工場用語辞典
内製化 【よみ】 ないせいか 【英語】 insourcing
本来は外部に委託(外注)していた業務や製品の製造、サービス提供などを自社の中で行うように切り替えることを指します。英語では「insourcing(インソーシング)」と呼ばれます。
たとえば、ある企業がこれまで外注していたソフトウェア開発を、社内のエンジニアで対応するようになった場合、それは「内製化」となります。製造業、IT業界、飲食業、サービス業など、多くの分野で活用される概念です。
近年では、コスト削減だけでなく、スピード感の向上・品質管理の徹底・ノウハウ蓄積などを目的として内製化を進める企業が増えています。
内製化の目的と導入理由
内製化にはさまざまなメリットがありますが、導入の背景には企業ごとの明確な目的があります。以下に主な目的とその理由を紹介します。
1. コスト削減と収益改善
外注コストが高騰している場合、内製化することで外注費の削減と利益率の向上が期待できます。特に長期的に見れば、自社内での運用はコストパフォーマンスが良くなる傾向があります。
例:
ある製造業者が、毎月500万円かかっていた設計業務の外注を、エンジニア2名を社内採用することで月300万円に抑えた。
2. ノウハウの蓄積と人材育成
外注に頼っていると、知識やスキルが社外に流出し、自社にノウハウが残らないという問題があります。内製化すれば、技術や業務知識が社内に蓄積され、将来的な競争力の源になります。
例:
IT企業がシステム運用を外注していたが、社内にエンジニアを育てて内製化。トラブル対応も迅速になり、技術的な自立性が向上した。
3. スピードと柔軟性の向上
外注業務では、依頼から納品までに時間がかかることが多く、柔軟な対応が難しいこともあります。内製化することで業務のリードタイムを短縮し、スピード感ある対応が可能になります。
例:
マーケティング部門が広告バナー制作を外注していたが、社内デザイナーを配置して内製化。急なキャンペーンにも即日対応ができるようになった。
内製化の実際の活用例
さまざまな業界で進む内製化の実例を紹介します。どの分野でも、企業戦略や組織強化の一環として行われています。
1. IT・システム開発の内製化
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に伴い、システムやアプリケーションの内製化が進んでいます。社内にエンジニアやプログラマーを抱えることで、迅速な開発・運用・改善が可能になります。
具体例:
大手小売業が、顧客管理システム(CRM)を外注していたが、業務に合わないため社内で開発チームを結成し、独自システムを構築。顧客対応の精度が向上し、顧客満足度もアップ。
2. 製造業での部品内製化
製造業では、部品や治具などを外注から内製に切り替えるケースがあります。これにより、品質の安定化と生産コストの最適化が図られます。
具体例:
精密機器メーカーが、これまで外部に発注していた試作品用の金型を3Dプリンタで自社内製化。設計変更にも即対応でき、開発スピードが2倍に。
3. 飲食業の内製化
飲食チェーンなどでは、ソースやスープの製造をセントラルキッチンから自店舗で手作りする内製化に切り替えることで、商品の品質を差別化する動きもあります。
具体例:
ラーメンチェーンがスープの仕込みを本部委託から店舗内製に変更。各店舗の味に個性が出て、リピーターが増加。
内製化は企業の「筋力」を高める戦略
内製化とは、外注していた業務を自社内で行うようにする取り組みであり、単なるコスト削減ではなく、企業の自立性・技術力・対応力を高める戦略的選択肢です。
内製化の主なメリット
- 外注コストの削減
- 社内にノウハウが蓄積
- スピード対応・柔軟な改善が可能
- セキュリティや品質の管理がしやすい
ただし、社内の人材育成や体制整備が不十分な状態で無理に内製化すると、かえって生産性が下がるリスクもあります。そのため、「どこを内製化し、どこを外注に残すか」というバランスの見極めが重要です。
