工場用語辞典

バッファ 【よみ】 ばっふぁ 【英語】 buffer

バッファを持つ=「余裕、余力」を持つという意味である。

◎IT用語としては「データを保存しておくための領域」として使われている。

工場における「バッファ」とは、生産ラインの中で在庫や仕掛品(しかかりひん)を一時的に保管する領域、またはその考え方を指します。生産工程にはさまざまな機械や作業者が関わっており、それぞれの工程が常に同じスピードで動くとは限りません。そこで、**工程間のスピードの違いやトラブルに対応するための“クッション”**としてバッファが設けられます。

たとえば、ある工程で一時的に機械が停止した場合でも、前の工程で作った製品が一定数バッファとして溜めてあれば、次の工程は止まらずに作業を続けることができます。バッファは、生産の安定化、効率向上、トラブルへの柔軟な対応など、多くの目的で活用されています。

バッファの種類と実例

工場におけるバッファにはいくつかの種類があり、目的や配置場所によって分類されます。以下に代表的な3種類と、それぞれの具体例を紹介します。

工程間バッファ

工程間バッファは、ある生産工程と次の工程の間に置かれるバッファです。たとえば、プレス加工と塗装工程の間に部品を一時保管するスペースが設けられている場合、これが工程間バッファです。

例:
自動車部品の工場では、鉄板をプレスして成形した後に塗装を行うことがあります。このとき、プレス機が高速で稼働しても、塗装ブースの処理能力が追いつかない場合があります。そこで、プレス済みの部品を一時的に保管しておくことで、塗装工程が滞りなく稼働できるようにします。

緊急用バッファ(セーフティストック)

緊急用バッファとは、納期遅れや機械の故障など、突発的なトラブルに備えてあらかじめ余分に準備しておく在庫のことです。これにより、予想外の遅延が発生しても、出荷や後工程への供給を継続できます。

例:
電子部品の組立工場では、特定のICチップの納品が遅れることがあります。このとき、一定数のICチップを事前に在庫(バッファ)として確保しておくことで、納品の遅れによるライン停止を防げます。

サイクルタイム調整用バッファ

これは、各工程ごとのサイクルタイム(1つの作業を完了するのにかかる時間)の差を吸収するためのバッファです。全体の生産リズムを合わせるため、特に自動化されたラインでは重要になります。

例:
電子基板を作るラインで、はんだ付け工程が30秒、検査工程が60秒かかるとします。このとき、はんだ付けが検査より早く終わってしまうため、間にバッファを設けて基板を一時保管し、検査が追いつくのを待つ必要があります。こうすることで、生産ライン全体の効率が下がるのを防ぎます。

ウイルテック公式求人サイト「ウイルタス」で仕事探し!製造業やエンジニアを積極採用!全国各地で面接、面談、登録を実施中。
ウイルテックでお仕事を見つけませんか?画像をクリックしてお仕事情報をチェック!

バッファの利点と課題

バッファの利点

工場にバッファを設けることには、以下のような利点があります。

  • 工程の停止を防ぐ:一部の工程がトラブルで止まっても、他の工程が稼働し続けられる。
  • 生産計画の柔軟性が向上する:需要の変動や納期変更にも対応しやすくなる。
  • トラブル時のリスク分散:在庫がクッションとなって、突発的な問題の影響を抑えられる。

特に大量生産が行われる自動車や電子機器の製造では、バッファ管理が生産全体の安定に直結します。

3-2. バッファの課題

一方で、バッファを過剰に持つことには注意が必要です。

  • 在庫コストの増加:製品や部品を保管するためのスペース、資金、管理手間が必要になる。
  • 品質リスク:仕掛品が長時間保管されることで、品質劣化やトラブルの原因になることも。
  • 見えない問題の隠蔽:本来なら改善すべき工程の不均衡や遅延が、バッファによって見えなくなることもある。

このように、バッファには適切な「量」の管理が不可欠です。多すぎても少なすぎても、生産に悪影響を及ぼすため、工程ごとの分析と継続的な改善が求められます。