工場用語辞典
手形 【よみ】 てがた 【英語】 bill
将来の一定期日において、記載された金額を支払うことを約束または命令する証券(有価証券)です。商取引において、代金の支払いを現金ではなく将来に延期する目的で使用されます。企業間の信用取引において重要な役割を果たしてきた金融手段の一つです。
手形の基本構造
手形には主に以下の情報が記載されます:
- 支払金額
- 支払期日(満期)
- 支払人(支払を行う者)
- 受取人(支払を受ける者)
- 振出人(手形を発行した者)
- 支払場所
これらが記載された用紙が「手形証券」として扱われ、その記載内容に基づいて支払義務が生じます。
手形の主な種類
手形には大きく分けて約束手形と為替手形の2種類があります。
約束手形(Promissory Note)
約束手形は、振出人が将来の支払いを自ら約束する形式の手形です。
例:A社がB社に対し、「3か月後に100万円を支払う」と明記した約束手形を渡す。この手形に基づいて、3か月後にA社がB社に支払いを行います。
為替手形(Bill of Exchange)
為替手形は、振出人が第三者に対し、支払いを命じる形式の手形です。主に貿易取引や複雑な三者間取引に使われます。
例:A社がB社に対して「C社に100万円を支払ってほしい」と命じる内容の手形を振り出す。C社が支払人となります。
手形の利用目的とメリット
1. 支払いの延期(信用取引)
手形を使うことで、商品やサービスの納品後に現金を用意せずとも取引を成立させることが可能です。これにより、資金繰りの調整がしやすくなります。
2. 資金調達手段としての利用
受け取った手形は、銀行に割り引いてもらう(手形割引)ことで現金化できます。これにより、企業は満期前に資金を確保できます。
3. 支払いの確実性と証拠性
手形は法的な有価証券であるため、支払いの証拠となるほか、支払いが履行されない場合には訴訟や手形交換所での取立てが可能です。
手形のリスクとデメリット
1. 不渡りのリスク
振出人が満期日に支払いを行えない場合、不渡りとなります。これが2回発生すると、振出人は銀行取引停止処分を受け、信用を大きく失います。
2. 手形管理の手間とコスト
手形の発行、保管、管理、満期時の取り立てなど、手形特有の事務手続きが煩雑であり、事務コストもかかります。
3. 現金化までの時間差
手形を受け取っても、満期日まで現金化できないため、受け取る側にとっては資金繰りのリスクとなることもあります。
電子記録債権との比較
近年では、紙の手形に代わる手段として「電子記録債権(電子手形)」が注目されています。これは、インターネット上の記録機関により債権債務関係を電子的に記録・管理する方式で、以下のような特徴があります。
| 比較項目 | 手形 | 電子記録債権 |
| 形態 | 紙の証券 | 電子的な記録 |
| 管理方法 | 手作業・郵送など | オンラインで完結 |
| リスク | 紛失・盗難 | ログイン管理・システム依存 |
| 処理速度 | 満期日まで待つ必要あり | 迅速に譲渡・回収が可能 |
電子化により、事務負担の軽減やセキュリティの向上、迅速な取引が実現しています。
手形の現代的な位置づけ
かつては企業間取引において主流の支払手段だった手形ですが、近年では手形離れが進んでいます。主な要因は以下の通りです:
- IT化による銀行振込の普及
- 手形の発行・管理コストの増加
- 不渡りリスクを避けたいという取引先の意向
- 電子債権の台頭
それでも一部の業界や大企業では、商慣習として手形取引が今なお残るケースもあります。また、手形割引や手形貸付など、金融手段としての活用も続いています。