工場用語辞典

製品、サービス、システムなどが一度設計された後に、その設計内容の一部または全部を修正、追加、削除するプロセスを指します。開発の途中で行われることもあれば、量産開始後やサービス提供開始後に必要となることもあります。単なる修正ではなく、品質向上、コスト削減、機能追加、法規制対応、不具合修正など、さまざまな目的のために戦略的に実施される重要な工程です。

設計変更が必要となる主な理由

設計変更は、予期せぬ問題や新たな要件、あるいは改善の機会が生じた際に発生します。主な理由としては、以下のような点が挙げられます。

①不具合の修正:

開発中のテストや、製品が市場に出た後の顧客からのフィードバックによって、設計上の欠陥や不具合が発見された場合、これを是正するために設計変更が行われます。これは、製品の信頼性や安全性を確保する上で最も緊急性の高い変更理由の一つです。

例: スマートフォンの出荷後に、特定の条件下でバッテリーが異常発熱するという報告が多数寄せられた場合、発熱原因を特定し、バッテリーの回路設計や放熱構造、またはソフトウェアによる電力制御方法を修正する設計変更が行われます。

②品質の向上:

製品の性能、耐久性、信頼性などをさらに高めるために、既存の設計に改良を加えることがあります。これは、顧客満足度を向上させ、ブランドイメージを強化するために重要です。

例: 自動車の特定の部品が、想定よりも早く摩耗することが判明した場合、その部品の素材をより耐久性の高いものに変更したり、形状を最適化したりする設計変更を行います。これにより、製品寿命が延び、顧客からのクレームが減少します。

③コスト削減:

製造コストや部品コストを削減するために、設計の最適化が行われることがあります。これには、より安価な代替部品への変更、部品点数の削減、製造プロセスの簡素化などが含まれます。

例: ある家電製品の製造コストが高止まりしている場合、筐体に使用している金属部品を、同等の強度を持つより安価なプラスチック素材に変更する設計変更を検討します。これにより、製品の販売価格を抑えるか、利益率を向上させることが可能になります。

④機能の追加・改善:

競合製品との差別化、顧客の新たなニーズへの対応、技術革新の取り込みなどの目的で、製品に新たな機能を追加したり、既存の機能を改善したりするために設計変更が行われます。

例: デジタルカメラの発売後に、市場から「AIによる自動シーン認識機能」や「より高速なオートフォーカス機能」への要望が高まった場合、これらをソフトウェアアップデートやハードウェアの追加・変更によって実現するための設計変更を行います。

⑤法規制・基準への対応:

環境規制、安全基準、特定の業界基準など、新たな法規制や基準が施行された場合、それに適合させるために設計変更が必須となります。

例: 特定の化学物質の使用が禁止される新たな環境規制が導入された場合、製品に使用されている該当物質を含む部品を、代替の環境に優しい素材や部品に変更するための設計変更が必要です。

⑥製造性の改善:

製造ラインでの組み立てが困難である、不良品発生率が高い、特定の工程でボトルネックが生じるなど、生産性に関する問題がある場合に、製造プロセスを改善するために設計変更を行うことがあります。

例: ある電子部品の組み立てが、手作業で行うには非常に複雑で時間がかかると判明した場合、部品の形状や接続方法を変更し、自動組み立てロボットでの作業に適した設計に修正します。

設計変更のプロセスと管理

設計変更は、単に図面を書き換えるだけではありません。その影響は、部品調達、製造、品質保証、販売、サービス、さらには顧客にまで及ぶため、慎重なプロセス管理が求められます。一般的には、以下のステップで進められます。

1. 変更要求の発生: 不具合報告、改善提案、顧客からの要望など、様々な要因から変更の必要性が認識されます。
2. 変更内容の検討と影響評価: 変更が製品の機能、性能、コスト、納期、既存の部品在庫、顧客への影響などに与える影響を多角的に評価します。
3. 承認: 関係部署（開発、製造、品質、調達、営業など）の合意を得て、変更の承認を受けます。
4. 設計作業: 承認された内容に基づき、実際の設計修正作業を行います。
5. 試作・評価: 変更後の設計で試作品を作成し、問題がないか検証します。
6. 生産移行・展開: 試作評価を経て問題がなければ、量産への適用やサービスへの展開が行われます。
7. 文書管理: 変更された設計情報は、適切にバージョン管理され、関連文書（図面、仕様書、取扱説明書など）も更新されます。