工場用語辞典

ドラムブレーキ 【よみ】 どらむぶれーき 【英語】 drum brake

自動車やバイク、自転車などに使われる制動装置(ブレーキ)の一種で、内部にブレーキシューを持つ「ドラム(円筒)」状の部品を回転軸に装着し、ブレーキシューを内側から押し付けることで摩擦を発生させて車輪の回転を止める仕組みです。

ブレーキシステムには主に「ディスクブレーキ」と「ドラムブレーキ」がありますが、ドラムブレーキは構造が比較的シンプルで安価なため、現在でも軽自動車やリアブレーキ(後輪)などに多く使用されています。

ドラムブレーキの構造と動作原理

基本構造

ドラムブレーキは、以下の主要部品から構成されています:

  • ブレーキドラム:車輪と一緒に回転する円筒状の金属部品。
  • ブレーキシュー:摩擦材(ライニング)が取り付けられた部品で、ドラムの内側に接触して制動力を発生させる。
  • ホイールシリンダー:油圧によってブレーキシューを左右に押し広げる装置。
  • リターンスプリング:ブレーキを解除するときにブレーキシューを元の位置に戻すためのバネ。

動作の流れ

  1. ブレーキペダルを踏むと、マスターシリンダーから油圧がホイールシリンダーに伝わる。
  2. ホイールシリンダーがブレーキシューを左右に押し広げ、シューがドラムの内側に押し付けられる。
  3. 摩擦によりドラムの回転が制限され、車輪が減速または停止する。
  4. ペダルを離すとリターンスプリングがブレーキシューを元に戻し、ドラムとの接触が解消される。
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ドラムブレーキの長所と短所

長所

  1. 製造コストが低い
     部品点数が少なく、設計も比較的単純なため、量産コストが安いです。そのため、軽自動車や商用車の後輪など、コストパフォーマンスが重視される車両に多く使われています。
  2. サイドブレーキとの相性が良い
     ドラムブレーキは機械式のサイドブレーキ(パーキングブレーキ)を内蔵しやすいため、後輪に採用されることが多いです。
  3. 密閉構造により外部の異物が入りにくい
     ブレーキドラムが内部を覆っている構造のため、泥や水、塵などが入りにくく、耐久性に優れています。

短所

  1. 放熱性が低い
     ディスクブレーキと比較して熱を逃がしにくく、長時間連続して使うとフェード現象(効きが悪くなる)が起きやすいです。
  2. 整備性がやや悪い
     内部の構造が複雑で部品が見えにくいため、点検や交換に時間がかかります。
  3. 応答性がやや鈍い
     ディスクブレーキに比べて制動力の立ち上がりが遅いため、高速走行やスポーツ走行には不向きです。

ドラムブレーキの具体例と利用状況

軽自動車や小型商用車

日本の軽自動車の多くは、前輪にディスクブレーキ、後輪にドラムブレーキを採用しています。理由は、以下のような点が挙げられます:

  • 車体が軽いため、高い制動力を必要としない。
  • コストを抑えることで車両価格を下げられる。
  • 後輪に強いブレーキ力をかけすぎるとロックしやすいため、制動力のマイルドなドラムが適している。

バイクや原付

小型バイクや原付では、コストや重量の面から、フロントにディスクブレーキ、リアにドラムブレーキという構成が多く見られます。これにより、軽量性と経済性のバランスを保っています。

自転車(特に電動アシスト自転車)

自転車でもドラムブレーキは使われています。雨の日でも比較的制動力が安定しており、メンテナンスの頻度が少ないため、ママチャリや電動アシスト自転車に採用されることがあります。