工場用語辞典
納期管理 【よみ】 のうきかんり 【英語】 delivery date management
製品やサービスを、顧客と取り決めた期限(納期)までに確実に納品するための計画・調整・進捗管理を行う業務のことです。
生産、販売、開発、建設などさまざまな業界で使われる基本的なマネジメント手法であり、顧客満足と信頼構築のために極めて重要な業務領域です。
2. なぜ納期管理が重要なのか?
納期を守ることは、企業が信頼される存在として継続的に取引を受けるための条件です。
納期を一度でも破ると、顧客からの信用が下がり、再発注や契約更新に影響が出ることもあります。
また、納期を守ることで以下のようなメリットがあります:
- 顧客満足度の向上
- 生産や人員配置の効率化
- クレームや損害賠償リスクの回避
- サプライチェーン全体の安定化
3. 納期管理の基本プロセス
納期管理は、単に「期日を守る」だけでなく、そのために段階的な計画と調整が必要です。
① 納期の決定
顧客と相談し、納品日を決定する。現実的なリードタイムを考慮しなければならない。
② スケジュールの作成
納期から逆算して、製造・仕入・検査・配送など、各工程の期日を設定。
③ 進捗の管理
各工程が予定どおり進んでいるかを確認。遅れが発生したら即座に対処。
④ リスクの予測と対応
部材の遅延や天候不良などのリスクを想定し、バッファ(余裕)や代替策を準備。
⑤ 顧客への連絡と調整
変更やトラブルがあった場合、速やかに顧客と情報を共有し、対応を協議する。
4. 納期管理の具体例
▶ 例1:製造業における納期管理
自動車部品メーカーでは、顧客A社から「9月15日までに1000個のパーツを納品してほしい」と依頼が入る。
納期を守るため、生産管理部は以下のスケジュールを立てる:
- 材料調達:8月20日まで
- 加工工程:8月21日〜9月5日
- 検査・包装:9月6日〜9月10日
- 出荷:9月12日
- 納品:9月15日
工程ごとに進捗を確認し、どこかで遅れが出た場合には、人員の追加や外注先の活用などで対応します。
▶ 例2:IT業界での納期管理
ソフトウェア開発プロジェクトにおいて、顧客と「12月20日リリース」と納期を設定。
開発チームはタスクを細分化し、「要件定義→設計→実装→テスト→納品」といった各フェーズにスケジュールを割り当て、進捗状況を週単位でレビューしながら管理します。
5. 納期管理でよく使われるツール・方法
● ガントチャート
作業の進捗やスケジュールを横棒グラフで可視化。Microsoft ProjectやBacklogなどで利用されます。
● タスク管理ツール
Trello、Asana、Redmineなどを使い、作業ごとの進行状況をチームで共有。
● ERP(基幹業務システム)
在庫・受注・生産・販売を一元管理し、納期に直結するデータをリアルタイムで把握。
6. 納期遅延の原因と対策
◉ 主な原因
- 材料の納入遅れ
- 設備の故障・トラブル
- 人員不足や作業ミス
- 顧客からの仕様変更
- 天災や外的要因(台風、地震など)
◉ 対策
| 対策方法 | 内容 |
| バッファ設定 | 納期より前に内部目標を設定して余裕を持つ |
| 進捗の可視化 | 工程ごとの進み具合を見える化し、遅れを早期発見 |
| 多能工化 | 作業員に複数スキルを持たせ、急な対応に強くする |
| 定期報告 | 顧客や社内と進捗を定期的に共有して対策を協議 |
7. 納期遵守率とは?
**納期遵守率(OTD:On-Time Delivery)**は、納期どおりに納品できた割合を示す指標です。
たとえば、1か月間に100件の注文のうち、95件を納期どおりに納品した場合、納期遵守率は95%です。
この数値が高いほど、企業の信頼性や生産体制の安定度が高いと評価されます。
8. 納期管理がもたらす成果
納期管理を徹底することで、次のような成果が得られます:
- ✅ 顧客からの信頼向上
- ✅ 品質とコストの安定
- ✅ 生産ラインや作業現場の無駄の削減
- ✅ 社内外との連携強化
一方で、納期を守れなければ、信用喪失・キャンセル・損害賠償といった大きな損失を招くことになります。
