工場用語辞典

発注残 【よみ】 はっちゅうざん 【英語】 Backlog of orders

企業が物品やサービスを外部に発注した際に、まだ納品・受領されていない数量や金額のことを「発注残(はっちゅうざん)」といいます。これは企業の在庫管理や生産管理、会計処理において重要な概念です。

発注残は、将来納入される予定の物品を意味しており、すでに発注はしているが、取引先からまだ納品されていない状態を指します。これは製造業や卸売業、小売業など、あらゆる業種で日常的に発生するものです。

発注残の基本的な仕組み

発注残は、「発注数量」から「納品済数量(もしくは受領済数量)」を差し引いた数で計算されます。

発注残数量 = 発注数量 − 納品数量

発注を分納(複数回に分けて納品)で受けるケースや、納期遅延が発生するケースでは、この発注残の数量が管理上非常に重要になります。なぜなら、発注残が多く残っている場合には、今後の生産や販売活動に影響を及ぼす可能性があるからです。

発注残が発生する主な理由

発注残が発生する背景には、いくつかの理由があります。

  1. 納期のずれ
     納期が未到来で、予定通りに納品されていない場合、発注残が一時的に発生します。
  2. 分納対応
     一度に納品できない場合、取引先が複数回に分けて納品する「分納」が行われることがあります。この場合、全量納品されるまで発注残が発生します。
  3. 供給遅延・在庫不足
     仕入先が在庫不足や製造遅延などで予定通りの納品ができない場合、発注残が長期化することがあります。
  4. キャンセルや数量変更
     注文後に数量変更があった場合、システム上のデータ更新が遅れると発注残として残ってしまうケースもあります。
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発注残の具体的な例

例えば、ある小売企業が仕入先に対して次のように発注したとします。

  • 商品:ノートパソコン
  • 発注数量:100台
  • 納品済数量:60台
  • 未納数量:40台

この場合、発注残は40台となります。この40台は、将来的に納品される予定の数量であり、企業はその入荷を前提に販売計画や在庫管理を行います。

また、以下のような経過をたどることもあります:

  1. 8月1日:100台を発注
  2. 8月5日:仕入先が60台を納品(分納)
  3. 8月10日:残り40台が納品される予定

この5日間の間、発注残としては「40台」が存在し、管理画面などでは「発注残あり」と表示されます。

発注残の管理が重要な理由

発注残の適切な管理は、業務全体の効率化に直結します。以下のような理由から、企業は発注残の情報を常に正確に把握する必要があります。

1. 生産・販売計画への影響

発注残の数量や納期を正しく把握していないと、過剰在庫や欠品が発生する可能性があります。たとえば、納品が遅れているのに、それを見落として販売計画を立てると、商品が揃わず機会損失に繋がります。

2. 資金繰りの把握

発注残は将来の支払い義務を示す指標にもなります。まだ納品されていないとはいえ、契約上は支払う予定があるため、資金計画に反映させる必要があります。

3. 業務の透明性と効率化

発注残を正確に管理することで、社内の各部門(購買、在庫、経理、営業など)がスムーズに連携できます。たとえば営業部門が「いつ納品されるか」を正確に知ることで、顧客への案内や調整が迅速に行えます。

発注残の管理方法

発注残の管理には、以下のようなツールや仕組みが活用されます。

  • 在庫管理システム(WMS)
  • ERPシステム(基幹業務統合システム)
  • Excelなどの管理表
  • 発注書・納品書との突合管理

特にERPやWMSを導入している企業では、リアルタイムで発注残の数量や納期を確認できるため、ミスや見落としのリスクを大幅に減らすことが可能です。