工場用語辞典
指値 【よみ】 さしね 【英語】 limit price
あらゆる「モノ」の売買において使われる言葉であり、客が指定する値段を指している。
例としては、株式の売買を委託する際に顧客が希望の値段を指定すること。
また、不動産の売買においては買主が希望をする購入価格のこと。
1. 指値注文の基本 – あなたの「買いたい」「売りたい」価格を指定
指値注文とは、株式投資やFX(外国為替証拠金取引)などの金融商品取引において、「〇〇円以下なら買いたい」「△△円以上なら売りたい」と、あらかじめ具体的な価格を指定して発注する注文方法のことです。成り行き注文のように、その時点の市場価格で即座に約定することを優先するのではなく、指定した価格に到達した場合にのみ取引が成立するという特徴を持ちます。
買い注文の場合、「〇〇円」という指値価格を指定すると、市場価格がその価格以下になった場合にのみ買い付けが行われます。指定価格よりも低い価格で約定することもありますが、指定価格よりも高い価格で買われることはありません。
一方、売り注文の場合、「△△円」という指値価格を指定すると、市場価格がその価格以上になった場合にのみ売却が行われます。指定価格よりも高い価格で約定することもありますが、指定価格よりも低い価格で売られることはありません。
指値注文の最大のメリットは、自分の希望する価格でのみ取引を実行できる点にあります。これにより、相場の急な変動に巻き込まれて意図しない高値で買ったり、安値で売ったりするリスクを軽減できます。特に、中長期的な投資戦略に基づき、特定の価格帯での購入や売却を考えている投資家にとって、指値注文は非常に有効なツールとなります。
しかし、指値注文にはデメリットも存在します。それは、市場価格が指定した価格に到達しない場合、いつまで経っても注文が成立しない可能性があるということです。特に、短期的な値動きを狙った取引や、すぐにポジションを持ちたい場合には、指値注文では取引機会を逃してしまう可能性があります。また、市場が急激に変動した場合、指定した価格を瞬間的に通過してしまい、約定しないというケースも考えられます。
2. 指値注文の種類と戦略的な活用
指値注文は、その執行条件や有効期間などを細かく指定することで、より戦略的な取引が可能になります。
- 通常指値: 最も基本的な指値注文で、指定した価格に到達すれば約定します。
- IOC(Immediately Or Cancel): 「指値値で即時に一部でも約定させる。残りはキャンセル」という注文方法です。すぐに約定させたいが、希望価格でなければ一部でも良いという場合に有効です。
- FOK(Fill Or Kill): 「指値値で全数量を即時に約定させる。一部でも約定しない場合は全数量をキャンセル」という注文方法です。全数量を希望価格で約定させたい場合に利用します。
- 期間指定: 指値注文に有効期間を設定できます。「当日限り」「今週中」「〇月〇日まで」など、証券会社によって設定できる期間は異なります。
指値注文は、様々な投資戦略において活用できます。
- 押し目買い・戻り売り戦略: 上昇トレンド中に一時的に価格が下落した「押し目」と呼ばれる水準に買い指値注文を入れておいたり、下降トレンド中に一時的に価格が上昇した「戻り」と呼ばれる水準に売り指値注文を入れておいたりすることで、有利な価格でのエントリーを狙います。
- 高値・安値圏での取引: 過去の高値圏や安値圏に指値注文を設定しておくことで、相場がその水準に到達した際の自動的な取引を狙います。
- 値幅取り戦略: 一定の値幅で価格が変動する銘柄に対して、安値圏に買い指値、高値圏に売り指値を同時に設定しておくことで、自動的に売買を繰り返すことを目指します。
- 逆指値との組み合わせ: 損失を限定するための逆指値注文(指定した価格に達したら成行で決済する注文)と組み合わせることで、リスク管理を徹底した取引戦略を構築できます。例えば、「〇〇円で買い指値注文を入れ、△△円で逆指値売り注文を入れる」といった具合です。
3. 指値注文の注意点とリスク管理の重要性
指値注文は、自分の希望する価格で取引できるという大きなメリットがある一方で、いくつかの注意点とリスクを理解しておく必要があります。
- 約定しないリスク: 最も重要な注意点として、市場価格が指定した価格に到達しなければ、いつまで経っても注文は成立しません。特に、値動きの少ない銘柄や、市場のトレンドと逆の方向に指値注文を出している場合は、長期にわたり約定しない可能性があります。
- 機会損失のリスク: 約定を待っている間に、市場価格が大きく変動し、結果的に成り行き注文であれば得られたはずの利益を逃してしまう可能性があります。短期的な取引においては、このリスクを十分に考慮する必要があります。
- スリッページのリスク(限定的): 指値注文は指定価格での約定を目指しますが、市場の急激な変動時には、指定した価格で完全に約定しない、あるいは一部のみ約定するという可能性もゼロではありません。ただし、成り行き注文に比べればスリッページのリスクは低いと言えます。
- 注文の有効期間: 指値注文には有効期間を設定できますが、期間が過ぎると自動的に失効します。再度取引したい場合は、改めて注文を出す必要があります。有効期間の設定を誤ると、意図しないタイミングで注文が失効してしまう可能性があります。
- 手数料: 指値注文も成り行き注文と同様に、取引手数料が発生します。頻繁に指値注文を繰り返す場合は、手数料も考慮した上で取引戦略を立てる必要があります。