工場用語辞典

低価法 【よみ】 ていかほう 【英語】 lower cost method

企業が保有する棚卸資産(たなおろししさん)を、取得原価と時価のうち、いずれか低い金額で評価する会計処理の方法です。これは、企業の資産の実質的な価値を正確に反映させるために使われる原則であり、「保守主義の会計原則(慎重主義)」に基づいています。

棚卸資産とは

まず前提として、棚卸資産とは、企業が販売目的や製造のために保有する資産を指します。具体的には、商品、製品、原材料、仕掛品(製造途中のもの)などが該当します。これらは企業の営業活動に直接関係し、その評価方法が企業の利益や財務状況に大きく影響を及ぼします。

低価法の基本的な考え方

低価法では、棚卸資産を次の2つの金額のうち、低い方で評価します:

  • 取得原価:資産を購入または製造するのにかかった実際のコスト
  • 正味実現可能価額:販売価格から販売にかかる予想コストを引いた金額(時価)

たとえば、商品Aを100円で仕入れたが、現在の市場価格が80円に下落している場合、低価法では80円で評価します。この差額(100円-80円=20円)は評価損として費用計上され、企業の利益が減少します。

低価法が必要とされる理由

市場環境や需要の変化、商品の劣化などによって、棚卸資産の価値が下がることがあります。低価法を採用することで、こうしたリスクを財務諸表に適切に反映し、過大な資産計上を防ぎ、財務情報の信頼性を高めることができます。

また、資産の評価が実態を反映していないと、投資家や取引先に誤解を与え、意思決定を誤らせるリスクがあります。したがって、低価法は透明性ある会計処理の一環として重要な役割を果たしています。

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低価法の適用方法

低価法には、以下の2つの適用方法があります。

1. 個別法

各棚卸資産ごとに、原価と正味実現可能価額を比較して評価する方法です。精度が高く、資産の特性を正確に反映できますが、管理や計算に手間がかかるため、大量の在庫を扱う場合には適しません。

2. グループ法(一括法)

似た種類の棚卸資産をグループ化し、グループごとに原価と時価を比較して評価する方法です。一般的には業種や商品分類単位でグループ化され、事務負担を軽減しつつ合理的な評価が可能です。

税務と会計における低価法の違い

低価法は会計上の処理としては一般的ですが、税務上は制限があります。たとえば日本では、法人税法上、「評価損を計上できるのは、著しい下落があったと認められる場合」に限られています。そのため、会計上では評価損を計上していても、税務上では損金不算入とされるケースもあり、税効果会計が必要となる場合があります。

低価法の影響

低価法を適用することで、以下のような企業財務への影響が生じます:

  • 利益の減少(評価損の計上)
  • 資産の減少(棚卸資産の帳簿価額が減る)
  • 自己資本比率の低下の可能性
  • 将来的な税金負担の軽減(税効果会計による繰延税金資産)

これらは企業の経営判断や投資家の評価に大きく関係します。