工場用語辞典

真ちゅう 【よみ】 しんちゅう 【英語】 brass

真ちゅう(真鍮、黄銅とも書きます)とは、主に銅(Cu)と亜鉛(Zn)を混ぜ合わせた合金のことです。英語では「brass(ブラス)」と呼ばれます。その歴史は古く、紀元前から装飾品や武具などに利用されてきました。

真ちゅうの特徴的な色合いは、亜鉛の含有量によって変化します。亜鉛の割合が少ないほど赤みを帯びた色になり、多くなるほど黄色味が強くなります。一般的に、美しい黄色の光沢を持つものが多く、その見た目の美しさから、装飾品や美術工芸品、建築金物などに広く用いられてきました。土岐市周辺でも、古くから金属加工の技術が発展しており、真ちゅうを使った工芸品などが作られていたかもしれません。

真ちゅうは、それぞれの金属が持つ特性を組み合わせることで、純粋な銅や亜鉛にはない優れた性質を発揮します。例えば、銅の持つ展延性(薄く広げたり、長く伸ばしたりする性質)と、亜鉛の持つ強度や耐食性が組み合わさることで、加工しやすく、丈夫で錆びにくい材料となるのです。

真ちゅうの組成は、用途によって様々ですが、代表的なものとしては、銅と亜鉛が70:30の割合で混ぜられた七三黄銅(しちさんこうどう)や、60:40の割合の六四黄銅(ろくよんこうどう)などがあります。これらの割合によって、強度、硬さ、延性、被削性(削りやすさ)、耐食性などが微妙に変化します。

真ちゅうの優れた特性と多様な用途

真ちゅうは、その美しい外観だけでなく、様々な優れた特性を持つため、幅広い分野で利用されています。主な特性と用途は以下の通りです。

  • 美しい外観: 黄色から金色に近い美しい光沢を持ち、装飾品、金管楽器、照明器具などに用いられます。特に、年月が経つにつれて変化する独特の風合いも魅力の一つです。
  • 加工性の良さ: 比較的柔らかく、切削、プレス、曲げなどの加工が容易です。このため、複雑な形状の部品や製品を効率的に製造することができます。時計部品、精密機械部品、建築金物などに利用されます。
  • 強度と靭性: ある程度の強度と粘り強さ(靭性)を兼ね備えており、機械部品や構造材としても利用されます。ただし、鋼などの他の金属に比べると強度は劣ります。
  • 耐食性: 比較的錆びにくく、大気中や水中での使用に適しています。船舶部品、水道の蛇口、バルブなどに利用されます。
  • 導電性・熱伝導性: 銅に次いで電気や熱を伝えやすい性質を持ちます。電気部品の端子、ヒートシンクなどに利用されます。
  • 抗菌性: 微量の銅イオンが溶け出すことで、抗菌作用を発揮することが知られています。ドアノブ、手すり、医療器具など、衛生が求められる場所での利用が注目されています。

     

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    真ちゅうの種類

    真ちゅうは、銅と亜鉛の基本的な合金に、他の元素を加えることで、さらに多様な特性を持たせることができます。代表的な真ちゅうの種類としては、以下のようなものがあります。

    • 快削黄銅: 被削性を向上させるために鉛(Pb)を添加したもので、複雑な形状の部品を効率的に加工するのに適しています。
    • ネーバル黄銅: 耐海水性を向上させるためにスズ(Sn)を添加したもので、船舶部品などに用いられます。
    • 高力黄銅: 強度を高めるためにアルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)などを添加したもので、機械構造部品などに用いられます。

    これらの特殊な真ちゅうは、それぞれの用途に合わせて最適な特性を発揮するように調整されています。

    真ちゅう産業は、現代の工業製品の製造において依然として重要な役割を担っています。特に、高い加工性や耐食性、美しい外観が求められる分野では、他の材料では代替が難しい場合があります。

    環境意識の高まりから、金属のリサイクルに対する関心が高まっていますが、真ちゅうは比較的容易にリサイクルできる金属の一つです。使用済みの真ちゅう製品から金属を回収し、再び新しい真ちゅう製品の原料として利用することで、資源の有効活用に貢献することができます。

    今後も、真ちゅうは、その優れた特性を活かして、様々な分野で利用され続けると考えられます。新たな技術やニーズに合わせて、より高性能で環境に優しい真ちゅうの開発も進められていくでしょう。土岐市においても、もし金属加工業が盛んな地域であれば、真ちゅうの加工技術やリサイクルに関する取り組みが行われているかもしれません。