工場用語辞典

セル生産 【よみ】 せるせいさん 【英語】 cell manufacturing system

1人、または少数精鋭の作業者チームで製品の組み立て工程を完成まで行うこと。

製品の組み立て作業を少人数の作業者が1つの「セル」と呼ばれる作業単位で担当し、完成品まで仕上げる生産方式です。ライン作業とは異なり、1人または少人数が複数の工程を受け持つのが特徴です。

セル生産の仕組み

従来の大量生産ライン(流れ作業)では、各作業者が1工程だけを担当し、次々と製品を流していく方式でした。これに対しセル生産では、作業台(セル)の周囲に部品や工具を配置し、作業者が製品を1個ずつ最初から最後まで(または大部分)組み立てることで効率と柔軟性を高めています。

セル生産の特徴

  • 多能工(マルチスキル)による生産
    作業者は複数の工程をこなせるよう訓練されており、作業内容に柔軟に対応できます。
  • 少量多品種生産に強い
    製品ごとの切り替えが容易で、需要変動に対応しやすくなります。
  • 在庫の削減
    必要な分だけを作る「ジャストインタイム生産」と相性が良く、仕掛品や完成品の在庫が減少します。
  • 品質の向上
    作業者が一貫して製品を組み立てることで責任感が生まれ、不良の早期発見や再発防止が期待できます。
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具体例:家電製品の組立工場

たとえば、電子レンジの組立工場を例にすると、従来は「部品取り付け係」「配線係」「検査係」などに分かれて流れ作業で製品を完成させていました。
セル生産では、1人の作業者が小さな作業台の中で、部品取り付けから配線、動作チェックまでを行います。これにより、不具合があればすぐにその場で修正でき、完成品の品質も安定します。

メリットとデメリット

メリット

  • 柔軟な生産対応が可能
  • 作業の無駄(ムダ)が減る
  • 作業者のモチベーションが向上
  • 品質と納期の管理がしやすい

デメリット

  • 作業者に広範なスキルが必要
  • 教育や訓練に時間がかかる
  • 初期導入コストがかかる
  • 作業負荷のバランスが難しい

近年の動向

日本では、1990年代からトヨタ生産方式の一環として多くの企業がセル生産を導入し始めました。近年では、自動車部品、電子機器、医療機器などの少量多品種製品を扱う工場で特に注目されています。また、IoTやデジタルツールと連携し、生産状況の見える化や自動化とも組み合わせて活用されています。