動車や建築現場で多用される。
  • 粉体塗装(パウダーコーティング):粉末状の塗料を静電気で付着させ、高温で焼き付ける方法。環境にやさしく、工業製品に多く使われる。

それぞれの方法には特性があり、目的や場所に応じて最適な手法が選ばれます。