工場用語辞典
最終仕入原価法 【よみ】 さいしゅうしいれげんかほう 【英語】 Last purchase cost method
最終仕入原価法とは:期末在庫の評価と売上原価の算出
最終仕入原価法(さいししいれげんかほう)とは、棚卸資産(在庫)の期末評価および売上原価の算出方法の一つです。期末に最も近い時期に仕入れた単価(最終仕入単価)を、期末在庫の評価額を計算する際に用いるという特徴があります。売上原価は、期首在庫と当期仕入高の合計額から、期末在庫の評価額を差し引いて算出されます。
最終仕入原価法の計算方法と特徴
最終仕入原価法では、期末在庫の数量に、期末に最も近い仕入の単価を乗じて期末在庫の評価額を求めます。例えば、期末在庫が100個あり、直近の仕入が1個あたり100円だった場合、期末在庫の評価額は100個 × 100円 = 10,000円となります。
売上原価は、以下の計算式で算出されます。
売上原価 = 期首在庫額 + 当期仕入高 - 期末在庫額
最終仕入原価法の主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 簡便性: 計算方法が比較的単純で、事務処理が容易です。
- 時価との関連性: 期末在庫が直近の仕入価格で評価されるため、期末時点の市場価格を反映しやすいと考えられます。
- 収益費用対応の原則とのずれ: 売上原価は過去の仕入価格に基づいて算出されるため、必ずしも当期の収益と対応しない場合があります。特に、仕入価格が大きく変動する場合には、利益が歪んで表示される可能性があります。
- インフレ・デフレの影響: インフレ時には、期末在庫が安く評価され、売上原価が高くなる傾向があります。デフレ時には、その逆の現象が起こります。
最終仕入原価法の会計処理と適用上の注意点
最終仕入原価法は、日本の会計基準においても認められている棚卸資産の評価方法の一つです。ただし、継続適用が原則であり、一度採用した評価方法を安易に変更することは認められていません。
最終仕入原価法を適用する際には、以下の点に注意が必要です。
- 仕入単価の正確な把握: 期末に最も近い仕入の単価を正確に把握する必要があります。複数の仕入がある場合は、どの仕入を最終仕入とするかの基準を明確にしておく必要があります。
- 継続性の原則の遵守: 会計期間を通じて一貫して同じ評価方法を適用することが重要です。
- 重要性の原則の検討: 仕入価格の変動が小さい場合など、他の評価方法との差異が重要でないと認められる場合には、簡便性を優先して最終仕入原価法が選択されることがあります。
最終仕入原価法は、計算が容易であるというメリットがある一方で、収益費用対応の原則との関連性やインフレ・デフレの影響を考慮する必要があります。企業の業種や在庫の特性、仕入価格の変動状況などを総合的に勘案し、適切な棚卸資産の評価方法を選択することが重要です。