工場用語辞典

設計開発 【よみ】 せっけいかいはつ 【英語】 Design development

新しい製品、サービス、システムなどを具体的に企画し、その要件を満たすための機能、構造、材料、プロセスなどを決定し、最終的に具体的な形として実現していく一連のプロセスを指します。アイデアを単なる概念に留めず、顧客のニーズや市場の要求に応える実行可能なソリューションへと具現化する、ものづくりやサービス創出の中核をなす活動と言えます。

設計開発の主要な段階

設計開発は、一般的に以下のような段階を経て進められます。

  1. 企画・要件定義:
    • この段階では、何を作るべきか、なぜそれを作るのかを明確にします。市場調査、顧客ニーズの分析、競合他社の動向、技術的可能性などを総合的に考慮し、製品やサービスが満たすべき機能、性能、品質、コスト、納期などの要件を具体的に定義します。
    • 例: 新しいスマートフォンを開発する場合、顧客アンケートや市場データから「バッテリー持続時間の延長」「カメラ性能の向上」「耐水性の強化」といった主要なユーザーニーズを抽出し、これらを具体的な製品要件として文書化します。
  2. 基本設計:
    • 要件定義に基づいて、製品やシステムの全体的な構造や主要な機能を決定する段階です。どのような部品を使うか、どのように配置するか、どのような技術を採用するかなど、大まかな枠組みを設計します。この段階では、詳細な仕様よりも、概念的な設計や主要なインターフェースの検討が中心となります。
    • 例: スマートフォンの基本設計では、使用するCPUの種類、ディスプレイのサイズと解像度、カメラのセンサーやレンズの選定、OSのバージョン、筐体の素材などを検討し、全体的なアーキテクチャを決定します。
  3. 詳細設計:
    • 基本設計で定められた枠組みをさらに具体化し、個々の部品やモジュール、ソフトウェアの各機能について、詳細な仕様や動作を設計します。CAD(Computer-Aided Design)を使った図面作成や、回路図の作成、ソフトウェアのアルゴリズム設計などが行われます。この段階で、製造や実装に必要な全ての情報が決定されます。
    • 例: スマートフォンの詳細設計では、各電子部品の配置、プリント基板の配線パターン、カメラモジュールの内部構造、筐体の精密な寸法、ボタンの感触、各ソフトウェア機能のユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)に至るまで、細部にわたって設計を行います。
  4. 試作・評価:
    • 詳細設計に基づいて、実際に製品の試作品を製造したり、サービスのプロトタイプを開発したりします。その後、試作品やプロトタイプが設計要件を満たしているか、性能は十分か、使い勝手はどうかなどを評価します。この段階で問題が見つかれば、設計にフィードバックし、改善を繰り返します。
    • 例: 設計されたスマートフォンのプロトタイプを製造し、バッテリーの持ち、カメラで撮影した写真の品質、耐水性のテスト、発熱、通信速度などを実際にテストします。もし発熱が問題であれば、放熱設計を見直したり、部品配置を変更したりといった改善を行います。
  5. 量産設計・生産準備:
    • 試作・評価段階で問題が解決し、設計が確定したら、量産に向けた設計調整や生産プロセスの準備を行います。製造コストの最適化、生産ラインでの効率的な組み立て方法の検討、品質管理体制の構築などが含まれます。
    • 例: スマートフォンの量産設計では、部品のサプライヤー選定、自動組み立てラインでの効率的な作業手順の確立、不良品発生率を抑えるための品質チェックポイントの設定などを行います。

設計開発の重要性

設計開発は、製品やサービスの品質、性能、コスト、市場競争力を大きく左右する極めて重要なプロセスです。優れた設計開発は、顧客満足度を高め、企業のブランド価値を向上させ、長期的なビジネスの成功に貢献します。逆に、設計開発が不十分であれば、製品の欠陥、リコール、顧客からのクレームに繋がり、企業の信頼を失うことにもなりかねません。