工場用語辞典
ダブルチェック 【よみ】 だぶるちぇっく 【英語】 double check
作業や処理の正確性を確保するために、同じ内容を2人以上で確認する方法を指します。一人目が行った作業や判断を、二人目が独立して再確認することで、ヒューマンエラー(人的ミス)の発見や防止を目的としています。
業務の正確さが特に求められる医療現場や製造業、金融業、薬剤管理、会計処理、IT業界などで広く導入されており、「リスク管理」や「品質保証」の基本的な仕組みの一つとして重要視されています。
ダブルチェックの目的と種類
1. ダブルチェックの目的
- ミスの早期発見と是正
人間は誰でもミスをする可能性があるため、複数の目で確認することで見落としを減らします。 - 品質と信頼性の向上
結果としてミスの少ない業務が実現され、製品やサービスの品質向上につながります。 - 責任の明確化とリスク分散
一人だけに業務の責任を負わせないことで心理的な負担を減らし、ミス発生時にも原因を明確に特定しやすくなります。
2. ダブルチェックの種類
ダブルチェックにはいくつかの形態があります。
- 同時確認型:1人が作業を行い、もう1人がその場で一緒に確認する。
- 独立確認型:2人が別々に同じ作業やデータを確認し、結果を照合する。
- 相互確認型:2人がそれぞれ交互にチェックし合う方法で、特に複雑な業務で採用されます。
ダブルチェックの具体例と活用場面
1. 医療・看護現場
ダブルチェックが最も徹底されている分野の一つが医療現場です。たとえば、手術の前に患者の名前、手術部位、使用する薬剤の種類と量などを複数の医療従事者が確認します。
例:手術前に麻酔薬を準備する際、看護師Aが薬剤を用意し、看護師Bがラベルと処方を照らし合わせて確認することで、投与ミスを防ぎます。
2. 製造業・品質管理
製造業では、部品の組み立てや製品の検査においてダブルチェックが行われます。特に自動車や精密機器など安全性が求められる製品では、工程ごとに複数人がチェック体制を取ります。
例:自動車部品の組付け作業で、作業員Aがトルクレンチで締め付けを行い、作業員Bがトルク値を計測して再確認。これにより、締め忘れや過不足トルクによる故障を防止できます。
3. 会計・経理処理
企業の経理処理では、金額や取引内容の誤りが重大な問題につながるため、伝票や帳簿、仕訳の内容に対してダブルチェックが導入されています。
例:経理担当者Aが請求書を入力し、担当者Bが元帳や仕訳内容をもとに再確認する。二重支払いや記帳ミスの防止に効果があります。
ダブルチェックの注意点と効果的な運用方法
1. ダブルチェックの限界
ダブルチェックは万能ではありません。形式的にチェックを行うだけでは、ミスを見逃す可能性があります。また、確認する側が先入観を持ってしまうと、本来の「気づき」が失われることもあります。
そのため、「ただ見る」のではなく、「疑って確認する」意識が必要です。チェックリストの活用やチェック者への教育も重要です。
2. 効果的な運用のために
- チェック手順の標準化
誰が、いつ、どのように確認するかを明文化し、全員で統一された方法を使うことがミス防止に役立ちます。 - ITツールとの併用
エクセルの関数やバーコード、スキャナーなどを使うことで、人によるミスを減らし、チェック精度を上げることができます。 - 相互チェックの文化づくり
互いに確認し合う風土が根づいていれば、ミスの早期発見だけでなく、組織の信頼性向上にもつながります。
