工場用語辞典
定量発注 【よみ】 ていりょうはっちゅう 【英語】 Fixed order
在庫管理の手法の一つで、在庫数量があらかじめ定めた発注点(在庫下限値)を下回ったときに、一定数量を発注する方式です。「発注量を固定し、発注のタイミングは在庫状況に応じて決める」という特徴があり、在庫の安定確保と効率的な補充を目的として、多くの業種で用いられています。
定量発注の基本的な仕組み
定量発注では、以下の3つの要素が重要になります。
1. 発注点(Reorder Point)
在庫がこの数量を下回った時に、発注が必要とされる基準値です。通常は、リードタイム中に必要となる数量に安全在庫を加えた値で設定します。
発注点 = 1日平均使用量 × リードタイム日数 + 安全在庫
2. 発注量(Order Quantity)
発注するたびに仕入れる数量です。定量発注方式では、この数量を固定しておくことがポイントです。
3. リードタイム
発注してから実際に商品が納入されるまでの期間です。リードタイムが長いほど、安全在庫を多めに確保する必要があります。
具体例:定量発注のイメージ
たとえば、1日に10個のペンを消費し、納品までに3日かかるとします。安全在庫を20個とすると、
- 発注点 = 10個 × 3日 + 20個 = 50個
現在の在庫が50個を下回った時点で、たとえば「100個」という固定の発注量を発注する、というのが定量発注の仕組みです。
定量発注のメリット
1. 欠品の防止
在庫が発注点を下回る前に補充できるため、欠品のリスクを低減できます。とくに販売機会の損失や生産停止を防ぐために有効です。
2. 発注数量が一定で管理しやすい
発注ごとの数量が固定されているため、仕入れや物流の計画が立てやすいというメリットがあります。注文ミスも起きにくくなります。
3. 在庫の適正化
需要変動に応じて発注タイミングを調整できるため、過剰在庫を抱えるリスクが少なく、在庫コストを抑えることが可能です。
定量発注のデメリット・注意点
1. 管理の手間がかかる
在庫数を常に監視する必要があるため、管理の手間やシステム化が必要です。特に商品数が多い場合は、在庫管理システムの導入が不可欠です。
2. 突発的な需要変動に弱い
発注点や発注量は基本的に固定されているため、急な需要増加には柔軟に対応しづらく、安全在庫の見直しが重要になります。
3. 発注頻度が不規則
発注のタイミングは在庫状況によって変動するため、発注頻度が安定せず、取引先や配送のスケジュール調整が難しくなることがあります。
定量発注方式が向いているケース
- 使用量や販売量にある程度の変動がある商品
- 高価で大量の在庫を持ちたくない商品
- 生産ラインや店舗で重要な部材・資材
たとえば製造業で使われる部品、病院で使用される医療消耗品、在庫を切らすと業務に支障が出るアイテムなどで広く使われています。
定期発注方式との違い
| 項目 | 定量発注方式 | 定期発注方式 |
| 発注のタイミング | 在庫が発注点を下回ったとき | あらかじめ決めた一定周期ごと |
| 発注量 | 一定(定量) | 在庫量に応じて変動 |
| 向いている場面 | 需要が変動するが補充を欠かしたくない商品 |
定量発注は「在庫切れを避けたいが、過剰在庫も防ぎたい」場合に適しており、バランスのとれた発注管理が可能な方式です。
