工場用語辞典
エッチング 【よみ】 えっちんぐ 【英語】 etching
エッチングとは、化学薬品や電気化学的な腐食作用を利用して、材料の表面を部分的に除去する加工技術です。金属、ガラス、半導体など様々な材料に対して使用でき、精密な加工や微細なパターン形成に不可欠な技術として、幅広い分野で活用されています。
1. エッチングの原理
エッチングの基本原理は、腐食です。腐食とは、材料が周囲の環境と化学反応を起こし、徐々に劣化していく現象です。エッチングでは、この腐食を意図的に制御し、特定の領域だけを溶解除去します。
エッチングを行うには、まず材料表面の不要な部分を保護膜(レジスト)で覆います。レジストには、目的のパターンに応じて様々な材料が使用されます。次に、レジストで覆われていない部分を腐食液や腐食ガスに接触させます。すると、露出した部分だけが腐食され、材料表面に凹凸が形成されます。最後に、残ったレジストを剥離すれば、エッチングされたパターンが完成します。
2. エッチングの種類
エッチングには、大きく分けてウェットエッチングとドライエッチングの2種類があります。
2.1 ウェットエッチング
ウェットエッチングは、液体状の腐食液を使用するエッチング方法です。古くから版画や金属加工などに利用されてきた伝統的な技術であり、現在でも様々な分野で活用されています。
ウェットエッチングのメリット
- 簡便さ: 比較的簡単な設備で、手軽にエッチングを行うことができます。
- 低コスト: ドライエッチングに比べて、設備投資やランニングコストが抑えられます。
- 選択性: 腐食液の種類を変えることで、特定の材料だけを腐食させることができます。
ウェットエッチングのデメリット
- 均一性: 大面積の基板に対して、均一なエッチングを施すことが難しい場合があります。
- 微細加工: 微細なパターンを形成することが難しい場合があります。
- 環境負荷: 腐食液の使用量が多く、環境負荷が高い場合があります。
2.2 ドライエッチング
ドライエッチングは、気体状の腐食ガスやプラズマを使用するエッチング方法です。半導体製造における微細加工技術として発展し、近年では様々な分野で利用されています。
ドライエッチングのメリット
- 均一性: 大面積の基板に対しても、均一なエッチングを施すことができます。
- 微細加工: 微細なパターンを形成することができます。
- 高精度: エッチングレートや形状を精密に制御することができます。
ドライエッチングのデメリット
- 高コスト: 設備投資やランニングコストが高いです。
- 複雑なプロセス: ウェットエッチングに比べて、プロセスが複雑です。
- 選択性: 材料によっては、適切な腐食ガスやプラズマを選択する必要があります。
3. エッチングの用途
エッチングは、様々な分野で幅広く活用されています。代表的な用途としては、以下のものが挙げられます。
3.1 半導体製造
半導体デバイスの製造において、微細な回路パターンを形成するために、エッチングは不可欠な技術です。ドライエッチングが主に用いられ、高い精度と均一性が求められます。
3.2 プリント基板製造
プリント基板の製造において、銅箔をエッチングすることで、回路パターンを形成します。ウェットエッチングが主に用いられますが、近年ではドライエッチングも利用されています。
3.3 金属加工
金属製品の装飾や表面処理、微細な穴あけ加工などに、エッチングが利用されます。ウェットエッチングが主に用いられます。
3.4 ガラス加工
ガラス製品の装飾や模様付け、微細な穴あけ加工などに、エッチングが利用されます。ウェットエッチングが主に用いられます。
3.5 その他
その他にも、エッチングは、MEMS(微小電気機械システム)の製造、光学部品の製造、美術工芸品の制作など、様々な分野で活用されています。