工場用語辞典

信用状 【よみ】 しんようじょう 【英語】 letter of credit

国際間の貿易取引において企業間に銀行が介入し商品代金の支払い確約書を指し、銀行が作成する書類となる。

輸出、輸入者も「商品はきちんと届くのか?」「代金は支払われるのか?」などの不安が払拭され取引を円滑に図ることができる。

信用状(Letter of Credit、L/C)は、国際貿易において、売主(輸出者)が代金回収のリスクを軽減し、買主(輸入者)が確実に商品を受け取るための、銀行が発行する支払い確約書です。遠隔地との取引における相互の不信感を解消し、安全で円滑な商取引を支える、まさに貿易の生命線とも言える重要な仕組みです。

想像してみてください。北海道の新鮮な海産物を扱う会社が、シンガポールのレストランから大量のホタテの注文を受けたとします。北海道の会社は、まだ直接会ったことのないシンガポールの会社が、本当に約束通りに代金を支払ってくれるのか不安に感じるでしょう。一方、シンガポールのレストランも、代金を先に支払ったにもかかわらず、品質の悪いホタテが送られてきたり、全く商品が届かなかったりするリスクを心配します。

このような状況で登場するのが信用状です。シンガポールのレストランは、取引のある銀行に依頼して、北海道の会社宛の信用状を発行してもらいます。この信用状には、ホタテの種類、量、価格、船積みの期限、必要な書類(船荷証券、原産地証明書など)が詳細に記載されます。北海道の会社は、この信用状を受け取ることで、「この条件通りにホタテを準備し、必要な書類を揃えれば、銀行から代金が支払われる」という確固たる保証を得ることができるのです。

信用状取引の流れと関係者

信用状取引は、複数の当事者と段階を経て進行する複雑なプロセスですが、それぞれの役割を理解することで、その仕組みがより明確になります。

  • 輸入者(買主、Applicant): 商品を購入し、信用状の発行を銀行に依頼する企業(例:シンガポールのレストラン)。
  • 発行銀行(Issuing Bank): 輸入者の依頼に基づき、信用状を発行する銀行(例:シンガポールのレストランの取引銀行)。
  • 通知銀行(Advising Bank): 発行銀行から信用状を受け取り、輸出者にその内容を通知する銀行(例:北海道の会社の取引銀行)。
  • 輸出者(売主、Beneficiary): 商品を販売し、信用状に基づいて代金を受け取る企業(例:北海道の海産物会社)。
  • 確認銀行(Confirming Bank)(任意): 発行銀行の信用力を補強するために、輸出者の依頼または発行銀行の依頼によって、支払い確約を行う銀行。主に輸出者側の銀行が務めます。
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取引の流れは以下の通りです。

売買契約の締結: 北海道の会社とシンガポールのレストランの間で、ホタテの売買契約が成立します。決済方法として信用状が合意されます。
信用状の発行依頼: シンガポールのレストランは、取引銀行に信用状の発行を依頼します。
信用状の発行: シンガポールの銀行は、レストランの信用状況などを審査し、信用状を発行します。
信用状の通知: シンガポールの銀行は、北海道の会社の取引銀行を通じて、北海道の会社に信用状を送付します。
信用状の内容確認: 北海道の会社は、受け取った信用状の内容が売買契約と一致しているかを確認します。
商品の船積みと書類の準備: 北海道の会社は、信用状の条件に従ってホタテを船積みし、必要な書類(船荷証券、送り状、保険証券、原産地証明書など)を準備します。
書類の呈示と代金請求: 北海道の会社は、準備した書類を取引銀行に呈示し、信用状に基づいて代金の支払いを請求します。
書類の審査と代金の支払い(買取): 北海道の会社の銀行は、呈示された書類が信用状の条件と一致しているかを厳格に審査し、不備がなければ北海道の会社に代金を支払います。
書類の送付と代金の回収: 北海道の会社の銀行は、受け取った書類をシンガポールの銀行に送付し、代金を回収します。
輸入者への書類引き渡しと代金の支払い: シンガポールの銀行は、レストランに書類を引き渡し、レストランは代金を支払うことでホタテを受け取ることができます。

信用状の種類と利用上の注意点

信用状には、様々な種類があり、取引の特性やニーズに合わせて使い分けられます。

  • 取消不能信用状(Irrevocable L/C): 発行銀行の同意なしには、信用状の内容を変更したり、取り消したりすることができない、輸出者にとって最も安全な信用状です。
  • 取消可能信用状(Revocable L/C): 発行銀行の判断で、輸出者に通知することなく内容を変更・取消が可能な信用状で、輸出者にとってリスクが高いため、現代の貿易取引ではあまり利用されません。
  • 一覧払信用状(Sight L/C): 輸出者が信用状で指定された書類を銀行に提示すれば、直ちに代金が支払われる信用状です。
  • 期限付信用状(Usance L/C): 輸出者が書類を提示した後、一定期間経過後や指定された期日に代金が支払われる信用状です。輸入者に支払いまでの猶予が生まれます。
  • 確認信用状(Confirmed L/C): 発行銀行に加えて、輸出者側の銀行(確認銀行)も支払いを保証する信用状です。発行銀行の信用力が低い場合や、政治情勢が不安定な国との取引で利用されます。

信用状を利用する際には、以下の点に留意する必要があります。

  • 信用状条件の厳守: 輸出者は、信用状に記載された商品の詳細、数量、品質、船積み期限、提出書類などを完全に遵守しなければなりません。書類に不備があると、代金の支払いが遅延したり、拒否されたりする重大な問題につながります。
  • 発行銀行の信用力: 輸入者が依頼する発行銀行の信用力を事前に確認することが重要です。信用力が低い銀行の場合、代金が支払われないリスクも考慮する必要があります。
  • 手数料の負担: 信用状の発行、通知、確認、買取など、各段階で銀行に手数料が発生します。これらの手数料を誰が負担するのかを、売買契約で明確に定めておく必要があります。
  • 為替リスクの管理: 国際取引では、為替レートの変動によって最終的な代金受取額が変わる可能性があります。為替予約などの手段を用いて、為替リスクをヘッジすることを検討しましょう。