工場用語辞典
破産 【よみ】 はさん 【英語】 bankruptcy
個人・法人・団体のすべてに適用され、負債を返済しきれない状態に陥ったときに、裁判所が債務者の財産を平等に配当して公平な清算を図ると共に、債務者の経済生活の再生を図ることを目的とする手続きのことである。
「破産」とは、法律上の手続きの一つで、借金(債務)を返済することができなくなった個人や法人に対して、裁判所がその財産を強制的に清算し、債権者に公平に分配する手続きを指します。単に「お金がなくなること」と混同されがちですが、破産は正式な法的手続きであり、自己判断だけで「破産した」と名乗ることはできません。
破産手続きは、債務者(借金をしている側)を保護し、かつ債権者(貸している側)にも公平に返済されることを目的としています。日本では破産法という法律に基づいて処理され、地方裁判所が手続きを監督します。
破産の申し立ては、自分自身でできる「自己破産」と、債権者が行う「債権者破産」に大別されます。
破産の具体的な流れと例
自己破産の流れ
一般的な自己破産の流れは以下の通りです。
- 弁護士などと相談し、破産申立書を作成
- 地方裁判所に破産を申し立てる
- 裁判所が破産開始決定を出す(または棄却する)
- 財産を整理し、換金したうえで債権者に分配
- 一定の条件を満たせば、「免責許可」が下りて借金が帳消しになる
この中でも「免責」が重要です。免責が認められれば、債務者は借金の返済義務から解放され、生活を立て直すチャンスが与えられます。ただし、ギャンブルや浪費による借金などは免責が認められないこともあります。
具体例:個人の自己破産
例えば、30代の会社員Aさんは、リボ払いとカードローンの借金が合わせて500万円に膨らみ、月々の返済が困難になりました。収入も限られていたため、弁護士に相談のうえ、自己破産を申し立てました。裁判所の審査を経て破産開始決定が出され、Aさんが所有していた中古車などの資産は売却されて債権者に配分されました。その後、浪費や詐欺的要素がなかったため、裁判所から免責許可が出て、Aさんは借金から解放されました。
このように、破産は「人生の終わり」ではなく、「再スタートの機会」ともなり得る制度です。
法人の破産
企業も破産することがあります。これは「法人破産」や「会社破産」と呼ばれ、資金繰りができず、従業員への給与や取引先への支払いができなくなった場合に申し立てられます。破産が認められると、会社の資産は清算され、会社は解散します。
たとえば、ある飲食チェーンB社がコロナ禍で客足が激減し、家賃・人件費の支払いが困難になり、金融機関への借入返済も滞るようになりました。自力での再建が困難と判断され、法人破産を申し立てた結果、裁判所の監督のもとで資産が処分され、従業員や取引先には一定の返済が行われました。その後、B社は正式に法人としての活動を終了しました。
破産のメリット・デメリットと社会的影響
破産のメリット
破産制度は、債務者にとって以下のような利点があります。
- 借金からの解放(免責):免責が許可されれば、残りの借金は返済不要となる。
- 差し押さえの停止:破産手続き中は、債権者による取り立てや差し押さえが一時的に停止される。
- 生活再建のチャンス:借金による精神的・経済的圧迫から解放され、やり直しができる。
とくに個人の生活再建を目的とした自己破産では、「もう一度人生をやり直す機会」として活用されることが多いです。
破産のデメリット
一方で、破産には次のようなデメリットもあります。
- 信用情報への登録:信用情報機関に事故情報として登録され、5〜10年間は新たなローンやクレジットカードの利用が難しくなる。
- 資産の喪失:基本的に所有している不動産や高価な動産は処分対象になる(生活必需品は除く)。
- 職業制限:破産手続き中は、一部の職業(弁護士・警備員・保険外交員など)に就けない期間がある。
また、法人破産の場合は、取引先や従業員に大きな影響を与え、地域経済にも波及する可能性があります。
破産は「終わり」ではない
「破産=人生の終わり」と誤解されることもありますが、実際にはそうではありません。日本の破産法は、債務者に再起の機会を与えることを目的としており、特に免責制度はそのために設けられています。正しい手続きを踏み、誠実に対応すれば、破産は再出発の一歩となり得ます。
