工場用語辞典

精密ろ過 【よみ】 せいみつろか 【英語】 microfiltration

液体中の微粒子や微生物を、特定の孔径(穴の大きさ)を持つ膜(メンブレン)**を用いて除去する物理的な分離操作の一つです。一般的なろ紙を用いたろ過と比較して、より微細な物質を除去できるのが特徴で、水処理、食品・飲料製造、医薬品製造など、幅広い分野で利用されています。

精密ろ過の仕組み

精密ろ過は、水圧などの圧力差を駆動源として行われます。ろ過膜には、その孔径によって特定の大きさ以上の物質が通過できないようになっています。

原液の供給: ろ過対象となる原液(処理前の液体)を精密ろ過膜に供給します。

圧力の印加: 膜の両側に圧力差をつけ、原液中の液体成分(透過液)を膜の反対側へ透過させます。

粒子・微生物の捕捉: 原液中の微粒子や微生物は、膜の孔径よりも大きいため膜表面や膜内部に捕捉され、透過液からは除去されます。

透過液と濃縮液: 膜を透過したきれいな液体は透過液(パーミエート)と呼ばれ、膜上に捕捉された粒子や濃縮された液体は濃縮液(レテンテート)または排液として排出されます。

精密ろ過膜の孔径は、一般的に0.1マイクロメートル(µm)から10マイクロメートル程度の範囲です。この孔径により、細菌、浮遊物質、コロイド粒子などの比較的大きな不純物を効率的に除去できます。ウイルスや溶解性の物質は、この孔径では除去できません。

精密ろ過と他の膜分離技術との比較

精密ろ過は、膜分離技術の一種であり、他にも様々な膜分離技術があります。孔径の大きさによって、除去できる物質が異なります。

  • 限外ろ過(UF): 精密ろ過よりもさらに小さい孔径(0.001〜0.1µm程度)を持ち、ウイルスやタンパク質、高分子などを除去できます。
  • ナノろ過(NF): 限外ろ過よりさらに小さい孔径(0.0001〜0.001µm程度)で、多価イオンや低分子有機物の一部を除去します。
  • 逆浸透(RO): 最も小さい孔径(0.0001µm以下)を持ち、水分子のみを透過させ、塩類やほとんどの溶解性物質を除去し、純水や超純水を製造するのに用いられます。