工場用語辞典

発注点管理方式 【よみ】 はっちゅうてんかんりほうしき 【英語】 Order point management method

在庫管理の手法の一つで、「在庫数量があらかじめ設定された発注点を下回った時に、商品や資材を発注する方式」です。英語では「Reorder Point System」とも呼ばれ、安定した需要の商品や部品を継続的に管理するのに適しています。

この方式を導入することで、欠品のリスクを減らしつつ、過剰在庫の抑制が可能になります。主に製造業や小売業、物流業などで広く用いられています。

発注点管理方式の基本的な仕組み

発注点管理方式は、次のような考え方で運用されます。

● 発注点とは?

「発注点」とは、在庫がその数量に達した時点で、新たな発注を行うべき基準となる数量です。
発注点の設定は以下の要素を基に計算されます:

  • 1日あたりの平均使用量(需要量)
  • 調達リードタイム(日数)
  • 安全在庫量(不測の需要増や納期遅れに備える予備在庫)

発注点の計算式は以下の通りです:

発注点 =(1日あたりの平均使用量 × リードタイム)+ 安全在庫

この発注点を下回ったら、事前に決めた数量(通常は経済的発注量)を仕入れることで、欠品を防ぎつつ効率的な在庫管理が行えます。

発注点管理方式の具体的な例

ここでは、文房具を取り扱う店舗が「A社のボールペン」を発注点管理方式で管理しているケースを紹介します。

例:ボールペンの在庫管理

  • 1日の平均販売数(使用量): 20本
  • 仕入先からの納品にかかるリードタイム: 3日
  • 安全在庫: 30本

この場合の発注点は、

発注点 =(20本 × 3日)+ 30本 = 60本 + 30本 = 90本

つまり、在庫が90本を下回ったタイミングで、ボールペンの発注を行うという管理になります。

たとえば、店舗内の在庫が100本あったとして、数日間の販売で在庫が85本に減ったとします。このとき、「発注点(90本)を下回った」と判断し、あらかじめ決めていた数量(たとえば200本)を発注します。

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発注点管理方式のメリットとデメリット

発注点管理方式には、さまざまな利点がある一方、注意すべき点も存在します。

メリット

  1. 欠品のリスクを回避できる
     リードタイムや安全在庫を考慮した発注点を設定するため、急な注文や納期のずれにも対応可能です。
  2. 在庫量の最適化が図れる
     需要に応じた発注ができるため、無駄な在庫を抱えるリスクが減ります。
  3. 管理の自動化がしやすい
     在庫管理システムと連携すれば、発注点を自動で監視し、必要なタイミングで発注処理が可能になります。

デメリット

  1. 需要の変動に弱い
     季節変動やキャンペーンなどで急激な需要の増減がある商品には不向きです。
  2. 発注点の設定が難しい
     リードタイムや安全在庫を誤って設定すると、欠品や過剰在庫の原因になります。
  3. 品目が多いと管理が煩雑
     多品種少量管理を行う企業では、品目ごとに発注点を設定・調整する手間が大きくなります。

発注点管理方式を活用するためのポイント

発注点管理方式を有効に活用するには、いくつかの管理ポイントがあります。

1. データの定期見直し

需要の平均やリードタイム、安全在庫は常に一定とは限りません。定期的に販売データや仕入れ状況を見直し、発注点の再計算が必要です。

2. システム連携の活用

ERP(統合業務システム)やWMS(倉庫管理システム)などと連動することで、在庫のリアルタイム監視や自動発注が可能になります。これにより、担当者の手間を減らしつつ、ミスを防ぐことができます。

3. ABC分析による優先順位づけ

在庫品目の中には、売上への影響が大きいもの(Aランク)と小さいもの(Cランク)があります。すべての品目に同じ労力をかけるのではなく、重要な品目から優先的に発注点管理方式を適用するのが効果的です。