工場用語辞典

ドライ工程 【よみ】 どらいこうてい 【英語】 dry process

「ドライエッチング工程」。

半導体製工程の一つで、ウエハーの必要ない薄膜を全て、若しくは一部除去する工程。

水や液体などの溶媒を使用せず、乾燥状態で行われる加工・処理工程を指します。これはウェット工程(Wet Process)と対を成す概念であり、電子部品製造、半導体、化学工業、建築資材の製造など、さまざまな分野で活用されています。

ドライ工程の特徴は、精密制御が可能で、不要な廃液が出にくく、環境負荷が比較的少ないことです。特に半導体産業では、高精度な微細加工が求められるため、ドライ工程が重要な役割を果たしています。

ドライ工程とウェット工程の違い

使用する媒介物の違い

  • ドライ工程では、加工において液体を使用せず、気体・プラズマ・粉体などが主に使用されます。
  • 一方、ウェット工程は、化学薬品や水などの液体を使って洗浄、エッチング(腐食)、コーティングなどを行います。

例えば、基板の表面を加工する場合、ドライ工程ではプラズマを使って表面の不要部分を削りますが、ウェット工程では酸性・アルカリ性の溶液を使って化学的に溶かします。

環境・コスト面での違い

ドライ工程は液体を使わないため、液体廃棄物の処理コストが削減でき、作業環境の安全性も高まります。ただし、設備投資や運用コストはウェット工程より高くなる場合があります。

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ドライ工程の具体的な例

1. 半導体製造におけるプラズマエッチング

最も代表的なドライ工程の一つが「プラズマエッチング」です。これは半導体の表面に形成されたレジストパターンをもとに、不要な部分をプラズマで削り取る工程です。

特徴:

  • ナノレベルの精密加工が可能。
  • エッチングガスを用いて選択的に反応を起こせる。
  • 微細構造の立体的な制御に向いている。

プラズマエッチングでは、反応性ガス(例:CF₄、SF₆など)を高周波でイオン化し、基板表面に照射することで、物理的かつ化学的に表面を削ることができます。

2. 粉体成形(セラミック部品の形成)

粉末状の材料を高圧で圧縮し、成形体を作る工程もドライ工程に含まれます。例えば、ファインセラミックスや磁性材料の成形に使われます。

特徴:

  • 均一な粒度と乾燥状態で高密度成形が可能。
  • 焼結によって高強度な部品が得られる。
  • バインダーなどを使わず、材料純度を保ちやすい。

このようなドライ成形法では、後工程の熱処理(焼結)によって材料の最終的な性質が決まります。

3. ドライコーティング(PVD、CVD)

ドライ工程のもう一つの重要な例が「物理蒸着(PVD)」や「化学蒸着(CVD)」による表面コーティング技術です。

PVD(Physical Vapor Deposition)の例:

  • 真空中で金属を蒸発させ、対象物に薄膜を形成する。
  • 耐摩耗性や反射率を高める用途に利用される。

CVD(Chemical Vapor Deposition)の例:

  • 原料ガスを基板上で化学反応させて成膜する。
  • 半導体の絶縁膜形成などで広く用いられる。

これらのドライコーティング法は、高純度で均一な薄膜を形成できるため、電子部品や精密機械部品の表面処理に不可欠です。